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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!


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169.本気で腰を絞ったけれど……

 どの形のドレスを選ぶかで、個性がでるわ。ずっと前から準備していたコルネリアは、ふわりと丸く広がったプリンセスライン、胸元はビスチェで肩が見える。色は柔らかな緑色、ミントより淡い色を選んだ。お姫様らしいドレスだった。


 マルグリットは、エンパイアラインですっきり仕上げた。胸の下で絞って、すとんとスカートが落ちる形なのに、パフスリーブに似た付け袖がある。肩の下から二の腕をすべて覆う形の袖は、ドレスとは別に装着するアクセサリーとして仕上げられていた。すっきりした水色だから、形と色のイメージが重なる。


 アデリナは長身を生かしたスレンダーラインを選んだ。これなら布の量も調整できるし、仕上げが駆け込みでも間に合ったでしょう。オレンジというか、黄色に近い鮮やかな色なのに薄い。山吹色と呼ぶそうよ。全体に地紋が入っており、動くと輝きを増すの。Vネックにしたのは、大人っぽくていいわ。


 私はホルターネックにした。胸から首まで覆う形の絹を首の後ろで結ぶ。背中がそっくり空いて見える形よ。スカートはマーメイドが近いのかしら。膝まで体に沿い、一気に裾が広がる。膝の下から、長くひだを引きずる形にしたの。色はほぼ白ね。地模様のように刺繍を入れたから、そのビーズの色でラベンダーに見えるはず。


 全員が淡い色に統一したため、並んでも色が喧嘩しない。コルネリアのドレスの絹を見た時に思いついたのよ。全員がパステル系の淡色にしたら、並んでも映える、と。それぞれのパートナーの色を取り入れ、男性陣も着飾る予定だった。


 交代しながら衣装を守った騎士を労い、ドレスを着る。というか、装着する感じね。腰を絞るエリーゼが、渾身の力でリボンを引っ張る。すでに入室済みのコルネリアは、奥でやはり腰を絞っていた。


「やっぱりこの形にして正解だったわ」


 後から入室して着替えるマルグリットが、苦笑いした。苦しいのが嫌で、楽な形を選んだみたい。アデリナのスレンダーラインも、あまり腰を強調しない。するすると着込んで、心配そうに私の様子を見ていた。息を止めて一気に絞り、エリーゼが固定する。


「もっと、もっと細くっ!」


 準備に余念がないコルネリアの必死の声が聞こえる。あれは……さすがに絞りすぎじゃないかしら? 倒れたら元も子もないから、注意しないと。そう思ったら、彼女の侍女から進言されていた。腰骨が軋んでいます、と。やだ、怖いわ。指示して、私は少しだけ緩めてもらう。


「今日は皆、綺麗だ」


 嬉しそうなアデリナは、自分も着飾っている自覚がないのかしら? それとも、皆に自分も含まれているの? にこにこと笑顔を振りまくため、化粧をする侍女に「真顔で……笑うと化粧が崩れます」と叱られた。可哀想だけれど、化粧による綺麗は笑顔と真逆の方向なのよ。


 最後に赤い帯を手に取った。肩から腰に掛ける幅の広い帯は、見事な刺繍が施されている。絹としても質が高く、中に芯を入れてしっかり仕上げてもらった。これならば今後はベルトとして使用できるわ。


「有難く頂くわね、アデリナ。今日はお父上が来られるの?」


「ああ、父上が来る」


 同じ赤い帯を、アデリナも肩から掛けた。今回、女性はすべて左肩から右の腰へ向けて掛ける。フォルト兄様とルヴィ兄様はベルトにして、エック兄様は私達と同じ使い方。クラウスはサッシュとしてウエストマークに使う。ベルトより幅広く巻いて見せる形ね。


「準備ができたか? おお、全員綺麗だ。すべて私の娘になるのだな……」


 感動した面持ちのガブリエラ様に促され、廊下で待つ婚約者と腕を組む。用意した馬車までエスコートされた。ルヴィ兄様から順番に乗り込み、一組一台ずつ走り出す。馬に跨りたいと騒いだフォルト兄様達を押し込んで、最後の馬車で神殿へ向かった。


 待ちに待った婚約の儀式、楽しみだわ。

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