171 切り札
皇妃に言い負かされている二人を見て、第一皇女はこいつらは何をやっているんだという目で、二人を見ている。そして、仕方ないとため息を吐きつつ、皇妃に最も有効的な話をする。
「お母さま、確かに自分のお腹を痛めて産んだ息子を処刑するのを嫌がる気持ちもわかります。ですが、本当にそれでいいのですか?」
第一皇女には何か秘策があるのか、本当にそんなことをしてしまってよいのかと皇妃に尋ねている。そんな第一皇女の態度を皇妃は不審に思い、何事かと尋ねる。
「あら、いったい何があるというのかしら?大事な息子を殺される以上に大切なことなんてないのだと思うのだけれど。」
「実は少し前の話なのですが、一時、髪がキレイになる薬を売っている商人がいるという噂を耳にしませんでしたか?」
「ええ、聞いたことはあるわ。なんでも、ものすごい薬を売っている商会があったのだけれど、誰もその商品を手に入れることが出来なかったのよね?」
「はい、そうなんです。実はその商会の会頭はこの帝国の貴族に嫌な目に合わされてしまい、帝国とは取引を行わないと言っていたようです。」
皇妃はそのことは初耳だったのか、怒り心頭である。実は、彼女もその薬を捜してはいたのだが、なぜか手に入れることが出来ないと彼女のお抱え商人は頭を下げてきたのだ。まさか、商人が頭を下げているのにも関わらず、怒ることもできず、皇妃は泣く泣く諦めていた。
「まぁ、そうだったのね!その貴族というのを目の前に呼んできてちょうだい!私が直接、罰を与えますから。」
皇妃はその問題を起こした貴族の名前を知らないのだ。既にその問題を起こした貴族家、つまりはシルドラ家は皇帝によってお取りつぶしになっている。
「お母さま、それでしたら問題はありません。その貴族家はお父様がすでにお取りつぶしになっています。」
「あら、そうなの?あなたやるじゃない。それで、いったいその話がこのことと、どうつながるの?」
皇妃は第一皇女が何故、この話を持ち出してきたのかがいまだにわからない。
「良いですか、その貴族は確かにお父様がお取りつぶしになりましたが、被害を受けた商会の会頭は未だに帝国に対してよい気持ちを持っておらす、未だに商品を売らないと公言しています。つまりは、その人間を説得しなければお母さまの求める薬も手に入らないのです。」
「では、その人間をここに呼んできてくれますか?私が直々に相手をいたしましょう。お詫びにその人間の望むものをなんでも与えて、帝国にも商品を卸させましょう。」
皇妃はそれで何も問題はないと言いたげな表情で案を出すが、彼女は肝心なことを理解していなかったのだ。
「お母さま、それは無理なんです!だって、その人間こそがこの馬鹿が帝国から追い出したクレハなんですから!こんな目にあった後で帝国から呼び出しがあっても、戻ってくるわけがないですよ!」
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