297 私刑も刑のうち
「これで知っていることは全部です、どうか勘違いは止めてください。お願いします、お願いします!」
リーダーは死刑を何としても避けたいのか必死でクレハに頭を下げ、嘆願している。そんな彼を見てクレハはしばらく考えるそぶりを見せると笑顔で彼に対する処置を話すのであった。
「そうですね、今日はもう遅いのでいったんは保留にします。まぁ、リーダーのあなたは私に色々と話してくれたので悪いようにはしません。でも、残りの人間は残念ながら役に立たなかったですからね、この後どうなるかは自分たちが一番わかると思いますよ。
あぁ、それと、もしかしたらまだ希望があるかもしれないので殺人は行ったらダメですよ。さぁ、ルーク帰りましょうか。」
「えっ、あっ、はい。」
クレハの最後の言葉にリーダーは疑問を抱いているも、なんとか極刑だけはま逃れた喜びからそんなことはどうでもよくなっていた。しかし、ルークからしてみれば、やはり最後の言葉の意味はどういうことなのか気になってしまうのである。
クレハと二人で屋敷に戻っている途中、ルークはどうしても先ほどの彼女の発言が理解できないでいたのか、その意味を尋ねるのであった。
「あの、先ほど言っていた殺害はダメというのはどういう意味なんですか?自分がひどい刑罰を受けるのが嫌で自殺をしてしまうとか、逃げ出すとかなら分かるんですけど、どうして殺人なんですか?」
「あぁ、あれはあのリーダーに対する罰ですよ。」
その言葉にルークはますます訳が分からないと言ったような顔をしている。
「いったいどういうことですか?どうしてそれが彼への罰になるんです?」
「彼らはしばらくの間、同じ檻に入れておくつもりなんです。自分たちを先導していたリーダーのせいでこんなことになったというのに彼だけが助かり、自分たちは極刑に処されてしまうかもしれない。そんな風に思っている中で自分たちが手を出せる場所にその元凶がいるのであればどうなると思いますか?」
クレハのその言葉でルークはすべてを察したのだろう。これから彼に待ち受ける出来事を考えると気の毒そうな顔に自然となってしまうのである。
「あぁ、なんとなく分かりました。彼がこれからどうなるのか。」
「私も本当に殺害計画を企てたなんて思っていませんからね。今回は彼らもやりすぎていますからしばらくはこのままにしておきましょう。
もっとも、それ相応の罰は受けてもらうことになりますし、リーダーに至ってはしばらく彼らにボコボコにされるのも刑のうちです。それくらいのことを彼はしでかしているのですからね。
まぁ、死んでしまうことはないでしょう、殺害はダメだと言っているので。それが彼にとっていいことかどうかは分かりませんが。」
クレハの考える通り、彼らの刑が確定するまでは毎日、暴力による男の悲鳴が牢獄から響き渡るのであった。
しかしながら、その声がやむことはなく彼らはクレハの言葉に従っているのかリーダーの息の根を止めるまでには至っていないのである。そのことが彼にとって良いことなのか、悪いことなのかは本人のみが知るのだが。
ちなみに、今回の刑罰により彼らはとある開拓地でザマスと叫ぶものと一緒に少なくとも数年は過ごすことになるのだがそれはまた別のお話。
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