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31 傲慢な商人

今年はコーカリアス王国で諸国会議と呼ばれる各国の重鎮たちが訪れる会議があるため、彼らのお抱え商人になるために各国から商人たちもコーカリアス王国へと向かっていた。


人数が増えれば質の良い商人も増えるが、その反面で質の悪い商人も増えてくる。そのため、クレハ商会を訪れる商人たちの中にも質が悪い者たちがいたのだ。


クレハは諸国会議のため、いつも以上に忙しく商品の販売を行っていた。そんな彼女たちの店に商人と思われる集団が入ってくる。彼らはすでに並んでいるお客のことを気にせず、クレハのもとへとやってくる。最近ではそのようなことをするものは減ってきていたのだが、今は他国からの商人もやってきているため文化によっては仕方ないと考えているクレハは丁寧にその集団に注意を促す。


「失礼、あなたがここの商会の会頭クレハさんかな」


「はい、私がクレハですが。それよりもお客様、他のお客様が並ばれていますので、商品をお買い求めになりたいのであれば順番に並んでいただけますか?」


しかし、その集団はそんなこと関係ないと自分たちの要件をクレハに告げる。


「率直に言う、ここの商会の権利を買い取りたい。商品の作り方や販売の権利などもすべてだ。白金貨5枚でいいだろう。ほら、これでお前たちは出ていけ」


彼らの代表と思われる商人はいきなりクレハに要求を突きつけると返事も待たずに白金貨5枚をクレハに差し出す。そんな意味の分からない行動にルークは呆然とし、クレハは怒りを隠せない。当然であろう、自らの商会とは自分の帰る場所でもあるのだ。それをいきなりやってきて奪われるというのに黙っているクレハではない。


「お断りします。なぜ商会をお売りしないといけないのですか?しかもたった白金貨5枚ですか?ありえませんね。お引き取りください」


クレハの言葉に断られると思っていなかった商人は一気に顔が赤くなり怒り出す。


「たかが、新参者の商会程度に白金貨5枚も渡すんだぞ。断るなんてどうかしている!」


「そんなことありませんわ。当商会の先月の売り上げは王金貨12枚ですよ。それほど売り上げがあるのに高々白金貨5枚で売るはずがないでしょう。さっさとお引き取りください」


新参者だと思っていたクレハ商会が自分よりも売り上げがあると知り商人はクレハを怒鳴りつける。


「なっ、ふざけるのもいい加減にしろ。私の商会でさえ、先月の売り上げは王金貨2枚だったのにお前たちのような商会が私よりも多いはずないだろう!もういい、二度と来るかこんな店!覚えていろよ!」


クレハが商会を売るつもりがないと分かると彼らは、並んでいる住人たちを押しのけ、帰っていった。


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