265 使者の発言の重み
「意味が分かりませんね、なぜ私にポポルコ王子の殺害容疑がかけられているのですか。」
クレハはなぜそのような経緯に至ったのか訳が分からないというような表情を浮かべている。それは王妃に関しても同様だった。
しかしエンポリー連邦の使者はクレハのことをはなから疑っており、耳を貸す気がないのか信用できないというような冷ややかな目を向けている。
「王族の殺害容疑ですからね、初めから認めるとは思っていないですよ。咎人はみな初めはそのように言うんです。ですが私の手にかかればそれは意味を成しません、最後には結局泣き崩れることになるんですから。」
使者はたとえ嘘をついていようと最終的には自白することになると自信満々に頷いているがクレハはそもそもポポルコ王子の殺害など行っていないため完全に間違いなのだ。
「先ほどから聞いていればいきなりやってきてうちの男爵に対して王族の殺害容疑など許されることではありませんよ!」
「何を言っているんですか、先に王子を殺害したのはそちらだ!恥を知りなさい!」
王妃は使者の無礼すぎる態度に今にも手を出してしまいそうな状態だが使者はそれとは反対にいたって冷静に、しかしながら強い言葉で王妃を責め立てる。
そんな二人を見ているクレハはこれ以上話していても水掛け論になってしまうと詳しい話を始めるのだった。
「まぁまぁ、王妃様落ち着いてください。やった、やってないを話したところで意味がありませんよ。」
「そ、そうね、こんなことで声をあげても意味がないわ。」
「ほう、王子を殺害するという愚かなことをしでかした割には言っていることはまともなのですね。」
クレハがせっかく王妃をなだめたというのに使者の発言により再び彼女は敵意をむき出しにしてしまう。もちろん、クレハだって言われっぱなしではない、皮肉の一つでも言いたくなるのだ。
「ええ、私はいたってまともですよ。あなた方とは違って常識人ですから。」
「はっ、どうやらまともだと思っていたのは間違いだったようだな、ただの愚かなバカ者か。」
クレハに皮肉を言われ、使者は気分を害したのか先ほどの発言はすぐに撤回される。しかし、そんな事も気にせずにクレハは嬉しそうに話をすすめるのだ。
「別にお好きに思っていただいていいですよ。それよりもあなたこそ自分の置かれている状況を理解していますか?」
突然ニヤニヤとそのような事を言われ使者は不安からか理解できないからか声をあららげる。
「なに、状況だと?状況を理解できていないのは貴様ではないか!」
「いえ、話をするだけと王妃様を騙し私を呼び寄せ、王族の殺害容疑までかけたのですよ。これで間違っていましたなんてことになればどうなるのか私などでは想像もできませんよ。使者と言っているんですからあなたの発言はエンポリー連邦の総意と言っても過言ではないのですよね?
凄いですよね、一国が断定するほど私の殺害容疑は固いものとなっているんですから。もしも違った時なんて国単位で笑いものになるんですよね、私だったら絶対にそんなことはできませんよ。王妃様はどうですか?」
クレハが王妃に目を向けると彼女はクレハがやりたいことを理解したのか先ほどまでのイライラした表情と打って変わっておもちゃを見つけた子供のような顔をするのだった。
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