表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

163/206

162.意外な人が赤子慣れしていた

「おや、似合うではないか」


 ジルヴィアを抱いたマルグリットに声を掛け、ガブリエラ様が現れる。赤子を抱いているので立ち上がれないマルグリットが、慌てて会釈した。立ち上がらずとも良いと示しながら、アデリナを伴ったガブリエラ様は絹の壁をかき分ける。きょろきょろと見回し、困ったような顔になった。


「コルネリアはまだか? ならば、私が一度引こう」


「……お気遣いありがとうございます。とても助かりますわ」


 話す間に彼女が到着するといけないので、ガブリエラ様はこっそりと裏側から出ていく。その間に、アデリナは笑顔で近づいてきた。にこにこと表現するのが似合う、裏のない笑顔は見ていて気持ちがいい。


「おはよう、トリア。今日も素敵だな」


「アデリナ、ありがとう。こちらが一番上の兄の妻になるマルグリットよ」


「マルグリット? よろしく頼む」


 こういう人なのとフォローを入れるより前に、マルグリットは穏やかに応じた。挨拶を交わし、フォルト兄様との婚約を喜ぶ。アデリナも「あたしより強い男と出会えて嬉しい」と機嫌よく返した。ジルヴィアを見つけると、アデリナは目を輝かせた。


「この子はトリアの子か? そっくりだな、可愛い……本当に人形みたいだ」


 うっとりと目を細める姿に、マルグリットが視線で尋ねてきた。アデリナが抱く許可を出せば、意外にも彼女は慣れた手つきで受け取った。あやすように揺らす仕草も、堂に入っている。かなり慣れている様子だった。


「アデリナは、赤子の扱いに慣れているのね」


「ん? ああ、一族の年下はほとんど()()()ことがある」


 んんっ! 変な声を誤魔化すために、マルグリットと空咳をする。


「慣れていてよかったわ、アデリナ。その……()()()()()ことがある、のほうが適切ね」


「そうなのか? 貴族の言い回しは難しいな」


 年下をまとめて襲った表現になっているわ。そう指摘したいけれど、彼女の場合「(武力の意味で)襲ったぞ?」と疑問形で返って来る気がするの。極端に言葉が少ないだけで、間違ったことは言っていないけれど。この辺はフォルト兄様といい勝負ね。


 フォルト兄様にハイノという副官がいるように、アデリナにも補佐する侍女が必要だわ。でも弱いと置いて行かれるから、ある程度戦える……女性騎士? でも補佐が強いと戦いたがるでしょうし。悩ましいわ。


「遅くなりました、お待たせしましたか?」


 考え込んでいると、コルネリアが到着した。彼女はプリンセスラインのふんわりした形で、腰に柔らかなミントのショールを掛けている。宝石類も翡翠かしら? 艶のある緑の半貴石で纏めていた。


「まだ時間前ですわ。ライフアイゼン公爵令嬢」


 マルグリットが肩書きで呼んだので、二人を私が紹介し合う。これで名前を呼べるはずよ。ちらりと様子を窺う騎士に、小さく頷いた。もう大丈夫だから、ガブリエラ様に合流していただきましょう。


「ガブリエラ様がおいでになるわ。こちらへどうぞ」


「ん? ガブリエラ様ならさ……」


「アデリナ! ジルヴィアとこちらに座って」


 さっき来ていたと言うつもりだったの? アデリナの言葉を遮り、マルグリットと並ぶコルネリアを見守る。体幹がしっかりしているアデリナは、首を傾げながらもすとんと座った。まったくぶれない。安定しているため、ジルヴィアも泣き出すことなく大きな瞳で見上げていた。


「しかし、本当にトリアにそっくりだ」


 見つめるアデリナの目は優しい。本当に子供の扱いに慣れているのね。愚図り始めたため、アンナが受け取って後ろを向いた。乳を与えるみたいね。


「待たせた、全員揃っておるか?」


 ガブリエラ様はにこやかに登場し、集った淑女達はカーテシーを披露して迎えた。もちろんカーテシーは淑女だけよ? アデリナは胸に手を当てて、イエンチュ王国流の敬意を表した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
フォルトが2人に増えたw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ