99 需要ありますか?
この日、クレハとルークの二人は紙の製造施設の警備を任せる人材を捜しに来ていた。
「ところでオーナー、警備を任せる人員は伝手があると言っていましたけど、そんな伝手ありましたか?ここに来たの初めてですよね?」
よく分かっていないルークを可笑しく思いながらも、クレハは説明する。
「何を言っているんですか?あなたも知っている人ですよ、ほらここです。」
そう言うと二人がいたのは以前、野菜を売っていた屋台だった。以前のように屋台のおやじが野菜を売っている。
「もしかして、あのおじさんですか?でもあの人、タダの屋台のおじさんですよね?」
「以前、彼自身が言っていたじゃないですか?俺はここでは顔役のようなものだと。顔役の人が荒事になれていないなんてことはありません。それに、顔役であれば何人か紹介してくれると思いまして。」
「なるほど、そういえばそんなこと言っていましたね。確かにピッタリの伝手です。」
二人は屋台のおやじに話しかけるため、再び野菜を注文する。
「おじさん!野菜をください。」
「おっ、お前さんはこの間の。なんだよ、俺の料理がまた食いたくなったのか?」
「まぁ、そんなところです。それよりもおじさん、屋台が終わったらでいいんですけど、時間はありますか?」
「まぁ、特に用はないからな。もうすぐ店じまいだから、これでも食って待っててくれ。嬢ちゃんも食べるだろ?」
ルークの後ろにいるクレハに気づいたおやじは先日も喜んで自分の屋台の商品を食べてくれたことを思い出し、焼きたての商品を勧めるのであった。クレハも小腹がすいていたため、ルークと一緒に食事をすることにしたのであった。
「そうですね、私も頂きます。ルーク、私の分もお願いします。」
二人が焼き野菜を食べ終わり、しばらくすると今日の売るものはすべて無くなったようで店じまいを始めていた。片付けも終わり、彼がこちらにやってくる。
「今日はもう店じまいだから良いぞ。それで、話っていうのはなんだ?とりあえず、軽くつまみながら話すか?」
三人は軽く飲み物や食事をとるために、飲食店に入っていく。
「それで結局、話ってのは何なんだ?」
おやじはルークに向かい話しかけるが、答えたのはクレハだった。
「ここからは私がお話しします。以前、ここら一体の顔役のようなものだと言われていましたが、それは本当ですか?」
「ああ、そうだな。大体の奴には顔が利くぞ、別に俺一人が言っている悲しい奴じゃないからな。他の奴らからも認められている顔役だぞ。」
「ま、まぁ、あなたの頭が悲しくないことを祈ります。では本題なのですが、近々とある商品を製造しようと考えているのですが、その施設の警備を任されてくれませんか?顔役であるのなら信用できる人間を何人か知っていると思うので、何人か一緒にお願いしたいんですが?」
突然のクレハの提案に、疑わしい目を向けている。いきなり、とある製品を作るための警備をしてほしいと言われれば考えられるのは怪しい商品の密造などだからだ。
「嬢ちゃん、悪いことは言わないから変なものには手を出さないほうが良いぜ。二人はまだ若いんだから、危ない橋を渡ることないぞ。」
そんなおやじの態度に何か勘違いをしているのだと、クレハは直ぐに思い浮かぶ。
「特に危ないものではありませんよ?これは領主が認めている事業ですので何の問題もない商品です。」
「あのな、お嬢ちゃん。領主が関わっていますよって言われて、はいそうですかなんて言うわけないだろ。そもそも、何で嬢ちゃんがそんな重要な場所の警備の話を持ってくるんだよ?」
疑わしそうな、おやじの目線にようやくクレハは正体をあらわにする。
「ああ、それは私がここの領主だからですよ。」
「ブブッーー。」
おやじは飲んでいた酒をルークに向かって噴き出したのだった。
「う~っ、汚いですよ~。」
おやじの噴き出す酒なんてどこにも需要がないのである。ルークは恨めしそうな顔を向け、顔をふくのであった。
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