46話 ピルケアルの第二の力
実は10月29日に前話が投稿されてます。まだの人はそちらからどうぞ!
「...そうか、思い出して、きたぞ。君は、あの、老婆の所に、いた、少年か。私の炎を、消してきた奴か。」
「ついでにいえば王都、更に言えば村外れの家、おまけに前世だ。今さら思い出して貰って悪いけどもう会うこともねぇけどな。」
「私の炎の、一部と、なるのに?」
「お断りだ。」
俺が銃を撃つのと、奴が火球を放つのはほぼ同時。後ろにエレシアもいることだし、火球はかきけしておく。
弾丸の方は眉間を狙ったんだけど避けられたらしい。後少しずれてれば目が潰せたのに。火球を避けながらだったから狙いがずれてたかな?
「危ないね、あの獣人の、ように、左目が、瞑れる、ところだった。」
「アル君、しゃがんで!」
即座にしゃがみながら二発撃つ。今度は右膝狙いで打ち込む。そのうち、蹴り飛ばしたら千切れたりしないかな。盛大に煽ってやるのに。
しゃがんだ俺の頭上を風の刃と水の蛇が飛んでいく。刃は右膝に、水の蛇が左目にそれぞれ襲いかかる。ウィークポイントを狙う姿勢、今はありがたいけど少し怖い。エレシアって、こんな堂々とエグいことする奴だったっけ?...そういえば、涼風の時にカッターで自分の頬を切り裂いた奴だった。いや、あれは自分にだし周囲のメンタルに目を瞑ればエグい攻撃とは言わないな。
「【壁となる炎】。」
「よし、ナイス!今の間に逃げるぞ!」
「えっ!?」
困惑気味のエレシアを引っ張るように走る。当たり前だが焼かれれば死ぬ。けど弾丸なら場所による。そんなの正面からドンパチするわけない。隠れて奇襲する。屋内戦の基本はヒットアンドウェイだ。
「身を隠しながら、遮蔽物越しに撃ち込むぞ。最悪、威力は落ちるけどアーツで弾丸を作る。残すのは無理でも魔力を回収して撃てる分こっちの方が長期戦向きだ。」
「でも、私はそうでもないよ?」
「エレシアは離脱の時のために魔力温存。そうすれば俺が気兼ねなく攻撃できるから。」
「そっか。」
納得してくれたようで、なにより。単純に戦闘に参加させる気が無いだけだけどね。病み上がりみたいだし。
少しずつ玄関に近づき、脱出するしか無いだろう。エレシアには軍に人を避難させてくれるようにいってもらおう。それなら自然な感じで戦線離脱出来るだろう。
「ところでアル君、傷は?代償、大丈夫なの?」
「あぁ、代償ね。あれはもう広がんないようになった。ついでにある程度治ってるよ。」
今の俺は右側の顔と肩、二の腕位しか火傷は残っていない。代償も消えているどころか二つ目の力まで戻っている。凄そうな割には地味な使い方だけど。ただ、足りない分を代償で取り出していたピルケアルの力は代償無しでは明らかに過ぎた力だ。そのせいか、体力を持っていかれるからあまりこれには頼れないけど。
「へっ?なんで?」
「王子が使える用に弄くってくれたらしくて、使ったんだよ。」
「もしかして、悪魔の心臓!?私に壊せって言ったのに?」
「あれ書いてるときは、全身火傷になるほど使うと思って無かったから。」
俺は予言者って訳でもないし。むしろ復讐の為だけに魂の保存なんて力を開花させるくらい行き当たりばったりだ。この場合、記憶と魔力の状態保存だけど。結局魂ってなに?から始まってるからな、この力。
そう、ピルケアルの力は【滅炎】だけじゃ無かった。俺とエレシアの記憶を持ってきていたのがピルケアルと言うことだ。エレシアの場合は涼風が契約まがいな事したからだけど。俺も驚いた。予定外労働過ぎて記憶と力が火狂いに焼かれるまで封印される位驚いた。
「ねぇ、アル君。ソフィアおばあちゃんは助かったの?」
「...いや、ダメだった。ごめん。」
「あっ、責めてる訳じゃ無いの。えーと、あの、ほら玄関見えてきたよ!」
「あっ、本当だ。しまったな。」
目的としては助かるけど、こっちの狙いが火狂いにバレただろうな。足止め大変になりそう。まぁ、心残り刺激してやろう。
「とりあえず、この炎を消したらすぐに避難誘導に!避難完了まではここで止めとくから。」
「えっ?アル君残るの?」
「俺がさっきまで危ないところあったか?」
さっきまではこっちの奇襲祭りだったけどね。まともにやりあったら数分で炭にされる。
「...分かった。すぐに戻るから。」
「あぁ、頼んだぜ。【滅炎】。」
炎が消えて走り出すエレシアに少しだけ追従してから、止まる。あの距離なら屋敷から攻撃を放たれても十分対処出来るな。さて、俺は戻ってお仕事かな。
「おや?君一人かな?」
「親子水入らずで遊ぼうぜ。先に死んだら負けな。」
「うん?親子?見つからなかった、子供に、心当たりが、いくつか、あるな...。どれだい?」
「よし、死ね屑野郎。」
リロードの終えたチーターから一発撃ち込む。今回は特別性だ。息子からの手作りプレゼントなんだ、静葵時代の伯父さん並みに泣いて喜べ。
案の定、棒立ちの俺との間に膨大な炎をだす。ここまで熱の伝わる炎だが無駄だ。その弾丸には魔炭の木の炭を細かくして埋め込み、魔方陣を書いてある。蝋がとけ、火がつき「瞬間冷却」が発動する。一瞬温度の上昇が止まった弾丸はその間に炎を抜けて火狂いの右腕を貫いた。
「ぐっ!何が?」
「無駄だっつーんだよ、もう少し遊ぼうぜ?クソ親父?」




