97 農業改革とO・H・A・N・A・S・H・I
ルークのこれからが決まり、クレハも自分にしかできない役目を果たすためにドルクスに提案をする。
「ドルクスさん、領地の基本的な統治の方法は分かりました。この領地を発展させるために、ここ数日考えていましたのでそれを聞いていただけませんか?もし、それが実現可能であれば早速、取り掛かってほしいんです。」
「分かりました、まずはお話を聞かせてください。」
「まずは第一に食料に関する問題です。この国の食料は美味しくもなく、栄養も低いと考えられます。そこで農業改革を行おうと考えています、肥料を作りましょう!」
クレハが自信満々に話しているが二人はピンと来ていないようだった。それもそうだ、クレハの前世では当たり前だった肥料もこちらでは存在していない。そのため、二人はそれが何で、どのようなものかもわかっていない様子だった。
「あの、クレハ様、肥料というものは何なのでしょうか?」
「肥料とは作物の収穫量を増加させたり、美味しくするためのものです。」
ドルクスもここで提供されている野菜があまり美味しくなく、痩せこけているのを知っていたため、その問題を解決しようと考えている中だった。
そこでクレハからの話を聞けば、その問題を解決できるというではないか。確かに、ドルクスは国王からクレハが誰にも考えられないようなアイデアを考えつくという話を事前に聞いていた。
しかし、それは誇張された話ではないかと考えていた節もあり、まさかここまですぐにアイデアを出すとは考えていなかったのだ。
「なんと!そのようなものが存在するのですか、今まで聞いたことがありませんでした。お恥ずかしい限りです。クレハ様は陛下からお聞きしていた通り素晴らしいアイデアの持ち主なのですね。」
「そんなことないですよ、たまたまです。」
まさか前世の知識を使って思いつきましたとは言えず、クレハは偶然思いついたということにしてドルクスの疑問に答えるのだった。
「それでクレハ様、その肥料とはどのようにして作られるのですか?」
「肥料には家畜の糞を用います。牛や豚の糞を集めて数カ月放置した後、それを畑にまけば良いだけです。その後に育てた作物は今までの作物に比べて大きく、美味しいものになると思います。確か、ここら辺一帯は酪農も盛んにおこなわれていますよね。それならば材料を調達するのは問題ないと思います。」
淡々と肥料の説明を行うクレハに対し、ドルクスとルークの二人は訝しげな表情を浮かべている。二人ともクレハの言っていることを何かの冗談だと考え信じていない様子だった。
「オ、オーナー家畜の糞なんかを食べ物を育てる土に撒くなんて冗談ですよね?さすがにそれは汚いですよ。」
「なんだ冗談ですか、クレハ様もお人が悪い、一瞬信じていましたよ。確かに、そんな魔法のようなアイテムがあるわけないですよね、そんなものがあれば既にこの国で使われていましたよね。」
二人は笑いながらクレハの言っていたことを冗談だと思っていた。しかし、クレハ自身は冗談など言っていない。
「二人とも何を言っているのですか?私は本気で言っているんですよ、冗談じゃありません。とにかく、試験的でもいいですからそれを試していただけませんか?これは結果が出るまで日数がかかるので長期的な事業で構いません。よろしいですか?」
「はぁ、かしこまりました、幸い捨てるようなものですので材料自体も簡単に手に入ります。クレハ様のおっしゃる通りにいたします。」
ドルクスがそう言うとクレハは肥料の作り方、運用方法に関しての説明を行ったのであった。しかし、その話を聞くドルクスの顔は疑わしいものであったことは言うまでもない。
「オーナー、お疲れなんですね。今日はもう休んでください、また今度一緒に露店巡りでもしましょうね。」
ルークから向けられる目は非常に暖かなもので、クレハの頭がおかしくなったと思っているようだった。
「あなたが普段から私のことをどう思っているのかよく分かりました。今度、じっくりとO・H・A・N・A・S・H・Iしましょうね。」
クレハのことを気遣ったと考えていたルークだが、なぜか目の前の笑顔を浮かべているクレハを見て背筋が急に寒くなったのであった。
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