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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第五章 セメリアス領地襲撃編
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47話 仮初の決着

「くそっ、思ったよりしつこいな。」

「【殲滅する炎(ホロス・フロガー)】重ねて【剣となる炎(クシフォス・フロガー)】。」

「だぁっ、もう!」


 追尾式の魔法だから、ギリギリで回避するしかないがとにかく熱い。弛い追尾だからそのままなんかにぶつかって消えるけどな。

 自分がわざわざ拵えといて逃がした獲物ならよく食い付くとは思ったけど、なんの躊躇も無く来るとまでは思わなかった。念のためにと煽りすぎたかもしれない。


「特別性の弾丸が三発使って、残り十発か...。変えとくか。」


 カートリッジを交換し、特別性の弾丸九発は懐にしまう。後一回は近づかずに十分に狙って撃てる。通常弾は近づかないと溶かされる恐れが高いからな。その分、奇襲と退避が困難になるけど仕方ない。弾丸だって限りがある。


「そろそろ出てくるか?」


 廊下の曲がり角でに照準を合わせて構える。右足を引きずって出てきた火狂いの右腕に四発目を撃ち込む。さっき一度避けられたがこれは当たった。あいつが火を纏っていると反応がバカ高くなるからな。距離を開けるなら不意を突かないと当たらない。


「ぐっ!そこか!」

「【滅炎】っと。そんなぬるい火の粉じゃ届きもせずに終わるぜ?」

「また、俺の火を。燃やしてやる!」

「なら、マジで来いよ。」


 火球をかきけして挑発を交えて走る。何度も目の前で消火してやったから随分ご立腹だろうな。ついでに挑発をしながら一発見舞うが、奴は丁寧に回避していく。壊れた右膝を庇いながらだから、その度に大きく速度を落とす。節約してるのでないなら最初に思ったより魔力が少ない用だ。市街地からは、逃がすまいと急ぎ目に戻ってきたのかな。

 俺の体力はまだ大丈夫だ。右腕もそろそろ壊れてくれれば跳んだりした時の姿勢の制御も難しくなるんだろうけど。


「【炎の鎧(フロガー・パノプリア)】!」

「んな!?前から!」


 完全に油断してた。燃え盛るあいつの速度はすぐに俺との距離を無くしていく。


「【剣となる炎(クシフォス・フロガー)】!焼き尽くせ!」

「それ、持てるのかよ!」


 手に持った炎の剣が真っ直ぐにつき出される。その手には投げナイフが握られている二段構えだ。マジかよ、こっちはケガ治せないってのに。


「【滅炎】!」


 奴の二つの魔法をかきけして、左腕を前に出してナイフを防ぐ。そのまま右の手で刺さったナイフを火狂いの手の上から逆手で掴む。勢いを殺さずにナイフを抜き取った右手を火狂いの腹にたたきつけつつ、火狂いの右腕で巻くようにした左腕を相手の胸に押し込む。

 左腕で持ち上げ、右腕で押し込みながら後ろに回り、足で蹴飛ばして後ろに投げる。前世の時よりも上手く入った気がする。火狂いが受け身をとらなきゃ完璧だった。しかもナイフは溶けて刺さってないし。俺は左腕刺されたのに。


「思い出したぞ!お前は俺を殺した少年か!」

「今更かよ、調子狂うな!」


 すぐに立ち上がったお互いが火球と弾丸を放ちながら後ろに跳ぶ。俺は滅炎で、奴は小さな【壁となる炎(トイコス・フロガー)】で身を守りながら着地する。


「先ほどの少女も前世の記憶があるのか?なら、お前が必死に助けようとしたあの少女だな?結局救えて無いではないか!」

「意趣返しとか大人げねぇな。キャラぶれてんぜ、ボケたか?」

「口の減らないガキだ!」

「火遊びの抜けねぇ大人だな!」


 大量に乱れ飛ぶ火球が廊下中を火の海に変えていく。ここで決める気らしいな。いくつか回避して、避けられない物は消していく。不味いな、体力が持たねぇかも。


「どうした?息が上がっているぞ?」

「どうした?一つも当たってないぞ?」

「なら、当ててやろう。【顕現・アラストール】。』

「んな!?なにするつもりだっつーの!」

『すぐに分かるさ。【殲滅する炎(ホロス・フロガー)】重ねて、【魂による終焉(プシュケーテロス)

「【滅炎】!!」


 全身全霊を込めて奴の後ろに現れた炎と回りの炎をかきけす。頭がくらくらして、たっていられない。吐き気と頭痛がおこりその場にしゃがみこむ。魔力まで使ったのか?少なくなった魔力が俺から思考を失わせる。


「ぐはっ!も、()()()()()()()。やってくれたな、少年。」

「悪魔に、魂でも、売り渡したか?今更、だな!」

「ふふっ、当たらずとも遠からずだ。これ以上魔力を使うわけにはいかなくなった。すまないが一足先に王都に行かせて貰うよ。」

「そう、かよ。必ず、殺して、やるから、覚えとけ。」

「アル、だったね。お前だけは私が焼き尽くす。」

「火狂い、お前は、俺が滅ぼす!」


 この包囲の中でどうするつもりなのか、右足を引きずって歩く火狂いに銃口を向け...とっくに消えていたベレッタM84が俺に攻撃手段の無いことを告げていた。


「ははっ、しまらねぇな。」


 燃える屋敷の中で転がった弾丸の横で俺の意識は落ちていった。

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