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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第六章 反乱終結編
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50話 変わらぬ二人

本日は(作者が勝手に決めた)渚 涼風の誕生日です。

という訳で二話投稿だ!前回がある人はそっちから読んでね!

「結局、ひとしきり話した二人の父さんが解散って言うまで出られなかったな。」

「これは前世の国民性が出てるよね。」

「それならケアニスさんはどうすんだよ。」

「んー、劣等感から、かなぁ?」

「辛辣だな。」


 兵士の指揮をとりにパンテルと合流しに行ったケアニス様とは別れて、北側でアル君と領内を歩く。目には常に篝火に照らされる焼け跡が見えて、憂鬱になる。


「すいません、この辺りで小火騒ぎとかありませんでしたか?今、多発してまして治療をと思いまして。」

「あれ?他でもやってんの?いやぁ、実はさっきうちの妹が篝火ひっくり返しちゃってさ。でも、怪我人は出てないぜ?」

「そうですか。それならよかったですね。お互いに気を付けましょう。」

「そうだな。あんな事もあったし、火には気を付けねぇと。」


 領民の人と話したアル君が帰ってくる。上手く集団心理をついて咎めないような雰囲気を作る辺り、アル君のコミュニケーション能力は高い。前世では結構モテたんだろうな。


「この辺には来てなさそうだな。怪我人無しならただの事故で確定だろうし。」

「...ねぇ、アル君。アル君の前世ってモテた?」

「はい?どうした、いきなり?」

「いや、とりあえず何か憂鬱になりそうにない話題をと思って。」

「それでいきなりかよ...。話題選びのセンスが。」

「だって今のコミュ力みたら気になって。」

「あー、モテなかったよ。顔がちと造形以外に問題あってね。今と同じだ。」


 そう言ってアル君がマフラーをずらして、右の顔を見せる。頬を覆う火傷で言ってる意味が分かった。


「あー、ごめん。でも、ケガしてるだけなんだから問題とか言ったらダメだよ。人の良さは顔じゃない!」

「でも、驚くしバケモノみたいで怖いだろ?」

「むぅ、バケモノとか言わないで。その言葉はそうやって使わないの。」

「...前にもおんなじ事言われたよ。」

「彼女?」

「だったら良かったんだけどな。」


 懐かしそうに、それから寂しそうに笑ったアル君はなんだか消えてしまいそうに儚いのに、今までよりもずっと現実的に、身近に感じた。

 って、結局しんみりしちゃってるし!憂鬱じゃないけどさ!なんか訳ありみたいで申し訳ないよ!?


「そういえば、前にもおんなじ様な事あったよね。マフラーの事。今みたいにはぐらかされちゃってさ。」

「あぁ、これな。こっちの母さんの形見。喋れないけど凄く尊敬できる人だったよ。」

「結局暗くなるの!?」


 アル君が割りきって嬉しそうに話せるのが唯一の救いだよ!今の私は申し訳なさのオンパレードだよ!?こうなりゃ勢いだ!なんとか話題を変えるんだ!


「アル君っていえばさ!」

「お、おう?」

「今まで何してたの?アル君が死んじゃったと思って私、大泣きしたあげく髪切ったんだけど。」

「それ、そういう理由できってたの?なんかごめん。」

「いや、責めてる訳じゃ無いんだけどね?何してたのかなぁって。最初からどうぞ。」

「最初?じゃあ、ばあちゃんの家にいて...」


 そこからアル君が簡単に説明してくれたことを並べるとこうだ。

 ソフィアおばあちゃんの家に火の魔法使いが来て、ソフィアおばあちゃんが応戦。アル君が目的を聞き付けて悪魔の心臓を鍛冶屋に持っていってから参戦。この事はソフィアおばあちゃんと話し合って決めてあったそうだ。だから、本に書いてあったんだろうな。

 それからは、炎を打ち消す度にアル君の火傷が増えていく。ソフィアおばあちゃんでも、燃える屋敷の中ではなかなか攻めきれない。とうとう、屋敷が倒壊してしまって火の魔法使いが帰る。

 ソフィアおばあちゃんの魔術で潰されていなかったアル君はケアニス様に保護されて、使えそうな情報を誰にも話さないでくれと伝えて気絶。火の魔法使いに部下を奪われ、自分も殺されかけたケアニス様なら話してもいいと考えたみたい。


「それで、悪魔の心臓で代償と火傷を無くしてもらって、力の確認とか資料の確認とか。王都からここまで馬車に乗せてもらったり走ったりな。」

「でも、火傷が全部消えた訳じゃないんだね。」

「消えんのは代償であって火傷じゃないから。今残ってるのは代償のじゃなくて、普通にケガの火傷。」

「ふぅん。じゃあ、力の確認って?」

「アーツが戦闘で使えなかったから、どうにか使えないかといろいろやってたら銃の形が保存されたんだ。それでその確認。」

「保存?」

「魂の保存って力が火狂いに焼かれたことで復活したんだ。記憶とか魔力の形だな。おかげですげえ速く展開出来るようになったんだ。」


 そう言いながら、アル君は瞬時にアーツを発動して見せてくれた。確かに魔術の速度じゃない。魔法でもこんなに速くは無いだろう。


「しかも、アーツで弾丸も作れるぞ。大気の重さだから貫通力重視の形状にしなきゃ飛ばないし当たったときの威力は落ちるけど。俺から離れても状態が保存されてるんだ。」

「でも、火の魔法使い相手だと燃えるよね?魔力だし。」

「だから、障害物撃つ事になるかな。重さ的に破壊は難しいから、ホントに出来なくは無いけどって手段。」


 少ししょげたアル君を慰めつつ、領民の間を回っていく。アル君の事をもっと知りたいと思えたのは、アル君がいなくなることもあるって思ったからなのかな。

 少しずつ分かる出来事を噛み締めながら、近づく決戦の予感に月明かりの下で抗っていた。

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