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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
決意の後の物語
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エピローグ

「殿下、御客人です。」

「客人?連絡も無いが...。」

「ナイアース侯爵様ですよ。殿下が早く集まるように言ったのでは...。」

「あぁ、今日だったか。すぐに行くと伝えてくれ。」

「かしこまりました。」


 新品の執務室で、書類を片付け鍵をかける。あらかたその姿を取り戻した城が私の足音を受け止める。


「久しいな、ケアニス・ナイアース侯爵。」

「まだ半年しかたっておりませんよ。アロシアス陛下。」


 片手を上げて呼び掛けに答えたのは我が義弟のケアニスだ。アレーシグと血縁的に繋がりの強く、三年前の「悪魔の反乱」に加担していた南の「武の侯爵」が取り潰され、ナイアース伯爵家がその後釜に着いた。私の身内でもあり、多くの功労者であるケアニスが侯爵となるのに反対は少なかった。


「貴殿の父上が御隠れになってから、もう三年が過ぎたのだったか?そろそろ侯爵には慣れたか?」

「勝手に殺さないで上げて下さい。隠居生活を満喫しております。」


 ケガが元で当主を退いたトライトン卿だが、かなり元気に国中を回っている。ケアニスの弟の様子でも見に行っているとの噂も多い。


「既に集まっておられましたか。いかんせん、歳でしてね。遅くなり申し訳ない。」

「メテウス卿。お久しぶりです。」

「あぁ、ケアニス卿。随分とご立派になられましたな。お噂はかねがね届いておりますよ。」

「ほう、どんな噂だ?」

「そうですね...。スティアーラ・ナイアース夫人への贈り物で一週間頭を悩ませていた話等でしょうかね?」

「メテウス卿!アロシアス陛下にそのような話題を提供しないで頂きたい!」


 悲痛な叫びをあげるケアニスだが、「悪魔の反乱」の余波で荒れていた南の領地を見事にまとめあげた若者として、一部では「流石ナイアースのやることは違う」と色々な意味で唸らせている。

 しかし、それは面白い事を聞いたな。今宵の宴では久方ぶりにいじり倒してやろう。どちらも健気な努力家で才を開かせた夫婦なのだ。少しぐらい酒の肴にしてもいいだろう。


「ところでアロシアス陛下。「技の侯爵」は来ておらっしゃらないのですか?」

「エルガオン侯爵は、なにやら()()()()とやらについて研究しているらしく、書状でおめでとうと送って来たぞ。」

「その前は()()()()()()()()でしたっけ?彼も着々と繋がりを強めていますね。」

「流石先生の御孫さんですな。良き知恵をもっている。」

「魔力のない事など批判も出来んだろうな。それとメテウス卿、その事はあまり喋るな。貴殿の娘の婚約者はナイアース家の息子なのだからな。」

「そうでしたな。失礼を。」


 三人で盛り上がっていると隻腕の獣人が片目の顔を覗かせた。


「あぁ、大将。こんな所にいたんですかい?もうあっちにあつまらねぇと。」

「もうそんな時間か。ありがとうパンテル。すぐに行くよ。」

「そうしてください。でないと義姉御が恐ろしいんで。」

「義姉?まだだろう?」

「アロシアス陛下、あまり聞き出すのは無粋ですよ...。」

「いえね、あのエピスが逃げてないんですよ?捕まるのも時間の問題でしょうよ。」

「パンテルもペラペラ喋らないであげなよ。」


 とはいえ、今日をかなり楽しみにしていたのだ。来賓代表がほっぽりだしてしまっては、カプラーネは烈火の如く起こるだろう。特に兄のようだったケアニス等、今日義兄になるのだから出席せねばなるまい。


「ではいこうか。教会へ。」






「汝、エレシア・セメリアスは魂の導くままに夫を愛し、支える事を誓いますか?」

「誓います。」


 凛と澄んだ声が復唱する。相変わらず、真面目な時に見せる表情はドキリとするくらい綺麗だ。直接言うと照れてしまって、しばらく口を聞いてくれなかったが。


「汝、アルバート・ナイアースは名をアルバート・セメリアスと改め、魂の導くままに妻を愛し、守り抜くと誓いますか?」

「はい、誓います。」


 こればかりは胸を張って誓える。例えば、魔人になるくらい強い決意だと誓える。


「それでは、神の御前にて誓いを形に。」


 エレシアの顔にかかる薄いベールをゆっくりととる。少し戸惑ったエレシアも、ベールをとると少し赤い顔で目を閉じてくれた。

 ()()()()()()()お互いに顔を放す。エレシアが「恥ずかしいね」と口を動かしてはにかむ。余計顔が赤くなった気がする。


「ここに新たな夫婦が誕生した!祝福を!」

「「「祝福を!」」」


 全てに決着をつけて三年。雪の降る穏やかな日に、光を浴びたペンダントが小さく瞬いた。

これにて滅炎の復讐者、そのタイトルは終わります。復讐を果たした彼に、残るものが多くて良かった...。まぁ、中盤以降は主人公誰?ってなったかも...。

ここまで読んでくれた貴方に、今度は主人公が迷子にならない作品を書きました。「結晶の魔術師」です、そっちも読んでくだされば嬉しいです。

この後は作者の覚え書きというか、設定集と言うか。そんなのです。良かったら覗いて見てください。

一年間、ありがとうございました!!

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