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220 これは醤油ですか?

現在、クレハ達はタルフ伯爵の案内にて港町から離れた別の街の見物を行っていた。


「これなんかどうだろうか?私のおすすめの飲み物だ、これは少々苦いが眠たい時に飲めば目がスッキリしますよ。何とも奥ゆかしい香りとコクのある味が好きでしてね。


牛乳などを一緒に入れて飲むのもまた違った楽しみ方ができるのですよ。もっとも、私はこの苦みが好きですからこのままいきますが。」


「オ、オーナー、これって醤油なんじゃないですか!こんなところにもあったんですね、僕はてっきり僕たちの所にしかないと思っていましたよ。えっ、でも今、牛乳と一緒に飲むと美味しいって、こっちにはそんな飲み方があるんですね、正直、全然美味しくなさそうですけど。」


ルークはタルフ伯爵に差し出されたものを見た瞬間に醤油であると考え、驚いていた。しかし、それは大きな間違いである。


この飲み物の正体を知っているクレハからすれば醤油ではないことが分かるが醤油しか知らないルークにとっては仕方がないのかもしれない。ルークの発言でクレハは醤油に牛乳を混ぜている様子を想像してしまい思わず吹き出してしまう。


「ぷっ、ル、ルーク、これは醤油ではありませんよ。牛乳と醤油を混ぜるなんて恐ろしすぎますよ!」


「えっ、だってこれ、醤油にそっくりじゃないですか!この黒さは醤油以外には考えられないですよ!」


ルークはクレハに笑われてしまい、こんな黒いものは醤油しかありえないと抗議している。そんな二人の会話に割って入ってきたのはタルフ伯爵だった。


「ふむ、その醤油というものは非常に興味があるがこれはそのような名前ではありませんよ。これはコーヒーと呼ばれる飲み物です。これはコーヒー豆と呼ばれるものから抽出した液体なのですよ。やはり、何と言っても苦いのが特徴ですね。」


「コ、コーヒーですか?それに苦いんですか。僕が知っている醤油はしょっぱいんですけど?」


ルークは自分の知っている醤油と全く異なる味と聞いてさらに困惑している。


「まぁ、とりあえず飲んでみましょうよ。大丈夫ですよ、これはしょっぱくありませんから。・・・うん、良い味が出ていますね。いい豆を使っている証拠です。」


「うっ、すごい苦いです。こ、これはチョット僕は苦手かもしれないです。」


二人はコーヒーを一口飲むと各々の感想を答える。どうやら、ルークにとってコーヒーは大人の味だったようだ。そんなルークを見て面白がったクレハはニヤニヤしながらルークをからかい始める。


「ふふっ、ルークにはこの味はまだ早かったようですね。これは大人の味ですから。」


「むむっ、そんなことはありませんよ!僕だってこのくらい簡単に飲めますから!」


クレハにまだ子供だと指摘され、ルークは負けじとコーヒーを飲むがその顔を見れば無理をしながら飲んでいることなど一目瞭然だった。


「ルーク殿、今お出ししたのは何も入れてないものですから苦くて当然ですよ。別に苦いのであれば無理せずに牛乳などを入れればいいと思いますよ。」


「いえ、僕は大人ですからコーヒーはこのまま頂きます!」


タルフ伯爵に牛乳を入れることを勧められるも、クレハにからかわれたルークは意地を張ってしまい、顔を歪めながらごくごくとコーヒーを飲み尽くすのであった。


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