許可と忍び寄る者
「……調べるっつったって、てめぇ入院中だろうが!」
鬼神にそう突っ込まれてしまい、五奇はうまい返しが見つからない。
「そ、れはそうなんだけど……」
「あ、あのでございますね? 僕のことは急ぎではございませんので! はい」
空飛の目が揺らいでいるのがわかる。四人は黙り込み、それぞれ考えるがいい案が思い浮かばない。
結局、今日はこの件を齋藤に報告することにした。
「そいじゃー五奇ちゃん、まったねーん」
等依が声をかけ、病室を出て行く三人を見送りながら、五奇は歯がゆさに苛まれながらため息を吐いた。
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Eチームの待機室の隣に、教官室はある。そこに五奇を除いた等依、空飛、鬼神の三人で報告すると、齋藤が静かに口を開いた。
「なるほど、理解した。……最初に言っておこう。こんなケースは初めてだ」
「えっ? そうなのでございますか?」
空飛が訊き返せば、齋藤は頷き、
「確かに前世の妖魔の力が強すぎて制御しにくい半妖はいるし、力を使えば人格が変わる例も報告されてはいる。だがな? 前世の記憶を保持している上で、力が制御できないというのは今までに訊いたことがない」
はっきり答えると、空飛の方を見て話を続ける。
「貴様の前世、黒曜のことを調べてみる価値はあるだろうな。ドッペルゲンガーなどというのも含めて、貴様らが調査することを許可する!」
正式に許可を得たEチームは空飛の過去から調べることにした。
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青い空の下。
某所屋上にて。
「知らなかったなぁ。ねぇ? まだ僕を知らない僕? あははははは! 愉快だよ! 実に! あはははは!」
一人両手を広げ、声高に叫ぶ。
「もうすぐ! もうすぐ烏が目覚めるよぉ! さぁ……殺し合おうか?」
愉しげな声とは裏腹に死んだ瞳が揺れた。
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「ひっ!?」
悪寒がして、空飛は思わず声を上げた。三人は今、トクタイの駐車場にいる。
「空飛、てめぇには緊張感とかそういうのねぇのか?」
「えっ? 緊張はしておりますでございますが? はい」
空飛の見当違いの発言に、鬼神は面倒になったのか話題を変えた。
「それにしても、五奇が入院して五日だろ? 俺様達だけで調べて、どーすんだよ? なんか案ねぇのか等依」
突然話を振られた等依は、少し困った顔をしながら答える。
「んんー? そーっスねぇ……。五奇ちゃんにはオレちゃん達が調べたことを、まっとめーてもらう! とかどうっしょ?」
そう提案すれば、鬼神も納得したらしい。
「ま、それが妥当か……。おい、とりあえず空飛、てめぇが出たっつー孤児院に行くでいいんだよな?」
「あ、はい。そうでございますね! そこではよくしていただいたものですから……あぁ、懐かしいでございます。はい」
心から思っているのだろう。いつもよりあどけない表情をする空飛を見つめながら、等依と鬼神は車に乗り込む。空飛が育った孤児院は黒樹市内の西のはずれにあるのだ。
「そいじゃ、空飛ちゃんナビよっろー」
助手席に乗り込む空飛にそう声をかければ空飛が明るく答える。
「はい、お任せくださいませ!」
こうして、三人は空飛が育った孤児院へと車を走らせた。




