285 薬の蔓延
クレハが自身の領内において全能薬を全面的に規制してしばらくが経った。幸いなことに薬への対応が素早く行われたため蔓延していると言ったような話は聞いていない。
さらに、幸運なことにルークに頼んでおいた仕事がうまくいったのか今のところは薬の規制による住人たちの不満は出ておらず、むしろそんな危ないものを知らせてくれて助かったと好意的に受け入れられていた。
一方、王都では王妃が必死に全能薬に関しての規制を求めているもあまりうまくいっていない様子だ。国としての政策で全能薬を規制する場合どうしても時間がかかってしまう上に何人もの人間の同意が必要になってしまい、王妃の一存で物事を決めることが出来ないのだ。
そのうえ、王妃が提案したと言うだけで内容すら聞かずに初めから否定に入る愚かな貴族の存在もあり、一向に話が進まないのであった。こういった点が自身の一存で領内に対して規制をかけることが出来るクレハとは違うところだ。
貴族達が王妃の足を引っ張っている中、非情にも全能薬はじわじわと住民たちや商人、はては権力者と言った人間たちに広まり始めていた。
そうなってくると全能薬を摂取している本人の家族にもその異常性を理解してしまうものが出始めたのだ。
「あなた、いったいどうしてしまったのよ。あなたらしくないわよ、無駄遣いなんて今まで一度だってしたことがない人だったのに、今まであんなにあった貯金はどうしたのよ。
あのお金は私たちが将来お店を始めるために必死にためておいたお金でしょ、それがここ数日でいったいどこにやったのよ。」
男性は将来の開業資金に夫婦で必死にためておいたお金を妻に内緒ですべて薬の費用に使い込んでしまったのだ。彼女はある時、急に人が変わってしまった夫を嘆くも既に彼は妻のことなど眼中になく、心は薬に支配されていた。
「うるさい!あれは俺が稼いだ金だ、どうしようと俺の勝手だろうが。薬がいるんだ、あの薬がないと俺は。他に金はないのか、金はどこだ!」
「やめて頂戴、お金はあれが全部よ。うぅ、本当にどうしてしまったのよ、いつものあなたに戻ってよ。」
これは珍しいケースではない、近頃は急激にこういったように突然人が変わり、いつの間にか蓄えてあった財産を使い尽くしてしまう人間が増加し始めたのだ。
また、それに伴いどんどん暴力性が増す人間や金を無心する人間も増加し始めた。そんな彼らは決まって薬が欲しい、薬を寄こせと叫んでいる。
しかし、ここでそんな彼らに救世主と言える存在が現れる。なんとその人間は最近増加している彼らのような症状を治療する方法を確立したというのだった。
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