322 動き出す商人たち
「オーナー、これ見てくださいよ!今度は一体何をやらかしたんですか?これを渡してきた人間がめちゃくちゃ怒っていましたよ。」
とある日、ルークが突然クレハに渡したのは一通の書類だった。もちろん、クレハは誰かを怒らせた心当たりなどないため、ルークのその言葉にかなり不服そうだ。
「ルーク、それでは私がいつも何か問題を起こしているみたいじゃないですか!心外です!」
「えっ、そうでしたっけ?なんだかいつも騒ぎの中心にいるようで最近はオーナーが原因じゃないかと心のどこかで思っているんですが・・・。
ふふっ、冗談ですよ、すみません。それよりも、この書類は一体何なんですか?本当にすごい怒りようだったんですよ、少しだけ悲鳴を上げちゃいましたよ。」
クレハの怒った表情が少しばかり新鮮だったのかルークは微笑みながらもその書類がどのようなものなのか、気になっているようだ。
「はぁ、まぁ良いです。それよりも、確かにこの書類は気になりますね。本当に私には心当たりがないのですが・・・。なになに、クレハ商会は今すぐに国民の利益を損なわせる保険事業を終了させろ?さもなければ、我々は国民のために集団で立ち上がり、クレハ商会の罪を白日の下にさらすであろう?
あぁ、そう言えばコズミィさんから教えて頂いた例のビスラという商人の件ですね。これなら心配ありません、心優しいというか、商売のチャンスを見込んだ商人のリークですべて把握しています。
すぐさま保険事業から撤収しなければ集団でこちらへ直接乗り込んでくると言っていますが何も問題はありませんよ。それよりも、まとめてやって来た商人たちをどうやって追い返すかを考えなければいけません。
何と言っても私を陥れようと集団で口裏を合わせるような凶悪な商人たちですから、陥れることができませんでした、ごめんなさいでは済ましませんよ。今後、このようなことが無いように彼らには見せしめになってもらわなければなりませんからね。」
「えっ、なんですかその話。僕は初めて聞きましたよ、ちょっと、教えてくださいよ!」
ルークは自分が知らないところでいつの間にか問題が持ち込まれ、勝手に解決している状況に困惑していた。そんなルークを見て流石に黙ったままではかわいそうだと思ったのかクレハはこれまでの経緯をすべて話すのだった。
「なんだか出来すぎているような気もしますけど大丈夫ですか?確かに業務提携は魅力的ですけど、自分が危なくなるリスクを取ってまでオーナーに教えてきますかね?」
ルークはクレハの話を聞くと他の商人から干される危険性を背負ってまで真実を話しに来たコズミィという商人が怪しくて仕方がないと感じていた。
確かに、クレハからして見てもその点は少し怪しかったが実際にこの書類の様にビスラが動き出しているのだ。だからこそ、クレハはコズミィのことを信用することに決めたのだ。
「ですが、実際にこうして彼女の言う通り、このような書類が届いているんですよ。それならば私は彼女を信じてみようと思います。もちろん、何事にも警戒はしておきますから大変な事態には陥らないと思います。」
こうして、コズミィの言うようにビスラから保険事業を止めるような警告が届き、彼女の言い分が正しいと判断したクレハは彼女との業務提携を開始するのであった。
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