114 顔役は広告塔です
チンピラたちは騒ぎを聞きつけた住人たちの通報により駆けつけた衛兵に連行されていった。連行されている途中でもルークたちへの恨み言は絶えず、最後まで喚いているチンピラたちだった。
「プエストさん、ありがとうございます。本当に助かりました!」
ルークもプエストが駆けつけてくれたことに驚いてはいたが、店の危機を救ってもらったためまずはお礼を告げる。
「なに、領主様には世話になっているからな。その知り合いのお兄さんを助けなくちゃ何されるか分かんないぜ。」
「それにしても、プエストさんは製造所の警備をしているんじゃなかったんですか?どうしてこちらに?」
「今日は休暇なんだよ。久しぶりに屋台でも見に行こうと思ったらいきなり飛び出してきた嬢ちゃんが現れてな。話を聞いたらお兄さんの店でイチャモンをつけられているっていうから駆けつけてきたんだよ。」
「そうだったんですね、本当に助かりました。そうだ、今日からこの店オープンしたんですけど、試食の商品を食べていきませんか?この店で新たに売り出した調味料の販売を行っているんです。」
そう言うと、ルークはプエストに豚の角煮を勧める。すると、プエストは他の客たちと違い怪訝な表情をせずに口の中に放り込む。
「おっ、そういうことならもらうぜ。おーっ、なんだこれ!めちゃめちゃ柔らかいじゃねーか、すごい美味いぞ!」
「これに使われている調味料が醤油と言ってなんでも合うんです。ここでしか売っていませんよ!この調味料はオーナーが考え出したんです、それにこの豚の角煮のレシピもオーナーの考案なんです。」
この美味しい料理をクレハが生み出したと聞いてプエストはとても驚いていた。単純に領主であるクレハが料理人のようなことをやっていることもだが、ここまでおいしい料理を生み出せる才能に驚いていた。
「オーナーって、この前の領主様じゃねーか!あの人こんなものまで作れるのかよ、ふつうに料理人としてもやっていけるじゃねーか!」
「そうなんですよ!オーナーは領主になる前から食べ物に関する知識が豊富で色んな食べ物を生み出してきたんですよ!」
「マジかよ!俺も最近までずっと屋台をやってたけどよ、こんなにうまい料理を出すことなんて出来なかったぜ。くーっ、なんだよ、領主としての才能もあるうえに、料理人としてもすげーって、本当にすごい領主様だな。」
プエストは自信のあった料理の分野ですらクレハに負けていると知って落ち込んでいた。しかし、それと共に自分達の街の領主が優れた人間であるということに、この街を大切にしているプエストは誇らしげな気持であった。
もちろん、先ほどからプエストの目の前ではルークがクレハのことを褒められ、誇らしげに鼻を高くしていた。
「ちょっとまてよ、そういえばさっき、この店の経営は領主がやっていると言っていなかったか?」
「そうですよ、僕たちは基本的にお店に出向きませんがここの商品はオーナーが考えられた商品で、トップはオーナーです。」
「かーっ、あいつら領主様の店に領主の命令でみかじめ料をもらいに来たって間抜けすぎるだろ。あいつらも狙う店を間違えたな、まぁ、それで捕まえることができたのなら結果的に良かったのかもしれないが。」
「そうですね、まさかそんな人たちがいたとは思いませんでした。今回の件でそういう人達がいなくなってくれればいいのですが。」
ルークも常にお店に顔を出すことはできないため、また、今回のようなことが起こってしまうのではないかと心配しているようだ。
「そういうことなら任せとけ。おーい、みんな!ちょっと聞いてほしんだ。気づいている奴もいるかもしれないが、さっきの奴らが言っていた領主様の命令でこの店のみかじめ料を取りに来たっていうのは嘘だ!
この店の経営者こそが領主様本人なんだ。それに、俺もさっき食べたけどこの店の醤油を使った料理はすごい美味いぞ!ここの店にしか売っていないらしいからみんなも買っていってくれよ。
色は真っ黒でためらうのも分かるが味は俺が保証する!絶対に買っておいたほうがお得だぜ!」
プエストは街の顔役でもあるため店に顔を出していた主婦たちも彼のことをよく知っているのだ。みな、あのプエストがそこまで言うのなら、一度くらい買ってみても悪くはないのかもしれないと考える。
「プエストさんがそこまで言うのなら一回くらい買ってみてもいいかもしれないわね。」
「俺、こんな黒いの食べてたまるかと思っていたけど、あいつがあそこまでうまいって言うなら食べておかないと損だな。」
先ほどまでは遠めに見ていた客たちもプエストの一声により、次々と押し寄せていたのであった。
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