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挟撃

 鋼の拳、小刀を構える二人。

 炎はその速さで先陣を切り、体重をかけた一撃を天叢雲の首元をめがけて振り下ろす。

 常人どころか彼女と同じ忍者、鋼鉄兵器を身につけている龍臥ですら見切るのは難しい速さ。

 だが、その一撃を天叢雲は鋏と変えた左腕で受け止めた。

 炎が小柄とはいえ全体重と尋常ではない速さを掛け合わせた破壊力は本来であれば、防御した部分を破壊できるものだ。

 そんな一撃ですら天叢雲の鋏を破壊できなかった。


(間違いなく、今までの僕としても最高の一撃だったんだが……やはり、今回で殺さなければもっと脅威になる!)

「いい一撃でした。お礼を上げましょう!」


 受け手と反対側の手も鋏に変え、返礼として首を狙う。

 威力が大きい分隙も大きい一撃を繰り出した炎は本来なら、ここで首を刎ねられるだろう。

 しかし、今ここにいるのは彼女一人だけではない。

 背後にいた龍臥が零式の手甲で炎の首を守るように突き出し、天叢雲の鋏の軌道を逸らした。

 そのまま流れるように龍臥の拳は天叢雲の肩に向けられ、直撃し後退させることに成功する。


「はは、はははは! いいですねぇ、やはり命をかけた戦いというのは盛り上がります! もっと殺し合いましょう!」


 ダメージは特にない様子だが、目に見えて興奮する天叢雲を見て二人は辟易とした。


「知ってはいたけど、攻防隙がないな、あんちくしょう」

「まったくだ。だけど、二人で戦っているおかげで命は取られなかった。助かったよ」


 どういたしまして、と返す龍臥。

 間違ってもどちらか一人だけで戦えば、確実に負けるということを二人はわかっている。

 奇襲二連続で決着がつけば問題はなかったが、失敗することは想定内のことだった。

 もっとも二回目の方は龍臥の殺気の出し過ぎが原因ではあるが、忍者でもない彼に気配を抑えろというのは無茶な話であろう。


「ところで、どうして私のいる場所がわかったのですか? 最初の弾もどうやって私に気づかれずに当てたのかも気になります」

「場所についての予測は簡単さ。他の妖魔はともかく、君は人間に寄っている。鳳くんの母親と戦った場所、そして彼が君と戦ったこの公園は印象に残るだろう? 加えて鳳くんに聞いていた君の反応からここにいる可能性は非常に高いと感じた」

「ほぅ……私は自分が思っている以上にわかりやすいんですね」

(その話に食いつくのかこいつ……)

「二つ目はもっと簡単さ。陽動だけが目的なんだから君が知覚できない距離から狙撃した。まだ正式採用はされてない試作品のスナイパーライフルで撃っただけさ。我が愛する妹と無理を押してでも参加してくれた頼もしい先輩方のご助力あってのことだけどね」


 推測が全部あっていてよかったけど、と内心で舌を出す。

 警察からもらった公園近辺をパトロールしていた警官が二人行方不明になったという情報も大きく、絶対安静の身でありながらも小山の仇と山田と山下も陽動の一撃のために参加してくれた。

 そして射程距離2キロを超える試作品ライフルを用意できたのも大きかった。

 今回の作戦では安全距離は長ければ長いほどよく、最初に炎が想定していた射程距離1キロのライフルでは不安があったが解決された。

 あまりにもイレギュラーな天叢雲が相手なのだ、できることは全てやるということが最終的に炎は判断した。


(鳳くんが寝ている間に電話をして進めてたが、千代も協力してくれているのが大きい。あの子はもう一つ役割があるし……)

「今日、ここで決着をつけてやる」


 炎が思ったことを、そのまま龍臥が口にする。


「ああ、その通りだ」


 嬉しそうに微笑み、炎は相槌をうった。


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