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190 船出の目的

「オーナー、風が気持ちいいですよ!あっ、見てください、あんなところに魚がいっぱいいますよ!」


クレハとルークの二人は現在、アジーノに話していた船にて、新たな大陸へと向かっていた。アジーノとの交渉の結果、船を一隻出してくれることになり、そこには船乗りたちとクレハの護衛などが乗り込んでいたのだ。


当初は自分だけの都合で船を出してもらうことは船乗りたちに良い顔をされないかと考えていたクレハだったが、どうやら、アジーノが顔を利かせてくれたようだ。船乗りたちがクレハに会うや否や、口々にお礼を告げてきたのだ。


どうやら、彼らは事前に船乗りの呪いに関して病にかかるものが少なくなってきたのがクレハのおかげであるということを伝えられていたようだ。


「本当ですね、海がこんなに澄んでいるものとは思いもしませんでした。綺麗ですね。」


クレハもめったに目にすることが出来ない海の透き通った美しさに純粋に驚いていた。そんな中、ルークがふと、今回の旅の目的が何なのかを疑問に思う。


「そう言えば、オーナー、今回の旅の目的は何なんですか?急に船旅で別の大陸に出るって言われてそのままついてきたので何も聞いていませんでした。」


そう、今回、ルークはクレハに別の大陸に航海をすると言われ急に一緒に船旅に出ることになったのだ。そのため、旅の目的も聞かずに着いてきただけだった。もちろん、クレハの領主の仕事に関してもドルクスの存在が居なければ今回の船旅はかなわなかっただろう。


クレハ達が船上で過ごしている間、ドルクスは屋敷でヒィヒィと声をあげながら働いていることだろう。もっとも、基本的にはビオミカ男爵領ではドルクスが主導で運営を行っていたため、クレハが急にいなくなってもそこまで困るという事態には陥っていなかった。


「確かに、その点に関しては申し訳なかったですね。別の大陸に行けるという好奇心がうずいてしまい、ついついはしゃぎすぎてしまいました。


そうですね、大きな目的としては私たちの大陸に無いような商売のタネを見つけに行くということですね。あとは6割くらいがこちらに無いような文化や食べ物なんかを見てみたくなったからです。


最近、働きすぎだと思うんですよね、ですから、たまには息抜きの為に旅行をと考えてしまいました。」


「てっ、それって、半分以上が旅行じゃないですか!」


クレハの予想外の理由に思わず、ツッコんでしまうルークだった。商売のために船を出していると考えていたルークだったが、話を聞いてみれば6割と半分以上の目的が旅行だったのだ。


「安心してください、ちゃんと商会のことを考えた旅ですよ。ちょっと旅行気分を楽しむだけです。ルークも楽しまないともったいないですよ。」


「まぁ、そう言われてみればそうですね。僕もどうせなら楽しんじゃいましょう!」


こうして、二人は久方ぶりの休暇を楽しむのだった。


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