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クリスマス番外編④

『皆はりーちゃんにあげる物とか決めた?

私は手作りの編みぐるみにしようと思ってるけど』


 エロいサンタ衣装にも色々とあるものだ。と謎の感心をしているとスマホにグループトークに何かが書き込まれていた。 そちらの画面に戻すと月城さんがクリスマスパーティのことで書き込んでいて、思わず固まる。


 そういえば、特に考えてなかったけど、りーちゃんには渡していた方がいいだろう。 子供だし、よくネトゲでレベリング手伝ってもらってるし。


 何かしらをあげようかと思ったが、金持ってる身体の弱い女の子が喜ぶ物ってなんだろうか。

 ロリに詳しそうといえば、アキレアか、あるいは三輪パイセンかだけれど。 アキレアはまだしも、三輪パイセンにりーちゃんのことを教えると絶対に紹介しろと寄られる。 一応歳は離れているが、友人として三輪パイセンは紹介するわけにはいかない。


 あの人、かなり押し強いし、なんだかんだで気の弱いりーちゃんには精神的に疲れさせてしまいそうだ。


 とりあえずまだ考えていないことを伝えようとスマホを弄るが、なんと書けばいいのか微妙だ。


 エルちゃんと同じ年と言えば気にならないが、月城さんは二つも歳上の先輩だ。

 そんなに気にすることもなさそうな人柄だが、ここは一応敬語にすべきか。

 けれど、なんだかんだで小さいことを気にしているため「自分にはタメ口で同じ年齢の月城さんは敬語なんですか」と落ち込ませてしまいそうな気がする。


「怠いな」


 適当にスマホを見ていると、軽く震えてまたグループトークに書き込まれたらしい。


『この前拾ったいい感じの木の枝』


 エルちゃん……意外と変な子だ。

 不思議なところもあるな、などと思っていたが、よく見ると表示されているプロフィール写真がエルちゃんなだけで、名前の欄にはアキレアと書かれている。


「分かりにくいな」


 自分の顔写真使えよ。 せめてツーショットにしろよ。 てか、木の枝ってなんだよ。


『アキさん、木の枝は汚れとかがあって身体の弱いりーちゃんにはよくないので、ちゃんと煮沸したりとかの処理をしてからじゃないと駄目ですよ?』

『でもさ、煮沸したら枝が煮沸してるときに水分吸ったり出して乾かすときに吐いたりして、歪んだり脆くなったりしない?』

『分かった止めとく』


 素直だな。 というか、エルちゃんのプロフィール画像がアキで、非常にどっちがどっちか分かりにくい。

 こういうところの画像は個人の判断が付きやすいものにしとくのが基本だろう。 ……まぁ、二人とも友達少ないし、天然なところがあるので仕方ない。


 グループトークを見てるだけで、特にイチャついてないのに、イチャイチャ感がすごい。


 俺も彼女欲しいな。 と思う。

 ほんの少しだけ考えて、首を横に振った。

 適当に告白して、可愛い女の子を彼女にしても、劣等感は否めるものではないだろう。


 正直なところ、俺はロリコンではないので興味はないけれど、エルちゃんの容姿は幼いながらも驚くほどに整っている。 クラスで一番可愛い子を彼女にして、何かしらの理由で横に並べたとしたら、酷い差があるだろう。

 いや、本当にロリコンとかじゃなくて。


 イチャついている二人を見ると起こる、アキへの劣等感から彼女を作っても、劣等感が解消されることはないだろう。 それに普通に失礼だ。


 アキへの劣等感を解消するためにと思えば、エルちゃんよりも顔面偏差値が高くて、性格がまともで、賢くて、運動も出来て……みたいな感じだろうか。

 そんな人がこの世にいるとは思えないし、いても俺を好きにはならないだろう、それに今度はその女の子に劣等感を抱きそうだ。


 彼女を作るとしたら、そんな装飾品扱いではなく、当然ながら好き合ってる女の子でないとならないな。


「……まぁ、そんないもしない女の子のことよりも、りーちゃんへのプレゼントだ」


 りーちゃんはとんでもない富豪みたいなところの子供だし、親にも甘やかされていてなんでも買ってもらってるから、俺が普通に買える物は喜ばないかもしれない。

 なら、手作りか。


「いや、そうとも限らないか?」


 親に買ってもらう物とは違って、直接渡せるという利点がある。 例えば、りーちゃんは喜ばないだろうがエロ本とかは市販されていても欲しがってもりーちゃんの手に渡ることはない。

 エロ本などの親にもらえない物に限らなくても、日記帳などの親には見られたくないような物ならば市販品でも喜ばれるかもしれない。


 ほんの少しだけ考えて、エロ画像が保存されているスマホに目を落とす。


『俺はアルバムにする。 写真とか入れるやつな。』


 確かりーちゃんもスマホを持っていたし、現像するのは時々俺がしたらいいだろう。

 後々に残る物で、父母に見せない秘密のアルバムとか、何となく子供は喜びそうである。


 ついでに、写真を撮るということから、来年もよろしくという意味を軽く込めておこう。


 何度か鳴るスマホをポケットの中に入れて、身体を起こす。 太陽がまだ高くあることを確認してから外に出る。

 ほおを撫でる風に息を吹き付け、白い湯気を口から吐き出した。


「さっむ」


 そんな愚痴を口から吐き出してから、気がつく。 あのグループトーク、確かりーちゃんも参加してなかったっけ?


◆◆◆◆◆


 遂にクリスマスパーティ当日である。 当日なのだ。

 トナカイ姿の月城さん、僕、アキさん、レイさん、ロトさん、リアナさん、ケトさん、グラウさん、ペン太さん、知らないおじさんが、がっくりと項垂れる。 豪邸の前で。


「ロト、ちょっと首曲げるな、トナカイの角がガンガン当たってるから」

「兄さん、角引っかかってますよ」

「痛っ、背の低いペン太とエルの近くに寄るな! 角が刺さるぞ!」

「いや、その、な? サンタは若い子がやると思って」

「シュバルツ……場違いな気がするんだが。 うわっ、角が飛んできた」

「まさか、トナカイがこんなに被るなんて、思っていなかったね、あはは……」


 まさかの100%トナカイである。 クリスマスというか、異教徒の密会という感じがしてしまう。

 半笑いの家政婦さんに連れられて玄関に入ると、鹿の頭の剥製がトナカイに代わっていてクリスマス仕様であることに気がついたが務めて無視をする。ガンガンと高そうな調度品に安っぽいプラスチックの角がぶつかるが、りーちゃんのお母さんは何も言わずに優しそうに微笑んでいる。


 りーちゃんの待っている部屋に入ろうかと思ったが、前と違ってそこまで体調が良いというわけではないので、パーティ形式には出来なかったことを思い出す。


「りーちゃんの体調も、今はそんなによくないので、少人数だけ入って、プレゼントを渡して少し話してから交代みたいな形にしようと思います。 いいでしょうか?」


 みんなの同意が得られたので、りーちゃんのお部屋の前にトナカイ達が列に並ぶことになった。 最後尾から俯瞰していると、大小体型クオリティ様々なトナカイが並んでいる。 なんだこの光景は。

 そしてアキさんの角が片方ない。

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