186 レモン畑の生産者
「それでは行きましょうか!」
「えっ?いったいどこに行くんですか?」
「何言っているんですか、帝国から頂いた領土を見に行くんですよ!まずは、例の病を何とかしなければいけませんからね。その問題から片付けましょう!」
クレハはそう言うと、早速ルークと共に港町へと向かうのであった。
クレハとルークの二人は帝国からの賠償で手に入れた港町、カジュジュへと足を運んでいた。クレハは視界いっぱいのレモン畑を見つめるや否や走り出し、その景色に見とれているのだった。そんなクレハを追いかけ、ルークも後から走ってくる。
「さて、つきましたね。ここが噂に聞いていたレモン畑ですか。爽やかな香りが広がっていいところですね。」
「オーナー、ちょっと待ってくださいよ。はぁ、はぁ。」
「ルーク、遅いですよ。このレモンが港を救うんですから、早く生産者に話を取り付けに行きますよ。」
こうして、クレハ達は例の奇病の対応策であるレモンの生産者へと話を聞きに行くのである。
「すみません、こちらのレモン畑のかたですか?」
「ん?そうだべ、お嬢さん、いったい何の用だべ?迷子にでもなったか?」
クレハはレモン畑で作業を行っている老人に声をかける。すると、彼はクレハが迷子になってこのような場所に迷い込んでしまったのではないかと尋ねてきたのだ。
「いえ、そうではないんですよ。私、最近になって帝国からこちらの領土を頂きましたクレハと申します。すこし、お話を伺いたいのですがよろしいですか?」
「あれま、領主様だったべか。これは失礼しただ。それにしても驚いただ、お貴族様からこの街は帝国の領土で無くなると言われて、領主様もすぐにいなくなっちまっただ。そんなこんなで、心配していたげど、こんなにも早くに新しい領主様が来てくれるだなんてな。」
老人は口を大きく開け、驚きを隠せないでいた。それもそうだ、いきなり、自分の目の前に領主が現れ、話を聞いて欲しいと言っていたからだ。
「安心してください、領主になったからには皆さんの生活も私が保証しますよ。それで、おじいさんに話を聞きたいんですが、よろしいですか?」
「ん?領主様がワシに話を?もちろん、いいだが、いったいどんな要件だ?こんな年寄りに頼むのなら、若いもんを連れてこようだか?」
老人は、自分のような人間に頼みごとをするのであれば若い人間の方が良いのではないかと考え、先ほどのような提案をするがクレハが用があるのは彼なのだ。
「いえ、おじいさんにお話が聞きたいんですよ。ところで、この街のレモン畑をお持ちの家はおじいさん以外にどなたか知っていますか?もし、お知り合いなら、その方にもお話があるので、紹介していただきたいのですが。」
「いいや、この街のレモンは全部ワシの家のものだ。最近じゃ、ワシも年だけ、息子夫婦も手伝いに来てくれて助かるが、なにせこれだけ広いから、ほんとに大変だ。最近じゃ、この街も港がずいぶんさみしくなっちまって、ワシらも潮時かもしれんな。」
老人は港町に活気がなくなり、とてもさみしそうにしていた。自身の農園であるレモン畑も港での買取が少なくなればこれ以上は厳しいと悲観していたのだ。
しかし、そんな老人とは対照的に、クレハは老人がこの巨大なレモン畑を一人で所有していることに、手間が省けると喜び、老人にとある提案をするのであった。
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