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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第三章 エレシアの物語
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23話 箱と疑問

「ではパンテルさんはクロヒョウの獣人なのですね。」

「あぁ、二度とハイエナって言わないでくれよ。あと、パンテルでいい。」


 パンテルさ...パンテルはクロヒョウだった。ごめんね?だってなんか映画で見たことあったんだもん。確かライオンが出てくるやつ。あれ?イノシシだっけ?まぁ、なんか動物がいっぱい出てくるやつだ。


「それで御一人で傭兵を?」

「あぁ、そうだ。国の魔人でも来ない限りは大概問題ないぜ。これでも村で負けたことは無かったし、今まで一度しか負けた事は無いんだ。」

「一回は負けたのですね...。」

「魔人二人が相手だったんだ。無理だってのありゃ。絶対国の奴らだ。」


 パンテルというか、獣人って魔術師や魔法使いも魔人って言うんだなぁ、と思いながらカーネとパンテルが話すのを聞きながしつつ、今後の事を考える。王子に謁見するのはもうすんだし、多分セメリアス領に帰れって言われるけど帰る気は毛頭無い。カーネには悪いけど付き合ってもらおう。

 とりあえずソフィアおばあちゃんの御屋敷を見に行こう。これを知ることは多分とても大切な事だ。目を背けないで知らなければいけない。


「とりあえず、まずは御屋敷に行」

「お嬢様、どこに行くにしても荷物を取りに別邸に御戻りください。焦りすぎですよ。」


 いけないいけない。ちょっと焦ってたか。


「なら、その前に武器を取りに向かいによっていいか?そろそろ打ち終わってると思うんだ。」

「武器をですか?獣人の方なのに?」

「あぁ、武器っつうか鎧に近いな。籠手で殴るんだよ。」

「「そうなんですか...。」」


 思ったよりも乱暴だった。






「親父!出来てるか?」

「へっ!この程度とっくに仕上がってらあ。ここんとこはやることも無くなっちまったしな。」


 パンテルに籠手を渡しつつ、鍛冶屋の店主さんがちらりと工房の端を見る。そこには、


「...銃の弾?」

「なんだ嬢ちゃん。こいつが何かしってんのか?坊主は銃弾って呼んでたが。」

「っ!?すいません!その話を詳しくお願いします!」

「おっ!?おぉ、分かったよ。えと、毎週そいつを買いに来る坊主がいてな。やれ、歪んでるだの角度がでかいだのと細けぇ事にこだわるせいでこっちまでやる気になっ」

「その子!最近は来てますか!?」

「うおっ!?いや、来てねぇよ。知らねぇか?ソフィアさんとこの、あぁいや、孤児だって言ってたっけ?年中マフラー巻いてるガキだよ。」

「そう、ですか...。」

「もしかして知り合いか?てこたぁあんた、知恵のセメリアスんとこの嬢ちゃんか?」

「えっ?何で分かって...。」

「坊主から預かってる物があんだよ。何かは知らねぇ方が良いらしいから箱からは出してねぇけどよ。おっかねぇ顔しててなぁ。今思えば多分ちょうど家が燃えてた頃だったんだろな...。」

「預り物ですか?何で貴方に...?」


 首をすくめながら店主さんが渡してきたのは魔方陣と鎖の巻かれた鉄の箱。一目でヤバい代物だと分かる。こんなの渡してどうするんだろ。あんまり持ってたくないなぁ。怖い顔をして言われて無くても、これを開ける人とかいるのだろうか。


「何でも嬢ちゃんに壊して欲しいんだとよ。中身はプレゼントの最後のページに書いたとかなんとか。何度も開けそうなのをこらえたんだ。なんなのか教えてくれないか?」

「すいません、まだわかりませんわ。」

「そいつぁ、残念!まぁ、また寄りなよ嬢ちゃん!」


 開けたい人いたよ...。






 再び「消音」と「不可視」を発動して、別邸に帰りつく。鍛冶屋に入ってからカーネとパンテルがずっと話しているけど、何なのだろう?険しい顔だなぁ。まぁ、魔術をかけてからは見えないし、話も出来ないから分かんないけど。

 部屋に戻って魔術を解いたときにカーネからその内容は明かされた。


「お嬢様、あれほど取り乱す程に焦っていたのに何故王子の紹介とはいえ知人ではない護衛を雇おうと?お嬢様なら少数精鋭とでも言って行動なさるのでは?」

「俺の場合は少し違うぜ。あんたは何を知ってんだ?傭兵としちゃ金さえ貰えりゃとは思うが少し規模がデカすぎるぜ。金は手段なんだ。俺の目的が遠のくなら俺は降りるぜ。」


 凄く疑われてました。この三人で動くつもりだから不和の元は減らしておきたいし、信用は大事だよね。パンテルは...王子の目とケアニス様への恩義を信じよう。だって王子が敵ならもう無理だし。


「分かった。ちゃんと説明するね。まずはカーネの質問から。

 今でも少数精鋭ではあるけど、多分私の相手が大きいから備えておきたかったの。私の相手になりそうなのは、アレーシグ・テオリューシア。公爵家なの。」

「アレーシグ・テオリューシア...。何故あれがお嬢様を?」

「多分、これだよ。この箱の中身を探してるんだと思う。だから、アル君がこれを預けたのは、もしもの時はこれを交渉材料にしろって事じゃないかな。持ってなかったら襲われないかもしれないけど疑って捕まったら、手に入れるところからしないとだからね。」

「アレーシグってのは親無しのガキとか獣人をさらってる奴か?」

「そうなの?私は聞いたこと無いけど...。」

「いえ、事実です。現に私の弟が彼の手元におります。さらった証拠等残す奴では無いですが、犯罪者でもない弟を奴隷として買う等出来ませんから。最も記録では弟は犯罪者でしょうが。」

「カーネ...。」

「大丈夫です。ナイアース伯爵様とセメリアス侯爵様のお陰でそろそろあの法外な値段も払えそうですから。」

「なるほどな。どうやら同士らしいな。俺の金も同じだよ。まぁ、村の奴ら全員分だけどな。まぁ、それは置いといて、だ。」


 パンテルのため息が重く床に降りて、その後の言葉を響かせるようだった。


「嬢ちゃんは、俺の質問には答えてくれんのかい?」

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