156 勝者、ナタリ~~!
ケーキに関して恐る恐る尋ねるテクネー王妃だが、それに対してクレハは当たり前のように砂糖の存在を明かす。
「はい、わが商会では砂糖の安定生産を可能としました。もちろん大量に生産も可能です。そのため、このケーキには我々が開発した砂糖がふんだんに使われているので、価格も低価格に抑えることが出来ます。」
「なっ、さ、さっ、砂糖の安定生産クネ!」
今まで何人もの人間がその課題に取り組んできたが一人として成功することが出来なかった。そんな課題を目の前の人間は可能にしたと言ったのだ。テクネー王妃が驚かないはずがなかった。
そんなテクネー王妃の驚き顔を見て喜んでいるのはナタリー王妃だ。今まで、さんざん自国の技術を馬鹿にされてきた彼女はテクネー王妃の敗北の瞬間を見て喜びが隠せないでいた。
「あら?何をそこまで喜んでいるのかしら?この程度のこと、お宅の国では普通にやっていることなのですよね?
いえ、むしろクレハのことをビックマウスなんて言っていたんですから、お宅の国ではもっとすごいことが出来るんでしょうね。はぁ~、まったくうらやましい限りですわ。ねぇ~、テクネー王妃様。」
ナタリー王妃はテクネー王妃に顔を近づけながらにやにやと笑みを浮かべ煽り倒している。別に、ナタリー王妃の力によって砂糖が安定生産できるようになったわけではないが、一応、コーカリアス王国の参加枠としてクレハは出店しているのだ。
特に実害はないのでそれくらいならと勘弁している。そんな中、あまりのナタリー王妃の煽り方に、テクネー王妃は黙り込んでしまい、自然と拳に力が入る。そんな彼女のこぶしを見ていると次第にプルプルと震えているではないか。よほど、ナタリー王妃に負けたのが悔しかったのだろう。
「だ、黙るクネ!別にお前のおかげで砂糖の生産をなし得たわけではないクネ!自分の手柄のように振舞うなんて恥ずかしくないのかクネ!」
「あら?別に私は自分の手柄なんて思ってはいませんよ。この手柄はすべてクレハ達の商会のものなんですから。私がこんな態度を他の人たちの前でとるわけがありませんよ。せいぜい、あなたの前だけです。」
「よ、余計にたちが悪いクネ!そんなことをして大人げないと思わないのかクネ!」
テクネー王妃はナタリー王妃の大人げなさを責める作戦であったがそんなものは今の彼女に通用しない。いまさら何を言っても負け犬の遠吠えにしか聞こえず、顔を真っ赤にしながら逃げて行ってしまうのだった。
「あぁ~、王妃様。流石に可哀想だったんじゃ、あの人今にも泣きそうでしたよ。」
「良いじゃないの、あれくらいがちょうどいいのよ。他のみんなの仇もとれただろうし。本当にありがとうねクレハ、長年のイライラが一気に解放されたわ!今日は気持ちよく眠りにつけそうよ。」
「はぁ、それは良かったです。」
彼女のあまりの対応にルンルンと軽い足取りで去っていくナタリー王妃をクレハは苦笑いをしながら見届けることしかできなかった。
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