282 全能薬の正体
クレハは早速、例の怪しげな薬に関して話を聞くためにお王妃の元へとやって来た。クレハが何か発明するたびに王妃へと献上していた際、毎回アポをとっていてはすぐに美味しいものが食べられないと考えた彼女はすぐさまクレハを自身の面会に関してのみフリーパスとしていたのだ。
だからこそ、本来であれば男爵程度の貴族が王妃に面会を求めるなど簡単なことではないがクレハに至っては容易なことだった。もちろん、王妃へのお土産であるケーキを持参していくのを忘れない。
「それで、王都でそう言ったうわさが広がっているようなんですが王妃様は何かご存じでしょうか。そのような怪しげな薬に害がない場合は良いんですが、害があるものなら何か起こってから対応していたらすでに手遅れということもあるので早めに対応したいんです。」
王妃はクレハの話をケーキを食べながら聞いていると難しい顔を始める。その後、しばらく悩み吹っ切れたような表情を浮かべると王妃は全能薬に関して語り始めるのだった。
「まだ調査中で正確なことは言えないんだけど、どうやらあの全能薬と言われている薬はかなり問題がある薬のようね。」
「やはり、そうでしたか。何にでも効果のある薬なんて怪しすぎると思ったんですよ。」
王妃の口から全能薬に関しての問題性を聞き、クレハはやはりと言ったようにため息を吐いてしまう。
「それで、一体どんな問題があるんですか?噂はただの誇張で全く効果の無い薬を効果があると偽って売りさばいているとかですか?」
クレハは最も害のない問題に希望をかけるが現実はうまくいかないものである。王妃の口から放たれた全能薬の問題点とはクレハが考えていた中で最悪の事態だったのだ。
「違うわ、その程度だったら気が楽だったんだけれどね。あの薬は全能薬なんていいものじゃないわ。むしろ、悪魔の薬と言った方が適しているのかもしれないわね。
まだあまり話題にはなっていないかもしれないのだけれど、最近の王都では暴力事件や強盗事件が急激に増加しているのよ。正直言って異常としか言えない数だったの。
それで、急遽その件に関しての調査が行われたんだけど、そのほとんどが全能薬の服用者だったの。捕らえた犯人に話を聞いたところによると全能薬を服用した際の幸福感が忘れられずにもう一回、もう一回と使用していたんだけどお金が足りなくなってしまって犯行に及んだみたいね。
しかも、牢に入れた犯人は全能薬を寄こせって夜も関係なしに叫び続けているらしいわ。看守の一人に直接話を聞いたことがあったんだけれど、あんな人間は囚人であっても見たことが無くて異常だと怯えていたわ。全く、一体全能薬って何物なのかしらね?」
王妃は頭を抱えながら訳が分からないと困り果てていたが彼女の話を聞いたクレハは直感的にとある存在を思い浮かべてしまう。その存在はクレハが考えていた中でも最悪の存在であった。
「麻薬、ですか・・・・・・・。」
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