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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第三章 エレシアの物語
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28話 嫌な予測と危険な交渉

「うわ、なんか黒いね。」

「あのあと炭とか回収してなかったからなぁ。部屋中が煤だらけなんだろ。」


 周りが金属の地下室は暗さと煤けた匂いで閉塞感が増している様だった。所々欠けているが隅の方にある魔方陣型の墨が先ほど聞いた魔方陣だろう。私が調べていると後ろから二人の話し声が聞こえてくる。


「パンテル、この焼け跡は...。」

「あぁ、火の魔法使いじゃねぇかと思うぜ。ここに住んでたんだろ?」

「えぇ、そう思うわよ。もしかしたら奴の代償って何か燃やすことに関係してるんじゃない?」

「燃やすのが大好きなただの変態だろ?火に熱あげて狂ってんだよ。」

「でも、こんなに焼け跡がつくまでするかしら?それに、今は彼はアレーシグ公爵家に...。」


 カーネの考えてることが分かった私は振り返る。


「カーネ、それならアレーシグ公爵家の中に何かあるかもしれないよ。」

「なにかって?」

「こんな部屋。煙なんかも隠しとかないといけないなら多分地下に。」

「おいおい、まさか拐ってった奴隷を焼いてるとでもいうのかよ!?」

「だってこの焼け跡は人の形だよ。すぐにでも行動しなきゃ。」


 三人で深く頷いて私達は地下室から駆け上がり、パンテルの馬にまたがった。


「いや、無理だろ!」

「じゃあ走るよ!魔術掛けるから並んで!」


 とっくに手遅れかもしれないけど今は急がないと。早く走るための魔術と隠密行動の魔術をすぐに使用する。だんだん魔力が無くなってきたけどここでケチっていられない。


「行き先は王城!つく頃には夜だから忍び込むよ!」

「わかったわ!」

「王城!?あー、どんどん話がデカくなりやがる!!」


 私達は風をおいていく程早く走り抜いていった。






「おい、今何か通ったか?」

「ん?そういや少し変な風が吹いたような気がするな。」


 王城の衛兵達に気付かれないようにしていたけど、塀を乗り越えるのに風を使ってしまった。バレたかな?

「おい、すぐにいきゃあ問題ねぇ。行くぞ。」って言いたげな手で叩かれた。バレにくい「消音」と「不可視」だけどお互いが見えないし音も出せないから大変だ。カーネと私が手を繋ぎ、パンテルには匂いで追って貰うしかない。てゆうかよく肩の位置分かったなあ。勘かな?

 前回の謁見の時にアロシアス王子の部屋の位置は覚えてる。今回は融通がきく相手でお金を持ってる人の協力が必要だったからここにきた。ナイアース伯爵なら面白がって手を貸してくれそうだが少し遠い。上の条件をクリアしてて、信用出来る人も他に居ないし。


「じゃあパンテル、この手紙と髪をあの部屋に投げてくれる?」


 私の「消音」を解いて囁くと手紙とそれを丸める様に結んだ私とカーネの髪が消えた。「不可視」付きだとこうなるんだ。初めて知った。

 次の瞬間、石のくくりつけられた手紙が部屋の窓にあたり、窓枠に乗った。頼んどいてなんだけど凄いコントロールだ。獣人の身体能力には驚かされっぱなしだな。

 少しして、窓が開くとアロシアス王子が顔を出した。


「さて、エレシア嬢。人払いは済ませてある。入るといいよ。」


 そこ窓開いてても二階なんだけど。

 と思ったら、次の瞬間には窓枠に居た。あれ?なんで?。


「とりあえず魔術を解いてもらえるかい?」

「えぇ、これでよろしいですか?」

「っと、2日前と随分と変わってるね。服装は平民の様だし薄汚れて、何より随分と髪が短くなった。」

「カプラーネもですわよ。」

「パンテル君、君は何をしてたんだい?」

「お覚悟ごと護衛してんだよ。」

「やれやれ、ケアニスに何て言われるか。」


 それよりも王子の脇の魔方陣が気になる。見たこと無いものだけど王家の秘伝的な物かな?


「うん?これかい?城の書庫から取ってきたんだ。半径50メートル以内の物体を高速で動かす魔方陣と物体の状態を固定する魔方陣が合わさってるみたいでね。美しい魔方陣だから使ってみたくて。」

「それで私達に使って窓に高速移動させたのですね?慣性や姿勢が固定状態だからといって、停止を失敗したらなにかに激突してましたわよ?無事には止まれないのではないでしょうか。」

「僕はそんなミスはしないさ。」


 まぁ、いいや。この人は隙あらば私の素を引き出して楽しもうとするような人だ。とっとと要件を終わらせよう。


「今宵はセメリアス家の者として、王子であるアロシアス様に交渉に伺いました。」

「ふむ、王子に、か。こんな夜更けに窓からかい?」

「急いでいましたので。」

「王族としてはダメだけどまぁ、話を聞いてからにしようか。」


 よし、交渉出来るんなら多分大丈夫。こっちには切り札もあるし。

 アレーシグ公爵の館に堂々と入る大義名分持ちの二人。

 火の魔法使いをアレーシグ公爵が匿ってる可能性が非常に高いことと、その状況証拠。

 何より悪魔の心臓の現在地と現物。

 この三つだ。そして引き出して欲しいものは、アレーシグ公爵からカーネとパンテルの大切な人達の救助援護。

 出来れば火の魔法使いの確保も手伝って欲しい。その為のアラストールの代償について。力はソフィアおばあちゃんに聞いてるから問題ないし、代償の情報も無いならむしろ交渉材料になるかもしれない。

 さて、交渉開始だ。

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