122 因果応報
「我々がここに来た理由は伯爵との契約を取りやめにするつもりだったからです。ですので、伯爵から取引の中止をしていただき、大助かりです。」
「なんだと、契約を取りやめにするとはどういうことだ!」
伯爵は先ほどから頭に血管を浮かべ商人の代表をにらみつける。しかし、睨みつけられている商人は猫をかぶっていたのだ。先ほどからイライラしている伯爵の相手をするのを面倒に感じていたのだろう。
先ほども伯爵に対する態度ではなかったが、今の態度はそれよりもひどいものとなっていた。
「はぁ~、いい加減気づいてくださいよ。どれだけ鈍いんですか?今、この国で最も人気のある商品を扱っているクレハ商会の商品は非常に価値があり、数多くの商人たちがその品を求めています。しかし、先日から商人たちの間であるうわさが広がり始めたんです。
クレハ商会の会頭である領主、クレハ様へ敵対している貴族が強硬手段ではめようとしたらしいですが、その貴族がドジをふんだんでしょう。実行犯が捕まり命令した貴族が明らかになりました。そこで、クレハ商会は報復として伯爵と関係のある人間には商会の商品を一切販売しないということを決定したんです。
ここまで説明すれば伯爵なら心当たりがありますよね?クレハ商会をはめようとした貴族と関わりがあると我々はクレハ商会と取引を行うことができないんです。クレハ商会の醤油と紙、これを取り扱うことができるだけで伯爵との取引の何倍もの利益を出すことができます。
以前から、伯爵との取引は我々に不利な契約ばかりでした。あなたは足元を見すぎたんです、いくら伯爵からしか羊皮紙を購入できないと言っても我々の取り分が少なすぎます。ですが、クレハ商会は違います。
伯爵のようにマージンを取ることなく、適正な価格で取引を行っていただけるらしいです。あなたと契約をしていると我々の商売が立ち行かなくなるんです。今回のことであなたと縁を切れてよかったです。それでは我々はこれで失礼します。」
伯爵の返答を待つことなく商人たちは一人、また一人と部屋を退出していく。今までは伯爵しか紙である羊皮紙を作り出すことができなかったため、立場は圧倒的に上であった。そのため、商人たちに無理難題を押し付けたり、何かと理由をつけて高額で売りつけたりとあくどいことを行ってきたのだ。
商人たちも伯爵に逆らえば羊皮紙を手に入れることができないと不当な契約であっても今までは我慢してきた。しかし、最近では徐々にエスカレートしてきており、彼らも限界だったのだ。そんなとき、クレハ商会の話を聞きつけたのだ。
クレハ商会との取引を結ぶことができれば今までよりも売り上げが見込めるうえに伯爵からの高額な羊皮紙を買うことも必要なくなる。彼らが伯爵との取引を取りやめようするのは必然であった。
この日を境に伯爵はすべてのお抱え商人たちから取引の中止を宣告されるのであった。
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