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180 治安の悪化

「陛下、事態は深刻です。すぐにこの件を何とかしなければ帝都は瞬く間に治安が悪化し、暴動が起こるでしょう。」


ライスオット帝国の宰相が神妙な顔つきで皇帝に現状を説明している。なぜ、こんなことになっているのかというと、帝国の国民たちはコーカリアス王国に飴を求め、国をまたぐ距離を何度も移動する事態となっていた。


しかし、大商人や貴族でも何でもない彼らにそのようなことは金銭的な面から非常に難しいことだ。そのため、気づけば貯金も少なくなってしまい、これからどうやって生きていけばいいのか分からないという人間が少なからず、出始めていたのだ。


このように、人々に貧しさが蔓延している時には決まって犯罪などが横行し、治安が悪くなる。既に、兵士たちからその様な兆候があるという報告を受け取っていた宰相は手遅れになる前にと皇帝に報告を行っていたのだ。


「まさか、こんなことになるとは。宰相、正直に答えて欲しい。事態は深刻なのか?」


皇帝にはこの問題の原因に心当たりがあったのだ。先日、第一皇女と何故、クレハが帝国にて飴を配っているのか理解できなかったが今となってはその意図を理解することが出来る。


ここにきて、皇帝はようやく、クレハの行動の意図を理解することが出来たのだ。しかし、だからと言って、飴を作ることが出来る人間はクレハのみなのだ。既に、皇帝ができることなど何もないと言ってもいい。


「はい、今すぐにでも何か対策を打たなければ手遅れになってしまいます。まずは、なぜ国民がコーカリアス王国に飴と呼ばれるものをわざわざ買いに行くのかを調査したいと思います。そこから、原因を特定し、対策を打ちたいと思います。」


「いや、その必要はない。原因は分かっている、この件に関しては私が何とかしよう。」


宰相はまずは原因を特定しなければ対策のしようがないと考えていたが、皇帝の口から飛び出したのはまさかの回答だった。宰相は驚きを隠せないでいるも、皇帝が何とかすると言ったのだ。宰相はうなずくことしかできなかった。


「かしこまりました、何かお手伝いできることが私にありましたら、いつでもお声がけください。」




そうして、宰相が皇帝の部屋を去った後、皇帝は盛大にため息を吐き出す。


「はぁ、全くやってくれたな。まさかこんなことになるとは、クレハとか言ったな。そいつ、向こうの国王よりもたちが悪いんじゃないのか?まじで、どうするかな。とりあえず、あのバカの首でも差し出してこっちでも飴を販売してもらうように頼むか?でもな、あの時、処刑はしないっていうことになったからな。あぁ、クソッ、これなら無理にでもあの時、消しておくんだったな。」


皇帝はどうしてあの時、第四皇子を処刑しなかったのかと悔やみつつも、いまさらどうしようもないとどうにかして帝国でも飴を販売できないかとクレハの機嫌を取る方法を模索するのであった。



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