313 保険
審問院にてクレハが冤罪の被害を被った際に脅迫、もとい、お話によって獲得したとある施設。この施設をクレハは有効活用し、新たな事業を始めようとしていた。
「オーナー、何やら新しい建物を建てようとしているようですけど、今度はいったいどんな事業を始めようとしているんですか?いつもなら何かを用意してほしいと言われますけど、今回は何もないですよね。何かお困りなら僕が用意しましょうか?」
ルークはクレハが新事業を始めようとしていることに気が付き、いつもであれば自分に何か用意をしてほしいと告げてくるが今回はそれが無かったので心配だったのだ。しかし、そんなルークの心配は今回の事業に関しては杞憂であった。
「今回の事業は何も必要がない事業ですからね。必要なのは人間だけで特に用意するものは無いんですよ。」
いつもであれば何か新しいものを販売して利益を得る。それがクレハの商売のやり方であったため、なにも必要がないという事業は正直、ルークにとっても興味深いものだったのだ。
「えっ、それってなにも売らないってことですよね。それなのに商売が成り立つんですか?」
「もちろんですよ、実際に現物を売るだけが商売ではありません。情報屋だって目には見えない情報を売っていますしね。」
「確かに、そう言われれば物を売るだけが商売ではないんですね。それで、オーナーは結局、何を売り出すつもりなんですか?」
「売り出す商品は”保険”です!」
クレハは良い考えを思いついたというように鼻を高くし、自慢げにルークに応えるも彼はその存在を良く理解していなかったようだ。
「保険ですか?なんですかそれ、どうすればそんなものが売れるんですか?」
この世界にはクレハの前世の様に”保険”という考え方が存在しておらず、ルークはそれを販売するということに対してピンと来ていなかったようだ。
「あれ?知りませんでしたか。簡単に言えばケガをしたときや病気になった時、そんなときに働けなくなってしまったらどうなると思いますか?」
「それは、家族とか知り合いに助けてもらうしかないですね。あとは貯金で何とかくらしていきます。」
「確かにルークの言う通りそう言った方法で生き抜くことはできます。しかしながら家族を支える人間が倒れてしまったり、助けてくれる知り合いもいない。そんな人たちがたくさんいると思いますがそう言った人たちはどうなると思いますか?」
「そうなってしまうとスラム街に住んで盗みを働いたり、盗賊にでもならないと生きていけないかもしれないですね。働けなくなってしまえば街で暮らしていくのは難しいかもしれないです。」
「そうなんです、そんな状況でそう言った人たちを救うことが出来るのが保険という存在なんですよ。ついでにこの事業は基本的には胴元が儲かるようになっているので余程のことがない限り堅い事業なんです!」
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