112 招かれざる客
オープン初日にしては大盛況で醤油もほとんど売り切れそうになっていた時だ。ルークたちの元に招かれざる客が訪れる。それは3人組のゴロツキだった。
「おいおい、お前ら!誰の許しを得てこんなところで商売をしているんだ?ここで商売をするなら、俺たちに挨拶する必要があるだろうが!」
彼らの登場に先ほどまでにぎわっていた店内が一気に静寂に包まれる。今まで買い物をしていた客たちも迷惑そうな顔をしながら事の成り行きを見守ってる。
「なんなんだ、あいつら?」
「あたし、知ってるわよ。あいつらここらへんで幅を利かせているチンピラ三人組よ。噂じゃ、人をさらったり、殺しもしているそうよ。気の弱そうな商会からもお金を巻き上げているみたいね。」
「おいおい、マジかよ。せっかくいい店ができたって思ったのに、そんな奴らに目をつけられたのか?」
「ほんとよね、あんな可愛いお兄さんが店長さんならきっと言いなりになってしまうわよ。」
客たちはルークのことをこの店の店長と思っており、その容姿からチンピラたちの言いなりになってしまうのではないかと危惧していた。
しかし、ルークはクレハと共にクレハ商会で働いていた人間だ。このようなことは経験があり、その際の対処法などもクレハからみっちり仕込まれていた。そのうえ、この店には一切の負い目がないため、ルークは強気で彼らに対応した。
「お客様ではないようですね、生憎と当店の営業はこの街の法にのっとって行われていますのであなた方に挨拶をする必要はありません。即刻、お引き取りください。」
「あーっ、これは言っていなかったがな、俺たちのバックにはこの街の領主様がいらっしゃるんだよ。兄ちゃん、いくら物分かりが悪いと言っても、お貴族様に逆らうなんてことしねえよな?この街の領主様に逆らって、ここで商売できるなんて思ってもいないよな?」
その言葉に店を訪れた客たちはざわざわしだす。彼らがこの街の領主とつながっていると言っているからだ。ただでさえ、この三人組には誰も文句を言えないうえに、領主とつながっているのであれば誰も彼らを止めることができない。
しかし、そんな嘘がルークに通用するわけがない。なぜなら、この商会の会頭こそがこの街の領主であり、ルークの良く知っている人物だからだ。
しかし、クレハの名を貶めるようなことをする人間を許すわけにはいかない。すぐさま従業員にたのみ、誰か人間を連れてくるように頼む。
「なるほど、あなた方の行為は領主様が公認されているということでしょうか?」
「そうだよ!何回も同じことを言わせてるんじゃねぇ、言われた通り、さっさと渡すもんを渡せばいいんだよ。」
ルークは時間を稼ぐために、話を引き延ばそうとする。
「それはおかしなこともあるものですね、このお店は領主様が直々に経営を行われているお店ですのにその領主様がみかじめ料を取って来いと言われたんですか?」
「はっ、お前何を言っているんだ。後ろ盾がないからって、領主様の名前をかたるなんて重罪だぞ。だが、俺たちはやさしいからな、店の売り上げの半分を毎月収めれば許してやるよ。」
ルークの言っていることは信用されておらず、彼らはさらにつけあがってしまった。客たちも彼らのやりように、憎々し気な顔を向けている。
「おい、確かに領主様の名をかたることは重罪だけどよ、あいつらのバックに領主様がいらっしゃるってことのほうが考えられないよな。それに、売り上げの半分なんてやりすぎだろ。へたしたら、利益なんて無いようなものだぞ。」
「しっ、聞こえるぞ。あいつらに聞こえたらどうするんだ、もし本当に領主と通じていたら俺たちなんて簡単に消されちまうぞ」
客たちはひやひやしながら見守っているが、本当のことを知っているルークはすまし顔で彼らに対応している。その余裕が気に入らなかったのだろう、ついにチンピラたちはルークたちに殴りかかろうと拳を振り上げるのであった。
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