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147 クレハ商会の名は遠く離れた領地にも響き渡る

ポティリ男爵は事前に出店する製品に関して大々的に表明を行っていた。そのため、クレハは彼女がガラス製品を出店することを知っていたのだ。しかしながら、クレハが出店を行う品に関しては王妃からのお願いで全く公表を行っていなかった。そんなこともあり、ポティリ男爵はクレハの出展するものが気になっていたのだ。


「それで、結局ビオミカ男爵は何を出店するんだい?ほかの奴らは事前に出店するものを聞いていたが、あんたのは聞いたことが無くてね。」


「あぁ、それはわざとなんですよ。王妃様からのお願いで会場を驚かすために一切情報を伏せていたんですよ。我々が出店するのは、こちらのスイーツなんですが、お一つ食べてみますか?」


クレハは先ほどできたばかりのケーキを切り分け、ポティリ男爵へと差し出す。


「へーぇ、ビオミカ男爵の所はスイーツを出店するのかい?こんな高級品をくれるっていうのならもらうけど、あたしが食べてしまって大丈夫なのかい?王国から提供される資金にも限りがあるからこれだってそんなに用意できていないんだろ?」


スイーツというものは砂糖が使用されているため、一般的には大変高価なものというのが世の常識だ。そのため、ポティリ男爵は今回の万博でクレハが提供できるものが数少ないのではないかと考えていた。しかし、その点に関しては杞憂だ。


「大丈夫ですよ、これ一個にほとんどお金はかかっていませんから。人員もこの日のために大量に用意していますから一日に1000個くらいなら提供できると思います。ですので、気にしないで召し上がって下さい。」


「せ、千個だって、さすがに見栄を張りすぎじゃないかい?そんなことすればいくら金があっても足りないだろ。まぁ、食っていいって言うならもらうけど。」


そう言いつつもポティリ男爵はクレハからもらったケーキを食べると固まってしまう。しばらく経っても固まったままで不思議に思ったクレハが声をかけようとすると急に叫びだす。


「うんめ~っ!おい、おい、おい、おい、なんだよこれ。すんげーうめーじゃねーか!これは万博の出店枠に選ばれるのも分かる気がするぜ!」


「そろそろ万博が始まりますからネタバラシをしますけど、クレハ商会で砂糖の安定生産が可能になったんですよ。ですので、大量に砂糖を使用するこのケーキも安価で大量に提供することが可能となったんですよ。万博が終われば商会で販売する予定ですので、良ければ買ってみてくださいね。」


「マジかよ!クレハ商会って言えば紙の生産も行っていなかったか?そのうえ、大陸では生産が不可能と言われた砂糖まで成功させやがったのかよ。まったく、いったいどうなっているんだよ。技術力が違いすぎるぜ。」


クレハもまさか前世の知識で生み出しましたなんて言うこともできず、笑ってごまかすしかなかった。


「たまたま、運が良かっただけですよ。それに部下たちの力もあってこその成功ですから。」


「かぁ~、出来る奴は言うことも違うね。あたしもそんな風に言える上司になってみたいよ。それで、このケーキってやつも商会で買えるのかい?もしそうなら、お抱え商人の奴に買いに行かせるんだけど。」


「それは難しいかもしれないですね、このケーキはすぐに食べてしまわなければならないものですので、ポティリ男爵の領地では難しいかもしれないです。」


その言葉を聞き、ポティリ男爵は非常に残念そうにするのであった。


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