284 薬の対策
王城から自身の領地に帰還したクレハはすぐさまドルクスとルークを呼び出していた。
「ドルクスさん、ルーク、例の全能薬と言われる薬は極めて危険です。王妃様から薬を摂取した人間の話を聞いてきましたが私が予想した中で最悪の状況でした。」
クレハは目の前にいる二人に王妃から聞かされた薬に関する暴力事件や強盗事件、牢内での出来事を話した後に自分の知っている薬と症状が似ており、もしもこのまま規制を行わずにいると信じられない数の人間が廃人になってしまい、それによる二次被害も計り知れないということを伝えた。
「だからこの薬は早急に規制を行わなければなりません。たとえ国が行わなくても私の領内では必ず禁制品にします。」
クレハが全能薬に関して話し終えると二人も事態の深刻さを察したのか難しい顔をしている。もちろん、ドルクスなどクレハが今まで見たことが無いような真剣な顔をしていたほどだ。
「話は分かりました。今の話を聞いたところでは一刻も早くその薬に関しては取り締まるべきでしょう。ですが、現状でその薬を服用している人間に関してはどうしましょうか?
話を聞けばその薬は一度服用してしまえばいつまでも求め続けるのですよね。規制してしまえば二度と手に入れることが出来なくなると考え、所持している薬を隠したりする可能性はないですか?」
「それに関しては厳しいようですが厳格に罰します。たとえ規制される以前で薬の効果を知らずに摂取してしまい薬から抜け出せなくなってしまってもそのような事を見逃せば瞬く間に薬が蔓延してしまいます。
薬に苦しんでいる人がいる場合には効果があるかはわかりませんが強制的に薬を絶つように家族に命じてください。もしも家族がいない、出来ないようでしたらこちらでもそう言った方法をとれるような場所を用意してください。
それから、規制には猶予期間を一週間程度設けてすでに薬を所有している場合は確実に届け出るようにしてください。また、領内に入る関所や街に入る検問に関しても薬の取り締まりを行ってください。これに関しては厳しくしてもらって構いません、むしろやりすぎという位がちょうどいいです。」
クレハが全能薬に関する対策を話すとドルクスは次々とメモを取っていく。この方法では現段階ですでに薬の虜になってしまっている人間にはあまり有効とは思えないような対策だが、これ以上蔓延することは防ぐことが出来る。
とりあえずはこの方法で対策を打ってくださいとクレハが伝えるとドルクスはすぐさま対応するために部屋を出ていくのだった。ドルクスが部屋から出ていきクレハは続いてルークに仕事を依頼する。
「それからルークには街でこの薬に関しての噂を広げるようにしてもらいたいんです。」
「噂ですか?いったいどんな噂を広げるんですか?」
「薬の危険性に関してです。今、話した症状をありのままに広げてください。国が規制していないにもかかわらず領内でいきなり薬の規制を始めれば必ず不満が生まれると思います。
別に不満に感じるだけならいいですけど、薬を広めたい人間が住人たちに変な話を広めたり、薬を規制するべきではないという声が大きくなると危険です。
だから、そうならないうちにその危険性を話して規制は正当なものだと住人たちに納得させるんです。」
クレハは薬の規制を行った事によって規制を嫌がる者たちが声を大にしてその不当性を訴えることにより、住人たちが洗脳されてしまうことを最も危惧していたのだ。
大抵、ああいう人間は声だけは大きいためいかにもその意見が大多数を占めているように錯覚させられてしまう。そうなれば本来は少数であったはずの意見もいつの間にか、大多数の意見となってしまい、そうなってからでは対処のしようがないのだ。
だからこそクレハは事前に手を打っておくのだった。
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