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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第二章 アルの物語
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17話 もう一度の十七歳

17話でって、なんか凄いなぁ。

狙ってないのに。

「おはよう、ばあちゃん」

「あら、アル君。おはよう。」


 パンテル達と別れて一月がたった。実際に使ってみて、俺のアーツは事前に作っておけば十分に実戦に耐えうる物だとわかった。

 俺のアーツ、チーターは正式名称はベレッタM84という自動拳銃だ。リボルバーはサバゲーに向かないので、使用したことも改造したことも無いため断念した。そのため、少々複雑だが細部まで知っているチーターを改造した物をアーツで作っている。さしずめ魔導拳銃とでも言ったところかな?なんかカッコいい。

 改造といってもバレルを塞ぐ様にスライドにくっついているパーツを作ってそれと撃鉄を入れ替え、引き金でハンマーがそのパーツを叩くと爆発を起こす様にしただけだ。なので排出機構はない。爆発といっても急速に空気圧を高めまくってバレル内にぎっちりとはまっている銃弾を飛ばすだけなので熱くなったりはしない。銃弾も鋭い鉄の塊なだけだ。もちろん、ライフリングは掘ってあるが。

 アーツは摩擦が限りなく零に近いから出来る事だ。術者には摩擦が発生するのは術者の魔力とくっつこうとしているのだろう。

 ここでアーツのおさらいだ。


摩擦が限りなく0に近い。(術者はその限りではない。)

質量が周囲と同じになる。(空気、水、地中など。作られたときその表面に最も多く直に触れている物に影響される。)

魔力供給が途絶えると霧散する。(つまり、術者から離れると。)

かなりの硬度でまず、破損や変形しない。

淡く発光している。


 また、効果付与ができる。

弾性の変化。ただしあげていくと反比例し、硬度が下がる。

魔方陣に細工し、熱くなる、爆発する、伸びる等も可能。

ただし、弾性を変更したら効果付与は出来ない。


 こんな感じである。ちなみに銃弾は鍛冶屋の親父作だ。


「今日はどうするの?」

「今日は西の廃村に行ってくるよ。そのまま王都にも寄りたいからさ。銃弾が減ってるんだ。」

「じゃあついでにこのメモの物を買ってきてくれるかしら?」

「食料品と...本?家にあるやつじゃない?これ。」

「家にあるのは元々教科書にもなるものだからあげられないのよ。でもエレシアちゃんが気に入っててねぇ。」

「なんで今?エレシアもそんなにポンポン来れないでしょ。この前買っておけば良かったんじゃ?」

「あら、忘れてるのかしらね?」

「んー?あぁ、誕生日か!」


 そういや今月か?すっかり忘れてたわ。不味いな、プレゼントも買ってないぞ?ばれると機嫌悪くなるんだよなぁ、絶対。鍛冶屋の親父に頼んでなんか作ってもらおう。腕輪とか?


「プレゼントで悩んでるわね?」


 ばあちゃんがクスクス笑いながら聞いて来た。まぁ、そうだけど。


「そうねぇ、ならペンダントなんかどうかしら?」

「ペンダントか...。ちなみになんで?」

「魔方陣をいれたときに発動しやすいのよ。着けてても起こられないからパーティーなんかでも安心なの。」


 観点が魔術師よりだった。

 俺としてはペンダントは少し抵抗がある。あのクリスマスの日だってペンダント持ってたからなぁ...。似たような状況は少し遠慮したい。なんせピルケアルが近くで誕生したからこそエレシアに記憶がある可能性が高いしな。つまり俺の考えというか、ピルケアルの感覚が正しいならエレシアは...いや、ばあちゃんがいるから滅多なことは起きないかな?


「まぁ、小さな魔方陣なら材料費も大丈夫だしそうするよ。」

「じゃあ、魔方陣は何にする?デザインと一緒に書いてあげるわよ。」

「デザインはいいよ。考えてあるからさ。でも、魔方陣か...。あ~、じゃあ―――」






「親父、出来た?」

「おう!少し待っとけって!お前の持ってくる仕事は毎度細かくていけねぇや!」

「親父を信用してんだよ。イヤか?」

「職人冥利につきるねぇ!」


 奥の炉の火にびくつきつつ、親父と会話する。火は怖いが此処は好きだ。親父も楽しい奴だし。設計の微調整から手伝ってくれて、チーターの完成に最も喜んでくれた人でもある。人の設計図は除きこむけど。まぁ、助かったし結果オーライだな。


「おら、出来たぞ!ペンダント。しかし、この魔方陣はなんだ?見たことないが。」

「そいつは内緒だよ。所で銃弾の方は?」

「つれないなぁ、おい!まぁ、いい。いつもの奴なら向こうだぜ!どうせお前が毎週買ってってくれるからな!いつも700個は作っておいてんのよ!」

「じゃあ、全部買うよ。でも、親父が目新しいもんを詮索しないなんて珍しいな?」

「そりゃおめぇ、そんなに可愛らしいデザインでこの時期に急に作ってくれってんだ。例のお嬢ちゃんにプレゼントだろう?」


 少しは殊勝になったかと思ったが、にやつきながらこんなこと宣いやがった。


「てこたぁあれよ。そいつの効果は魅了かなにかか?んっ?」

「にやつくなよ。そんなんじゃねぇって。第一向こうは貴族だし、俺は孤児だったんだぞ?」


 しかも非常に遺憾だが、父親はこの王都の焼き討ち事件の主犯です。情報規制されてるから言わんけど。てか、あれを父親だと認めたくない。


「あん?お前ソフィアさんのお孫さんじゃなかったのか?」

「そろそろ五年たつけど気づいて無かったのかよ。」

「まぁ、いいや。なんであろうとお前はお得意さんだからな!また来いよ!坊主!」

「おう、ありがとな!親父!」


 夕暮れを見上げ、今日は廃村に行けなかったなと考えながら歩く。ばあちゃんに拾われてそろそろ五年がたつ。六年前、不知火静葵の記憶を取り戻してから随分と遠くまで来た気がする。母さんのマフラーにそっと手を添え、一月前に十七才となった少年は王都の大通り、帰路につく。予定は狂ってしまったが彼の心は暖かい満足感に満ちていた。

アル達が前世の年齢に追い付いたところで第二章は終わりです。

次からは第三章になります。

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