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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第六章 反乱終結編
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55話 堕ちる太陽を支えし大蛇

「間に合いましたか?アス。」

「間に合いましたが出来れば魔力回復薬を。」

「あら?これは失礼しましたわ。どうぞ、アス。」


 姉上の魔術によって私の魔力も吸い出され、意識が危うい。元々姉上の魔力なので魔術を使うなど体外に放出するような事をしなければ姉上は無事だが。


『なんだ?この柱は。燃え尽きないじゃあないか。』

「貴方とアスの魔力が減りますわよ?維持されるのは奪った魔力ですもの。」


 厄介な物を壊そうとしたクレヴォールが舌打ちをする。振り返ったクレヴォールが火球を放つ。


『面倒な物を!』

「アス!捕まりなさい!」


 姉上の結晶に乗り、宙へと回避する。時折僕の「瞬間移動」や「無変速加速」で瓦礫を使い防御する。消極的だが、こうして魔力切れを狙い、叩く。そのために防戦をしているのに此方の方が危機的なのは、魔力回復薬で強引に継続戦闘をしているからだ。


『ちょこまかと!【殲滅する炎(ホロス・フロガー)】!』

「姉上、前方と右方、下方より二ヶ所!」

「わかりましたわ!」


 姉上が結晶を操り、隙間を掻い潜り魔法同士をぶつけ合わせて回避をする。

 潰し切れなかった魔法は隙間をぬって「瞬間移動」で後方にいき、やり過ごす。


「次、上からです。」

「加速します。タイミングを。」

「3、2、1、今です。」

『【処刑する炎(ディオミス・フロガー)】!』


 後方に落ちる火柱が、空気を焼き音をたてる。


「炎の悪魔が右手を振るいます。同時に下から炎の剣が飛んできます。」

「では腕の直前で上に移動させて下さい。」

「分かりました。」

『【剣となる炎(クシフォス・フロガー)】!』


 上に「瞬間移動」した結晶がそのまま加速して突き進み炎の剣を回避する。

 魔力の流れが読めればなんとかなるが、そろそろ魔眼も限界だな。一度引いてしまうと、再びクレヴォールを「具現結晶(クリスタライズ)・吸魔」に嵌める必要がある。それは厳しい。


「アス、あとどれくらいかしら?」

「持って二分ですかね。」

「そう、厳しいですね。」


 飛び回る僕らに嫌気が指したのか、クレヴォールが僕らから目線を外す。攻撃を緩め移動するならば此方は攻撃するが。

 しかし、次に取ったクレヴォールの行動は魔力を操る行為だった。向いた先...城への攻撃準備だった。


「姉上、城に攻撃されます!」

「そんな!?城にはまだ...」

『【太陽の招く終末ヘーリオス・ラグナロク】。』


 炎の悪魔が天に掲げた手の先に少しずつ炎が集まる。炎の悪魔から離れ、火球に集まる炎はただ見るものに無力感を抱かせる。もはや太陽と読んで差し支えない大きさの火球ははるか高みにありながら地上に熱を注ぐ。炎の悪魔が半分程に縮んだ事さえ、これの前では小さな事だ。

 ゆっくりとクレヴォールと炎の悪魔の手が城に落とされる。太陽が終末を届けに地上に落ちる...。唖然とする僕らの肩に手がおかれた。


「大丈夫ですから、攻撃を。」




「「八岐大蛇」!」

「「大蛟」!」


 巨大な八首の蛇に投げられる様に飛び出した水の大蛇が火球に迫る。更に投げ飛ばされた俺は力を使う。どんだけでかくても悪魔でもない炎なら変わらない。でも熱いぞ、ここ!


「【滅炎】!」


 城の上で炎を防いだ俺が落ちる。地下水路の水を使った二匹...二匹?の蛇が消える。あれ?誰が受け止めてくれんの?


「二人とも、無事かい?」

「ありがとうございます。セメリアス侯爵。」

「た、助かります。」


 ケアニスさんとエレシアの父さんが乗る大鷲の背に落ちる。結構柔らかいな。羽毛か?


「「白銀大鷲」といって、風を操る鳥を作り出す魔術だ。原理はアーツににているよ。あれほど自由のきかない変わりに私から離れても近くにあれば消えない。」

「父上の「八岐大蛇」に近いですね?あれも表面に鱗がある。」

「あれに対抗して作ったのもあるんだ。」


 エレシアの父さんが思い出を振り返り苦笑する。地上に帰って来た俺達をケアニスさんの父さんが迎える。


「ご苦労だったね。アル君。」

「ありがとうございます。それで火狂いは?」

「動かないよ。よほど驚いたのだろうね。」

「数人で先行して来たからね。予想より早かったんだろう。」


 俺がもう動けると片手をあげると皆で移動を始める。ケアニスさんは城の中に説明に行く。エレシア、カプラーネさんも一緒だ。


「早く行こうか。火の魔法使いを止めねばね。」


 頷き、駆け出した俺達がたどり着いた先では既に戦闘になっていた。あのときは二メートル位の大きさだったアラストールが今は十メートル近くある。デカイけど、周囲の柱が魔力を吸いとってるようで本当に少しずつ縮んでいるようだ。...二つ目の力があってよかった。魔力が保護出来てなかったら俺は数分たたずに魔力切れで植物状態みたいになるな。


『貴様が何故此処にいる!アルという少年は何処だ!燃やしてやる!』

「へっ!うるせぇよバカが!まだ左腕の分殴ってねぇからな!」


 相変わらず図体に似合わないすばしっこさで火狂いと打ち合うのはパンテルだ。隣で王子に説明し説明を受けるのはエピスだな。「影潜り」じゃないと飛んでる王子にたどり着けないんだから動くしか無かったんだよな。


「パンテル、援護しよう!」

「おぉ、頼むぜエピス!」


 あっ、面倒になって逃げた。


「王子達を城まで連れて行く。後を頼むよ。」

「承った、メテウス侯爵殿。」

「分かりました。任せて下さい。」


 満身創痍の王子達をエレシアの父さんに任せて俺達は進み出る。


『やはり貴様か!よくも俺の炎を!」

「火狂い、死んで貰うぜ!」


 俺の右手に相棒(チーター)が握られ、奴に照準を合わせた。

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