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期待外れと追放された神眼使いが《墓守》に就職したら墓地にダンジョンが出来てました   作者: 紙風船


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第十三話 シエルの正体

 色々と落ち着いて一段落した頃、突然シエルがピッと白い指を一つの墓石に向けた。それは我らが第770番墓地地下ダンジョンの入口となっている大墓石だ。この墓地内では一番大きな墓石で、瘴気が多い。だからこそ、死霊達が集まる会場となっていた。


「その墓石がどうかした?」

「っ、っ!」


 ブンブンと腕を振って指差す先は墓石に刻まれた名前だ。そういえばはっきりと見た事はない。『あぁ、どなたかは知らないけれど立派な方が眠られているのだろうなぁ』程度の認識だった。歴史上の人物だったとしても、僕には知る由もないからね。


 しかしシエルが指し示すので改めてジッと見つめる。ていうか読めないのにジッと見つめると読めるようになるのってこれ、神眼のお陰なのかね?


「えーっと……『ユーラシエル・アヴェスター 勇者と共に戦った大魔導士、此処に眠る』……ユーラシエルさん……シエル……シエルさん?」

「!!」


 今日一番の頷きを見せた。伝わってくる感情は喜びである。


「シエル、大魔導士だったのか……あぁ、だから妙に威圧感があったのね」


 ボーっと夜空を見上げて立っていただけなのに、異常な程の圧を感じた。あれは生前の魔力か、それともその結果の瘴気か。とにかく、普通じゃなかった。


「……」

「……違う違う違う、異常者って言ってる訳じゃないから。凄く強そうだったって話!」


 強そうってか、強かった。戦わずにして勝つみたいな、そんな圧倒的強者の圧があった。今はなりを潜めているようだが。


「シエルは勇者と一緒だったんだね。じゃあフィンギーさんとも仲良かったんだ? あれ、でもエレーナさん居たよな……」

「……?」

「ん? フィンギーさん知らないの? 勇者って言ってたけど」

「……、……。…………」

あー……なるほど、先代とか、そういうのあるんだ……」


 今代の勇者がフィンギーさん。シエルは先代の勇者であるヴァレクストラという人と一緒だったそうだ。どんな人だったんだろう……。やっぱりフィンギーさんみたいに強かったのかな。勇者っていうくらいだし、きっとそうなんだろうな。


「……そろそろ帰ろっか」

「っ」


 こくんと頷くシエル。今日からは管理小屋に二人で住むことになる。食事とかはどうするんだろう? 朝になったらアル君に聞いてみよう。きっと何か助けになってくれるはずだ。だってそれが仕事なのだから。



  □   □   □   □



「……てな感じで、どうしようもなくなっていつの間にかスケルトンがテイム出来てた。あの赤い骨はテイムアイテムだったんだねぇ」

「ほーん……そういうこともあるんだな」


 アル君ってこういうところ変に騒がないから居てて安心出来る。


「てかナナヲ、テイムしたんならモンスター用の拘束具買わなきゃ拙いだろ」

「拘束? なんでそんな物騒な物を……」

「だってテイムしたモンスターって最初の頃は結構暴れるって話だぜ?」

「それは……」


 人としての記憶が蘇った結果、人ではない体になっている事に気付いた反動だろうか。それとも多人数の人間の瘴気を混ぜ合わせて吸収してしまったことによる混乱か。

 シエルは大魔導士で、しかもスケルトンだから良かったのかもしれない。だって僕が死んで、生き返った……と言うのは間違いかもしれないけれど、自分というものを獲得した時、複数人の記憶が混在していて、意識を取り戻してもそれが本当の自分か分からないとか想像も出来ない。それに体が虫や魚、獣だったらと思うと狂いそうになる。


「大丈夫だったよ」

「そう? なら良いんだけどよ。じゃあまぁお前んとこにスケルトンの従者が出来たって追記しとくから、拘束具じゃないにしても何かテイムモンスターだって分かるものは身に付けさせろよ。なんたって、墓にスケルトンの従者が来る訳だからな」

「確かに。間違える事はないとは思うけれど、混戦なんてしたら万が一って事もあり得るしね」

「そういうこと。じゃあゆっくり寝て、また元気にダンジョン探索よろしくな」

「りょーかい。んじゃおやすみ」

「おう、おやすみ」



  □   □   □   □



 そんな軽いやり取りでシエルが仲間になった事を報告したのが今朝の話だ。その足で僕は家の倉庫にあった赤い紐を使ってシエルの首に付けるリボンのネックレスを作ってあげた。断じてこれは首輪ではない。リボンチョーカーだ。


 そして今、僕とシエルは地下ダンジョンでスケルトンを倒している。


「シエル、そっち行ったよ!」

「っ!!」


 振り抜いた手刀がスケルトンの背骨を断ち切る。バラバラと崩れたスケルトンが塵になるのを横目に、僕は正面のスケルトンを始末した。


「よし、これで周辺のモンスターは片付けたね」

「っ」


 こくんと頷くシエルの様子をジッと見つめる。


「?」

「あぁ、怪我してないかなって。大丈夫そうだね」

「!」


 無事のようで安心したが、それがシエルは嬉しかったらしく、僕の腕にギュッと自身の骨の腕を絡めてきた。随分と懐いてしまっている。骨なのに可愛らしく見えるのは見慣れたからかな。


 ちなみにシエルは大魔導士だったこともあって、魔力が凄く多い。ただ、それを魔法としては使えないそうだ。種族としての制限があるらしく、魔法を使うには瘴気を吸収してスケルトンメイジに進化する必要があると言っていた。大魔導士だっただけあって多岐にわたる豊富な知識に、昼間は質問攻めをしてしまって若干寝不足だ。


 そんな頼れるシエル先生は有り余る魔力を使った物理攻撃でスケルトン達を殲滅している。どうやるかというと、先程の手刀だ。手に集めた魔力で不可視の刃を形成し、それによる切断。急所である首だけじゃなく、胴体等も寸断してしまうのでこれがまた心強い。


 ……もうシエルだけいればいいんじゃないかな?

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