323 商人連合
クレハに例の書類が届いてから彼女が何かを行ったかと言えば何も行わなかった。もちろん、彼らの理不尽な要求に従うクレハではないため、事業から撤退することもなかった。
そうなってくると自分たちの言い分が無視されたと考えたビスラ達は自分たちの計画を進行するために動き出したのだった。
「皆さん、クレハ商会は間違っています!このままでは損をするのは皆さんです、我々は皆様の為を思ってあの大商会に歯向かっているのです!我々商人連合に正義を!」
「「「「「クレハ商会は間違っている!保険を止めろ!」」」」」
昨日までは存在していなかった集団が急にクレハの領地で大声を上げており、領主である彼女を信頼している住人たちは完全に彼らのことを不審者でも見るような目で見ていた。
「なに、あいつら?」
「さぁ、急に現れて保険は詐欺だ!とか今朝から叫んでいるんだよ。」
「感じ悪いわね、あの事業を行っているのが領主様だって知らないのかしら?今までもああいう連中はいたけど、結局は領主様が悪かったことってないのよね。全部ああいう連中の嫉妬とか嫌がらせだったのよ。」
「あぁ、それは分かるな。結局、領主様に問題があるとか言っている連中は自分が悪いのに領主様に押し付けているんだから。領主様もああいう連中は打ち首にでもすればいいのにな。ヤバいところの領主だと内輪で領主の悪口を言っただけで一族もろとも打ち首の所もあるみたいだぞ。」
「何言ってるの、確かにそう言うところは甘いかもしれないけど、そこが領主様の良いところじゃない。私達みたいな存在でも対等に扱ってくれるなんてすばらしい方じゃない。きっとそんな人だから商会の経営も順調なのよ。あの方の商会の成長速度はすさまじいって聞くもの。」
「確かに、そうだな。噂だと外国にも知れ渡っているらしいな。」
幸いなことにクレハの領地では領主に対する領民の信頼は厚いのか彼らの言うことを信じているものは全くいないようだ。むしろ自分たちの領主を悪く言っているこの状況を聞いて不機嫌な目を彼らに向けるものやクレハ商会の評判を下げようとしていることが気に入らない者たちが次第に彼らを睨め付け始める。
「おい、くだらないことをしているなら邪魔だ!さっさと元居た場所へ帰れやがれ。」
そんな中、やはりというか彼らの様子をうかがっていた者たちの中に我慢できないものが現れることになる。
「くだらないとは何ですか、我々商会連合はあなた達の為にこうして立ち上がっているのですよ!感謝はされど文句を言われる筋合いはありません。」
「何が感謝だ!お前たちは邪魔なんだよ、お前たちの嘘くさい話を誰が信じると思っているんだ。お前らは人を陥れることしかできないのか、まともな人間ならまともに働け!」
「ふざけるなよ!誰が嘘くさいだ、無能は俺たちの言うことだけ聞いていればいいんだよ。」
男の言い分があまりにも自分を馬鹿にしていたように感じた商人連合の一人はついには男に向かってキレてしまったがそれが良くなかった。先ほどまで不満がたまっていながらも周囲で見守っていた人間たちがこの言葉を皮切りに一斉に彼らと衝突を始めたのだ。
流石にここまでの大事になればその騒ぎがクレハの耳に入ってこないはずがなく、すぐさま報告がもたらされるのであった。
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