197 白紙の取引
「とりあえず、船の金はお前ら持ちだ。それから、香辛料を買いたいのなら担当者である俺に手付金を持ってきたんだろうな?」
「はい?船を出すのは僕たちなんですか?それに手付金てなんですか?」
なんと、担当者は通常ではありえないことを発言したのだ。船の代金をクレハ達が出すことも普通ではないうえに、彼は手付金を要求してきたのだ。このようなことは通常、ありえるはずがない。
これは商会と商会との取引ではあるが一般的に考えれば商会で買い物をしているということだ。買い物をするだけで手付金などを要求されることなどありえるのだろうか?いや、絶対にありえない。
クレハの嫌な予感が当たってしまったようだ。ルークもこの担当者の異常さに、ポカーンとしていた。
「手付金っていえば、金に決まっているだろうが。香辛料が欲しかったら俺に金を払えって言っているんだよ。俺が担当してやるんだからそれくらい当然だろ。それに、船の金もお前らで払うのが当然だろ。
あぁ、それと、港にいる船員の滞在費も全部お前ら持ちだからな。まぁ、それくらい払うのなら用意してやるよ。ほら、さっさと手付金を持ってこい。じゃないと、売ってやらねーぞ。」
そんな担当者の態度に、クレハは我慢の限界を迎えてしまう。これは商人以前に人間として論外だ。この商会の噂はむしろかわいいものだったかもしれないと今更思ってしまうクレハであった。
「ルーク、行きましょう。どうやらこの商会には碌な商人がいないようです。このような商会とは取引する価値がありません。」
「そうですね、流石にこれはありえません。さっさと帰りましょう。」
クレハがこの商会との取引をなかったことにするとルークに告げるとルークも同様に思っていたのか、帰ると告げたのだ。
「はぁ?お前ら何言っているんだ?あぁ、強がっているのか?そう言うのは無駄だ。いるんだよな時々、自分たちの思い通りにならない商談で諦めるって言って値下げを狙う奴。
俺は絶対に値下げなんかしないからな。諦めて金をさっさと出すんだな。」
どうやら二人の行動を値下げをしようと企んでいると考えた担当者は無駄な行為だとクレハ達に伝えるが、二人にその意思などない。
「いいえ、取引は行いません。この話は白紙です。それでは。」
クレハに先導され、ルークと共に立ち去ろうとすると担当者が最後に何か話している。
「おい、ちゃんと手配しておいてやるから金を用意して来いよ。どうせ、うちの商会以外じゃ香辛料なんて買えないんだからな。さっさと用意しないと無理やり取り立てるからな。」
後ろでは何か叫んでいるようだったがクレハ達は何も気にしていなかった。すでにこの商会に興味が無くなった二人は後ろで何を叫んでいても関係がないのだ。
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