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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第四章 王国反乱編
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31話 領地への帰還

 それからはとにかく大変だった。私がいなくなった理由と何をしでかしたか使用人の人たちに話して、格好とか直してからは使用人の人たちが髪が短いことに青ざめたから宥めて回って、馬車の手筈を待つ間にお父様宛に、今までの顛末と王子との交渉結果とアレーシグ公爵家の反乱と孤児や隠れすむ獣人の誘拐の証拠を集めたい事や私兵を集めて欲しいとの要望を書いた手紙を送った。早馬一頭で身軽な分、半分程の時間でつくはずだ。あぁ、怒られるだろうなぁ。

 なんて事をしていたらすぐに3日はたってしまった。これからは私とパンテルはセメリアス領に戻り、カーネは王城の図書館に調べものに行く手筈だ。


「それでは、カプラーネ。頑張ってくださいね。」

「はい、お嬢様。ありがとうございます。」


 対外的にはカプラーネは弟を買い戻す為のお金が工面できて公爵家に行く為に残る事になっている。調べものは公爵家に失礼のないように最近のことを確認しなおす為、という事で納得されていた。

 ただ、奴隷を買い戻すのはあまりおおっぴらにするものでもないから必然的に会話も少ない。あぁ、心配だな。話が広まりにくいのを良いことに、アレーシグ公爵に捕らえられたりしなければいいけど。そろそろ反乱を起こすなら多少の事は揉み消せるから、カプラーネの安全も保証しにくい。まぁ、珍しい青髪だとしても、一人の男の子を出し惜しむこともないかな?


「お嬢様、そんなに悩まなくても御領主様もお分かり頂けますよ。」

「っそうですわね。ありがとうございます、カプラーネ。」


 いけないいけない。もう、作戦は始まってるんだから今さら悩んでちゃダメだよね。頭を振って雑念を払ってから御者に出発の合図をおくる。


「さぁ、セメリアス領へ帰りましょう。パンテルは初めてでしょうしはぐれないようにしてくださいませ。」

「ガキじゃねぇんだけどな、お嬢様よ。」


 私達を乗せた馬車についていくパンテルは、馬を走らせて着いてくる。護衛としてすぐに動けるようにと言うことなのだろう。

 ただ、パンテル以外のセメリアス家の護衛は馬に乗れない者も多い。魔術師が多いため魔方陣や魔道具で馬にスペースが無くなったり、勉強や研究が主で体力が無かったりするからだ。必然的に速度も落ち、襲撃する兵力に追い付かれる危険性も上がっていく。まぁ、出発準備に手間取って3日はたっているし、多分待ち伏せがあるとは思うんだけどね。予想箇所では警戒を強めた方がいいと思う。


「なぁ、お嬢様よ。少し話でもしないか?」


 王都をでた頃急にパンテルが話しかけてきた。今まで少し距離を取っていたのに、急になんだろうと首をかしげてパンテルを振り替える。


「まだ王都を出たばっかりだぜ?そのままだと、領地までもたねぇだろ。」


 そう言ったパンテルは私の胸を指差した。気づいたら扇とペンダントを握りしめていたようだ。明らかに緊張しすぎている。確かに何か気の紛れる話でもした方が良さそうだ。


「セメリアス領地はよ、排他的な空気はあったりすんのか?」

「いえ、セメリアス領は新しいものを拒む雰囲気はございません。むしろ積極的に知ろうとしますわね。

ただ、建国当初からある家なので今すんでいる人達はセメリアス領に長くいる人達ですわ。なので、その中に馴染むのは少し大変かもしれませんわ。でも、どうして急にそのようなことを?」

「なに、無事に終わりゃあ、一族もろとも引っ越そうかとな。あの腐れ公爵んとこの村は無くなっちまったし、もう一度あそこに作ろうとは思わんからな。第一、あそこはこの国の森ではあるが人間の生活圏から離れすぎててな。ここ二月位でちと不便だったのを知っちまったからなぁ。」


 そこまで言ったパンテルはニヤリと笑って私を指差して続けた。


「んで、どーせなら侯爵家の領主様直属兵にでもなって色々旨い思いしようかとな!まぁ、考えといてくれっつーこった!」

「貴方は正直ですわね。普通、そう言うことは隠しますわよ?」

「隠しても分かりにくいだけでいいことねぇだろ?」


 ここまでさっぱりしてるのは獣人だからなのかパンテルだからなのか。確かに居心地はいいけどこのままじゃいけないかな。


「でもねパンテル。そういうのは嫌う人もセメリアス領にはいますわよ?忠義に欠けるとか、礼儀が成ってないとか。」

「あぁ、知恵のセメリアスっていわれてんだったか?んじゃあ、俺達獣人は合わねえかもな。つーとどうすっかな、新しい村。」


 まぁ、魔術や研究なんかを重視しやすいセメリアス領地では、力が全てな獣人には合わないかもしれない。というか、合わない。

 でも、あんまり親しくない領地にパンテルが行ってしまうとぶつかったとき嫌だなぁ。獣人の戦力も侮れないし、パンテルと争うのも嫌だし。あ、そうだ。


「お父様や私からナイアース領地へ推薦いたしましょうか?あまり堅苦しくありませんし、近々領地も拡大するはずなので魔術師以外の戦力を募集するはずですわ。獣人ならうってつけかと。」

「ほう、そりゃいいな!お嬢様の推薦ならいい思い出来そうだしな!

よし、俺はこのケンカが終わりゃあナイアース領地に行くぜ!」


パンテルの宣言が高らかに響き、セメリアス家の護衛や側仕えの人が驚いていた。

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