236 マグナ大司教
「クソ!あの小娘が、我々の神を冒涜しやがって。絶対に許さんぞ、こんなこと許される筈がない!」
クレハに言い負かされ追い出された司教はクレハに怒りを覚えながら帝国へと帰還していた。彼がここへ戻ってきたのはクレハの元へ向かへと命令を下した大司教に報告を行うためだった。
しかしながら、自身の心酔している神をクレハに侮辱されたことがあまりにも許せず、報告どころではない状態だったのだ。そんな状態の彼を見つけたのは司教に命令を下した大司教その人だった。
「おや、こちらにいましたかマルシウス司教、あなたには例の商会の件に関して命令を下したはずですがその後はどうなりましたか?」
「こ、これはマグナ大司教様、申し訳ございません。あの小娘、私の提案を断わっただけではなく、我々の神を冒涜したのです!」
マルシウス司教はマグナ大司教に命令されていたことは断られてしまった事、その際にクレハが自分達の神を冒涜したことを怒りにまかせながら話す。本来であれば自分たちが信仰している神が冒涜されていると知れば怒りを喚き散らすはずであるが大司教はいたって冷静だった。
「そうですか、それは大問題ですね。分かりました、その者にはいずれリーシア様が神罰をお下しになるでしょう。ですから、私達は天啓を待つだけで十分です。」
「な、なるほど、流石はマグナ大司教様です。リーシア様は我々をいつでも見ていらっしゃるということですね。今回のクレハ商会の行いは必ずやリーシア様の手によって裁かれるでしょう!」
「はい、ですからあなたはもう休んでください。係のものに命じてあなたの部屋に最高の酒を届けさせます。酒はリーシア様を冒涜したものを私に知らせてくれた謝礼です。他の方には内緒ですよ。」
酒と聞き、マルシウス司教はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべる。彼の体型から想像できるようにマルシウス司教は大の酒好きであったからだ。
「は、はい、もちろんでございます。私はマグナ大司教の右腕ですのでいつでも、何なりとご命令をください。」
「ええ、次もお願いしますね。」
そうしてマグナ大司教は笑っているのか怒っているのか不気味な表情を浮かべながらマルシウス司教の元を去ることになる。大司教がそんな表情を崩したのは自身の部屋に入ってからだった。
「ちっ、使えないやつが。いつからお前は俺の右腕になったというんだ。あいつはもう必要ないな。おい、例のあれを進めろ、さっさとあの商会をつぶせ!あいつはその計画の火付け役になってもらおうか。くくっ、それくらいしてもらわないとな、右腕さん。」
大司教が自分以外は誰もいない部屋で小さく囁くと満足な顔を浮かべるのだった。彼の発言は独り言なのか、誰かへのメッセージなのか?それは翌朝にすぐに分かることになるのであった。
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