表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

169/206

168.婚約式前夜

 出来上がったドレスを前に、装飾品を確認する。完璧ね。丁寧に施された刺繍やビーズの装飾、綺麗に見えるよう整えられたレースやフリルの位置、何もかもが美しかった。


 ドレスや宝飾品はすべて一室に集められ、警護の騎士がつく。これはガブリエラ様の代で起きた騒動が原因だった。前日になって、側妃となる方のドレスが破られたの。どうやらガブリエラ様の信者の仕業らしいけれど、犯人は見つからなかった、ということになっている。


 公式発表では、犯人は()()()()()()()()。実際は……怒ったガブリエラ様が一刀両断にしたそうよ。お陰で着ていた白いドレスに血飛沫が散って、大急ぎで別のドレスに着替えたとか。エック兄様の母君である側妃様も、別のドレスで参加したわ。


 この騒動でガブリエラ様の結婚式と、側妃のお迎えが同時に行われたの。フォルト兄様の母君と私の実母は、その後ゆっくりと嫁いできた。だから巻き込まれなかったのよ。というより、話が広まって噂になったため、怖くて手が出せなかったのね。


 なんとも勇ましい話だけれど、お父様はうっとりと見ていたと聞く。ガブリエラ様にベタ惚れだった話は本当みたい。側妃となった三人は、それぞれに曰くつきなの。突然婚約破棄されたり、実家で虐待されて嫁き遅れたり。浮気した婚約者を切り捨てた女性もいたわね。


 様々な理由で、実家や婚家にいられなくなった女性を集めて、条件付きの側妃になってもらった。ガブリエラ様のお考えは斬新だったわ。夫にたくさんの子が必要だから、側妃にも一人ずつ子を産んでもらう。さらに行き場をなくした女性達の保護も兼ねていた。


 こういう采配が出来るから、皇妃向きなのだわ。同じ立場だったとして、クラウスに別の女を宛がう? 無理だわ、私なら嫉妬してしまうから。同情する余地があっても、本当に愛されているのが自分一人としても、体を重ねる夜を許せないでしょう。


「明日が楽しみね」


「はい、お嬢様と呼べる最後の日になります」


 エリーゼの返事に、ふふっと笑った。


「結婚式の日じゃなくて?」


 奥様と呼ぶのはその日からでしょうに。そう告げれば、エリーゼは困ったような笑顔を浮かべた。眉尻が垂れて、でもどこか嬉しそうだわ。


「結婚式で奥様になられますが、明日の婚約式以降は皇妹殿下とお呼びいたします」


 首を傾げて先を促す。長い付き合いだけれど、彼女の忠誠心は本物よ。いつも私を中心に考えてくれて、前の結婚……ではなかったわね。アディソン王国での滞在でも、常に私の味方だった。


「リヒター帝国の皇妹殿下として嫁がれるのですから」


 そういう意味ね。納得して頷いた。外部へ対してのアピールであり、私の立場を確定する意味で必要だと示している。ローヴァイン公爵になるクラウスが、皇帝の妹である私を娶った。その形を喧伝するつもりみたい。


「そんな牽制しなくても、もう余計な勘繰りをする貴族は残っていないわ」


 すべてお父様やガブリエラ様、先日のじぃ達の活躍で消してしまった。エック兄様も裏で手を回し、私を中傷した貴族を処分していたわ。お陰で、帝国の宮殿も風通しが良くなったのよ。


「あとはお願いね」


 交代制でドレスや宝飾品を見張る騎士に声を掛け、廊下に出た。マルグリット、コルネリア、アデリナの三人は、すでに宮殿に到着している。与えられた部屋に護衛付きで、しっかり守られるはずよ。この時点でも危害を加えられる心配をするのは、過剰な気もするけれど。


 何かあってから後悔するより、事前に無駄な手を打つほうがいい。明日の婚約式を楽しみに廊下を歩き、自室の手前でジルヴィアの部屋に立ち寄った。すやすやと眠る娘の頬に触れ、おやすみの挨拶を済ませる。


「もう寝ましょう、お肌に響くわ」


 結婚式ほどではなくても、美しい姿を披露したいから。早く寝て肌を休ませなくちゃ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
側妃達が、なろうのヒロインだった…w女性達の保護も兼ねた側妃!素晴らしいですね! ガブリエラ様、格好怖い!怖格好いい?なんにせよ、容赦ないけどそこが素敵です!信者だったなら、ガブリエラ様に一刀両断にさ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ