185 三大死病
一方、クレハとの交渉が終わり、皇帝からの命を果たした使者は皇帝に報告を行っていた。皇帝はクレハが帝国に対して莫大な要求をしてくると思っていたため、まさか赤字である港を引き取ってくるという話を聞いたときには歓喜したものだ。
「ほ、本当なのか!帝国での飴の販売もする上に、あの問題だった港も引き取ると言ったのか?」
「はい、確かにそのように契約を結びました。コーカリアス王国の国王にも同時に契約の書類をお読みいただき、サインをしていただきましたので契約は完了です。もしもこの状況で条件を変えようものなら国王の顔に泥を塗ることになります。
そして、それは我々もですが、向こうも同じです。ですので、いまさら条件を変更するなどどいうことはないと思います。」
皇帝は使者の報告を聞き、とても機嫌を良くしていた。彼からしてみれば、最近、考えていた悩みの種が二つまとめて片付いたのだ。皇帝は今までクレハのことを面倒な奴だと考えていたが、今では感謝していた。
「そうか、本当によくやったぞ。これで、当面の問題は片付いたな。しかも、今までの悩みの種だったものまで引き取ってくれるなんてな。運営をしていても毎年赤字、壊そうにも金がかかると。あんなもの、ただの金食い虫だ、ほんとに助かったぜ。だが、あいつ、あの港が赤字しか生まないなんてことを知らなかったのか?かなり有名な話だと思ったが?」
「結果的に、帝国は悩みの種を無くすことが出来たのですから問題はないのでは?」
「そうだな、まぁ、問題ないか。よっしゃ!今日は飲み明かすぜ!」
こうして、皇帝は安易な考えで悩み事が消えたことを喜んでいるのだった。しかし、そもそもクレハの性格を知っていれば自身が損をする取引などするはずがないのだ。そんな彼が、クレハの本当の目的を知るのはほんの少しの未来の話である。
「それで、オーナー、レモンというのを使うことによってどうなるというんですか?あの病は体中から血が出てくる奇病で船乗りのほとんどに現れる病気ですよ。巷では、船乗りの呪いという名前もついているみたいで、その病気があるから、年々、船乗りを引退する人たちが増えて、大陸から船で運ぶ商品は割高になっているんですから。」
ルークはクレハがレモンでどうにかできると言っている船乗りたちの病について話し始める。この病は船乗りたちが発症し、かなりの死者を出しているため、年々船舶を動かすための船乗りが少なくなってきており、船に関わる仕事は衰退の一途をたどっているのだ。
「分かっていますよ、ですが、その奇病が簡単に予防することが出来るとすればどうですか?」
「えっ?あの三大死病の一つを予防できるんですか?」
ルークの言う三大死病とは各国で共通して病気による死因として最も多い三種類を示している。クレハ達の話している病気は死亡率が最も高い病気の一つでもあり、数々の研究者が特効薬や病気の予防方法を研究していたが、未だに何も対策がない病だったのだ。
だからこそ、そんな病気を簡単に予防することが出来るというクレハの言葉に、ルークは口を開け、驚きを隠せないでいるのであった。
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