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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第五章 セメリアス領地襲撃編
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43話 強襲~発火~

「なぁ、大将。領内の警備はいいのか?」

「セメリアス領地の入り口は全て押さえているから大丈夫だよ。火の魔法使いは目立つからね。一人で突破出来ないだろうし、王都から協力者が来るなら最初からいると思うけど見ていないだろう?」

「あいつの周りじゃ鼻が効かねぇからわからん。」

「そ、そうなんだ。」


 確認の意味も込めて問いかけたんだけど、随分と適当な返事が帰って来た。聞いてきたのはパンテル君の方なんだけど...。


「おい、ありゃなんだ?」

「ん?どうしたんだ?」

「うおっ!?なんだ!」

「あん?後ろが騒がしっ!?」


 パンテル君が変なところで言葉を切るから何事かと振り替える。そして、そこに見えたものに絶句した。


「あれは...まさか...火の魔法使いなのか...。」


 そこには大地から吹き出しセメリアス邸に突き刺さる巨大な炎があった。






「くそっ、やっと着いたらこれかよ!?道ねぇし交通整備ぐらいしろっての、走らせんなよな。」

「おい、フードの兄さん。ありゃセメリアス家の実験かい?近づかねえ方が」

「わりぃけど、あそこに用があんだよ。あと、馬車乗してくれてありがとね!」


 マフラーが翻って少年は駆け出した。






「あれ?少し、強すぎたかな?慣れない、魔力量だから、気を付けて、動かなきゃあ、いけないな。」

「て、敵しゅっ!?」

「魔力を、くれて、ありがとう。今度は、気を付けて、【剣となる炎(クシフォス・フロガー)】。」


 目の前の壁が高温の炎に刺し貫かれて道となる。燃やし尽くされ何もなくなった炎の剣の上を悠々と歩き、火の魔法使いが移動する。


「まぁ、させるわけないけどね。」


 まだ昼間だってのに叩き起こされて、嫌になる。だから、とっとと終わらせて寝よう。はあ、面倒くさ。


「「影縫い」。」

「うん?足が、動かない?」

「死んで。」


 僕のダガーが横合いから火の魔法使いの首筋に迫る。結構熱いけど「耐熱」の魔術で防げない程でもない。が、流石に無理か。空中で身を捻って少しでも身体を火の魔法使いから遠ざける。そのまま通りすぎて、壁に「影潜り」で着地する。先ほどまで僕のいた火の魔法使いの背中には大きな炎が広がっていた。【炎の鎧(フロガー・パノプリア)】とか言ってたし、何かの魔法だろう。


「今、何か、いた気が、したんだけど。それで、アラストール。これは、どうすれば、動けるかな?...魔力の流れ?うーん、あぁ、影だね。」


 あっ、ばれた。魔法使いは魔術の発生元を正確に探るんだから面倒くさい。炎によって天井に写された影の投げナイフを溶かして、再び歩き出した火の魔法使いだけど、そっちは彼女達がいるんだよね。魔力の多い方を狙ってんのかな?


「そっちいかないでくんないかな?」

「うん?君は、どこから、出てきたんだい?」

「ちょっとそこらの地獄から迎えにでてきたよ。」


 天井の梁に引っ掛けた鞭を引っ張って、火の魔法使いの腕を吊り上げる。


「おや?いつの間に。」

「ちっ、燃えたか。」


 すぐに焼ききれた鞭を回収し、影に潜る。これ以上やっていられない。二人とも連れて撤退が早い。いや、メテウスとか言うおじさんの方が近いかな。


「あれ?消えたね。どういった、種族なんだ?」


 黒豹だ!




「ねぇ、お嬢様方?何やってんの?」


 僕が「最後までここで戦う義務があ」とか言いかけてたメテウス侯爵を引きずって影を移動してた間に、見事なバリケードを構築して回復薬を抱えて入り口を睨む二人がいた。僕は窓の外から来たから関係ない。魔術師は皆大樹を育ててるから影には困らなくていい。まぁ、影潜りを使える用になったのは王子から叩き込ま...教えて貰ってからだけど。


「あの、貴方こそ何をしていらっしゃるの?」


 あっ、不味い。お嬢様が扇に魔力を貯めてる。でも、今メテウス侯爵を放すと地面に落ちるよ?


「シア、落ち着いて。この人、かなりずれてるけど敵じゃないから。多分避難が早いと思ってやっただけよ。」

「正解だけど釈然としないな。僕はずれてないだろ。」

「...カーネの知り合い?」

「えぇ、エピスよ。王都からお世話になったの。」

「それよりもここに火の魔法使いが来てるから逃げるよ。」


 僕が手を伸ばすと、バリケードの真ん中から炎が貫く。


「えっ?シア?」

「っくそ!逃げるぞ!」

「待って、シアが!」

「死んだ訳じゃない!」


 分断された部屋に熱気が立ち込める。これ以上はもう無理だな。とにかく彼女だけでもと抱え、影に潜る。二人はきついが抱えきれない訳じゃない。


「下ろして!シアが!」

「痛っ!叩くな、落ちるだろ!」


 そのまま二人を抱えて馬に乗せる。結構ギリギリだけど、メテウス侯爵が大柄じゃないから乗れないこともない。外のナイアース家に丸投げしよう。いると邪魔だ。


「僕が戻るから、いいだろ。今は一人でも多く生き残るべきだ。火狂いに魔力を渡せないからな。」

「でも、シアが...。」

「少し落ち着いた?」


 問いかけると睨まれた。これは急いだ方が良さそうだ。はあ、面倒くさいのになんで放置出来ないかな、僕は。馬を走らせながら燃え盛るセメリアス邸を睨み僕は馬を加速させる。遠くにナイアース軍が見えた。

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