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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第三章 エレシアの物語
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22話 護衛の傭兵

「四番目にでかい酒場?あぁ、あの色々なのが集まるとこかな?それならあの鍛冶屋の向かいだよ。」

「ありがとう、お兄さん。」

「いや、良いってことよ。可愛いお嬢さん。」


 王都は治安も良いので目的地にいくのも簡単だ。親切な人が多いって助かるなぁ。セメリアス領ももっともっと頑張らないとな。

 まぁ、私はナイアース領に行くことになってるけどね。多分親戚の方から養子をとるだろう。あっ、顔合わせとか良いのかな?


「シア、自分の容姿を利用するのは危ないからあまりやらない方がいいよ?下町は貴族街とは違うんだから。あと、シアの髪だって多い色ではないんだからフードは出来るだけ被りなさい。」

「えっ?容姿?別に変なことしてないよ?あと、フードは暑いから被らない。襲ってきたら捕まえて情報聞くし。」

「...あぁ、いつものね。あと、あんまり乱暴な事しちゃだめ。」


 なんだろう、納得いかない。一体私が何をしたというんだろう。道を聞いただけであざとい娘扱いしないでほしい。しかも、いつものっていうほど道は聞いてないはずだ。

 あと、乱暴じゃない。私を襲う理由とかソフィアおばあちゃんの事とかちょっと()()するだけだ。


「えっと、ここみたいね。確かに中途半端な大きさね。」

「カーネお姉ちゃん、それ失礼だと思う。」


 まぁ、実際中途半端だけどさ。

 とりあえず扉を開けて中に入った。と思ったんだけど外で転けている。なんで?


「ひぃ!に、逃げろ~!。」


 何人か男の人が走っていった。どうやら突き飛ばされたみたいだ。かなり痛む頭を擦りながら起き上がる。あっ、たんこぶ出来てる。


「シア!大丈夫なの!?。」

「あー、うん。ちょっと痛いだけ。」


 改めて入って見ると大きい獣人がテーブルなんかを隅に寄せているところだった。凄い壊れてる...。


「あー、悪いなおっさん。テーブル代は払わせてくれや。」

「おう、受け取っとくよ。んじゃ、これがバカ追っ払ってくれた謝礼金だ。」

「...ありがとよ。おっさん。じゃあ俺は部屋に引き上げるわ。」


 まるごと返したし。それでいいんだなぁ。

 あと、カーネはあんまり動かないで。怒ってるのは分かったから、でもフードからチラチラ青が覗いちゃってるから。珍しいんだからバレちゃうって!


「ん?随分と小さなお客さんだね?お父さんでも迎えにきたかい?。」

「あの、『ストレートの水を三杯とツマミに干し肉を二つ』くださいな。」

「...すいませんがただいま在庫を切らしておりまして。すぐにでも仕入れる事は出来ますので奥で待っていてください。」

「うん、分かった。奥は大丈夫?私、()()()()()()()()()()。」

「えぇ、ご安心を。当店は探ることはしない主義ですが、逆もしかり。()()()()()()()()ありませんから。」


 どうやら探られることも襲われる事も無いようだ。お店にも他の誰かにも。

 私達が奥で待ってるとドアがノックされる。そっと扇を手に持ちつつドアの前に行く。


「ストレートを三杯とツマミを二つ用意いたしました。入っても?。」

「えぇ、どうぞ。」


 扇をしまいながら扉を開けると店主と先ほどの獣人の男性がたっていた。


「このまま、此処をお使いください。出るときはまた、声をかけてくださいね。では、ごゆっくり。」

「えぇ、ご苦労様。」


 店主が去った瞬間にカーネが獣人に怒鳴りかかった。いや、その人多分王子紹介の傭兵さん!


「貴方ねぇ!貴方の投げた男がシアに激突したんだけど!?もしケガでもしてたらどうしてたのか説め」

「カーネ、ストップ!ほら、私大丈夫だから。」

「いや、そっちの姉ちゃんの言うことが正しい。あのときはついかっとなって入り口の方を見てなかったんだ。いつもなら止めてくれる奴も居なくてな。すまなかった。」

「まぁ、ケガも無かったわけだしいいわ。思ったより荒くれものって訳でも無いみたいだしこれからも暫くは一緒に行動するんでしょう?こちらこそいきなり怒鳴って悪かったわ。ごめんなさい。」

「えっと、それで貴方は?」


 私が問いかけたら察してくれたのか答えてくれた。まぁ、「王子の紹介ですか?」とか聞けないしね。違ってたらそれこそ大事になってしまう。


「俺はこの酒場で待ってろって大量に金積まれて、こんなにヤバそうな山とは知らずにまんまと居座されてる傭兵だよ。といっても傭兵になったのはつい二ヶ月程前だけどな。」

「どうやら正解のようですわね。では名乗ります。私はエレシア・セメリアス。セメリアス家の長女です。」

「私はカプラーネといいます。お嬢様の側仕えをしております。」

「畏まったとこ悪いが俺は御貴族様の言葉遣いなんざ知らねぇんだ。このままいかせて貰うぜ。」


 フードを取った私達に彼は自らの胸板を拳で叩き名乗った。


「俺はパンテルって言うんだ。よろしくな嬢ちゃん達よぉ!」

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