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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
最終章 新しい世界 掴み取った人生
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64話 作戦決行

「いよいよ、か。」

「なんだパンテル、今さらびびってんのか?」

「へっ、冗談。」


 俺の軽口も一笑に付すパンテルだが、右腕は明らかに力が入りすぎている。無事だった王宮魔術師団の皆さんが、総出で辺りの気温を下げている為問題ないがアラストールのいる王都はとんでもない熱さだ。本体の熱なんて計り知れない。

 この中で緊張の見えない奴なんて、よっぽどの無神経か本気のポーカーフェイスのエピス位だろう。


「おっ、合図か。」


 黄金の結晶が空で丸を描く。どうやら配置に付けたらしい。近づくと体力の消耗が激しいため、待機していた俺達も進軍を開始する。

 狙撃手の俺とエレシア、護衛にエピスとパンテル、セメリアス侯爵。

 配置に着いたのは妨害組の第一王女とナイアース伯爵だ。それ以外の人は交代しつつバリスタや大砲なんかで援護する様で前には出ていない。城を包囲するように移動はしているが。


「よし、行くぞ。そろそろあの固そうな羽も開くだろ。」

「急ごう。途中で開かれて妨害でも始まったら目も当てられない。」


 急ごうなんてらしくないと思えば、結局楽な方を優先するエピスに今回ばかりは誰も反対しない。動機がアレなだけで言ってることは正しいしな。

 白銀大鷲に乗って空に飛びだし射撃地点まで急ぐ。高度を上げた時、急に気温が下がったのを感じる。


「高さの問題じゃない?」

「おい!開いたぞ!早くねぇか?」

「いや、殿下の予想と大差はない。」


 冷えた気温は開かれた翼の中に、クレヴォールしか居ないからだ。開かれた翼は徐々に消えていく。

 ちっ!あれじゃ撃つことも出来ないぞ。かなり近づかないと俺の付け焼き刃の狙撃じゃあ人間は無理だし、対悪魔特殊弾が意味がない。対高温特殊弾なら効果はあるけど結局当たらないよなぁ。


「仕方ねぇ、悪魔を引っ張り出しに行」

「問題ない。」


 かき消えたエピスの後ろには強い光源。その前に板。

 影の中を走るエピスは瞬時にクレヴォールの隣にたっていた。鞭をしならせてクレヴォールを追い詰める。いや、パンテル以外見えないけど。


「エレシアか?この光。」

「それよりも空中でも良いことに驚いたよ。地面に影伸びて無いんだけど。」


 本人曰く、トンネルみたいな物だとか。それよりもあいつ大丈夫...だよな。火の近くなんてデカイ影も山ほどある。

 その時、大岩やデカイ矢じりが城の頂上にいる二人に降り注ぐ。


「おいおい!ありゃ無事か?」

「問題ねぇな。もう逃げてる。」


 パンテルの指し示す城の下に、人影が一人。相変わらず引き際の鮮やかな奴。

 呆れるような物量弾幕に炎の悪魔が顕現する。全てを弾き、溶かすその悪魔は見てくれさえ良ければ守護神でも通じそうだ。


「来るぞ!」


 城を見据えたパンテルが警告すると、火球がいくつも飛んできた。


「「旋風鳥乱」!」


 いくつもの風で出来た鳥が緑の輝きと共に火球に突っ込み、破裂する。本来なら対象を刻むだろう風は燃え尽きながらも火球を散らす仕事はしっかりと果たした。

 続く炎の剣も、大きな竜巻で巻き取り防ぐ。


「これ持つのか?」

「距離一八〇〇!残り九〇〇!」


 俺の体力も魔力も、減らしたら狙撃の際に奴の防衛を崩せるか分からない。【滅炎】を使うわけにはいかずヤキモキする。

 旋回しながらなのでゆっくりだが、確実に近づけば近づく程精度も数も上がる猛攻が苦しくなる。今飛んでいられるのも奴の注意が周りの砲撃に気をとられているからだ。


「まずい!飛び火したぞ!」

「くっ、やむをえまい。おりた後は私は陽動に回る。これ以上は空は行けない!」

「後五〇〇、走りきるぞ!」


 地上に降りた大鷲が、俺達の降りた後消える。再び作られた大鷲は飛び立ち、俺達は走り出す。

 まだ降りたことに気づかれていないのか、空のセメリアス侯爵ばかりが狙われている。


「念のため、倒木とか拾っとくか。」

「そんなん持って走るのか?」


 火球を覆い隠せそうな大きさの木材を持ってきたパンテルに聞いた。すぐに後悔した。あいつなんで俺より速いの?


「急ぐぞ、走れ。」

「アル君にも魔術かけようか?」

「いや、いい。魔力は少しでも温存しとかねぇと。」


 ちなみにパンテルに魔術はかかってない。獣人の体力どうなってんの?


「やぁ、なにそれ?」

「盾だ。盾。」

「倒壊した家屋の柱だろ?」


 エピスが合流し、狙撃地点に急ぐ。...ここまで来るとかなり熱いな。体力を持っていかれる。


「見えた!あの塔の上だ!」

「げぇ、あれ上るのか。」

「高い方が良いって言ったの君だったろ?」


 塔に向けて走るその道に、突如として火球がきた。投げつけられた木材が瞬時に燃え尽きる。以外に役にたったな。エレシアにアレを避ける俊敏差はないからな。


「アラストールと離れて動くのは勿体無いが、君への復讐がさきだ。少年。」

「火狂い!?」

「離れられんのかよ!?」


 見上げる城の上にはまだ炎の悪魔が居座っている。アロシアス様の言葉通りなら、理論上あれでも目覚めたばかりで馴染んでない不完全な物らしいが。

 しかし離れられるとは予想外だ。エピスとパンテルで凌げるか?

 下手をするとアラストールまで此処に来る。


「では、やりあうとするかね?」

「「大蛟」!」


 目が紅くなりだした火狂いを、突如水の大蛇が飲み込む。蒸発する前に、遠くへと火狂いを吐き出した「大蛟」がパンテルの隣に滑り込み火狂いに鎌首をもたげた。


「アル君、エレシア、狙撃地点へ!」

「ケアニス様!?何故此処に?」

「いいから早く!此所は僕達に任せるんだ!」

「助かります!」


 エレシアを引っ張り、塔を昇る。後ろでパンテルの籠手、エピスの鞭が水に包まれる。


「クレヴォール、覚悟!」


 「大蛟」とパンテルの起こす土煙が轟音と共に舞い上がり、塔の入り口を覆い隠した。

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