188 船乗りの呪いが無くなる日
「ふむ、そこのかた、詳しい話を聞かせてはくれんかね?」
周囲の人間がクレハの発言に驚きを隠せず、固まっている中、一人の人間がクレハに話しかけてきたのだ。その人間は杖を突いた老婆だった。しかしながら、その老体に似合わず、彼女の目からは力強い意志が感じられた。
「失礼ですが、あなたは?」
「おお、紹介がまだじゃったな、ワシがおぬしが会いたがっていた責任者じゃ。」
「そうでしたか、それは失礼いたしました。それで、少々お話をしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「もちろんですじゃ、領主様に面会を求められればいつでも対応させていただきます。それに、船乗りたちのあの病が何とか出来るとお聞きしました。そのことについてもお聞かせ願いたいですのじゃ、船乗りたちにとってはあの病は呪いのようなものですから、それが無くなるのであれば大歓迎です。」
こうして、クレハ達は彼女に案内され、応接室へと案内されるのであった。
「さて、領主様には早速で申し訳ございませんが、例の病気に関しての話を聞かせていただけますかな?あの病、船乗りの呪いは今、こうしている間も苦しんでいるものが出てきています。ワシはそんな子たちを少しでも減らしたいのですじゃ。」
「分かりました、私もこのまま船舶業界が衰退していくのは見過ごすことが出来ません。まず、あらかじめ言っておきますが、私がこれから話す船乗りの呪いに関して予防方法は十分だと思います。ですが、既に症状がある人に有効化は保証できませんので、ご了承ください。ですが、少なくとも症状を悪化させないくらいの効果はあると思います。」
クレハはあらかじめ、予防効果はあるが既に罹患してしまった人間に関しては効果を保証することが出来ないということを伝えておく。クレハの前世でこの病気と全く似た症状の方法をレモンを摂取することで予防することが出来るというのは知っていた。
しかしながら、実際に症状を発症した人間に関しての治療法などまでは知っていなかったのだ。そのため、治療方法に関してはレモンを摂取させるということしか思い浮かばなかった。
「それでも十分です、少なくとも今から呪いにかかるものがいなくなるのであれば多くの命が救われます。」
クレハが既に症状のあるものの治療法が分からないことを申し訳なさそうに伝えるが、予防方法を教えてくれるだけでも十分だと、お礼を告げるのであった。
こうして、クレハは船乗りの呪いという病の簡単な予防方法はレモンを食べればよいことを伝え、航海を行う際にレモンを積んでいけばよいことを伝える。
もちろん、そのようなことを急に言われてもレモンなど大量に用意することが出来ないと反論をする老婆であったが、その点に関しては抜かりない。ここに来る前にレモン畑の生産者からレモンを大量に買い取る契約を行ってきたことを伝え、そのレモンを入港局に卸すことを約束するのだ。
こうして、この日をもって船乗りの呪いは三大死病の一つとして恐れられていたが、いつしかこの病で無くなる人間が少なくなり、三大死病ではなくなったのであった。
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