表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第二章 アルの物語
17/78

16話 疑問解消、今日という日

「マジで助かったぜ。ありがとうな婆さん!」

「悪魔の心臓も手に入らない今は僅かな金が惜しい。ましてや四人分の宿泊費等手持ちも無いので本当に助かった。ありがとう。」


 昨晩その悪魔の心臓とやらを力強くで取りに来た奴とは思えないな。随分と態度に変化が在るようだが。


「いいのよぉ、別に。幸い困るような値段では無いからねぇ。」

「いや、目の飛び出る額なんだけど。」


 少なくとも一晩のその場しのぎで借りる額じゃない。しかも他人含めて二部屋だ。まずポケットマネーじゃない。なんで持ってるん?


「で?なんでそんな態度変わってんだよ。」

「獣人は強いものに着く!」

「脳筋かよ!」


 どうやら負けたかららしい。本能かな?獣人は人と違い、魔方陣を使っても魔力を動かせないらしいし、手も肉球とか爪とかまんま獣のそれだ。道具も魔術もなきゃ、力が生きていくのに都合がいいのだろう。つまり強い=偉いとなる。


「俺もばあちゃんも勝ったの獣人に魔術でだけど?」

「力に種類はないぜ!」

「言っとくけど僕は脳筋じゃないぞ。半獣人だし、単純にその人が尊敬できる人だからだよ。あんな腐れ公爵なんざ知らん。」


 帰り道の郊外とは言えとんでもない事言うなこいつ。そろそろ王都入るぞ?


「じゃあ、俺達はここでおさらばすんぜ。あの公爵にゃあ別の支払いで仲間を返して貰うよ。」

「あんなのに悪魔の心臓は渡さねぇよ。僕は嫌いだ、あいつ。」

「どんだけ嫌いなんだよ。まぁ、いいや。じゃあな。」

「頑張るんだよぉパンテル君、エピス君。」


 さぁ、帰って質問タイムといこうかな。久しぶりの授業だ。






「それで、何が聞きたいの?ずっとしかめっ面してたわよ?」

「あはは、やっぱり考えても分かんねぇや。」


 家に帰りついてからすぐばあちゃんに聞かれてしまった。そんなに顔に出やすいかな?俺。


「んじゃあ、まずは悪魔の心臓ってやつから。」

「あぁ、やっぱり気になるわよね。本当はあんまり話しちゃいけないのだけど特別ね?

 あれは契約者の為の道具の一つよ。道具の効果は二つ。

 一つは悪魔の代償を打ち消して、魔力を高めること。魔力の量が変わるとかじゃなくて、少ない魔力でマナを動かせるの。代償っていうのは分かる?」

「それはわかるよ。もう一つは?」

「魔力が高まったりする原因なのだけど悪魔と一体化するの。文字通り悪魔の心臓になるのよ。悪魔は死ぬ事なんて滅多にないわ。たまに消滅させられるけれど、ほとんど不死なの。もともと魔力の塊だものね。

 そしてそれと一体化するということは自身の寿命が悪魔と同等になって、力が増すこと。人間は悪魔に、悪魔は上位の存在になるのね。でもそれは、自身の死が悪魔の死になることなの。そして悪魔が死ぬと自らは魂が消滅するわ。万が一にも蘇生すら出来なくなる。」

「蘇生って出来るの!?」

「そういう魔術があったらしいわ。今はどんなものかも分からないけれど。」

「そうなんだ。でも、なんでその悪魔の心臓をばあちゃんが?」

「国が管理するとどうしても使う人達がいるだろう?魔人を作るなんて道具は本来、ないほうがいいのよ。だから、個人で管理してくれって、政界から離れても生活基盤のある、私が預かったの。王様にも信頼されてるのよ?」


 そう言うとばあちゃんは嬉しそうに笑った。多分この人は頼られるのが嬉しいのだろう。王様を君づけで呼んで可愛がってた過去があってもおかしくない人だ。


「ばあちゃんが凄いのは今さらだよ。それよりは魔人ってのはなんなの?」

「魔人かい?魔人は魔法使いが魔族に、つまり悪魔の仲間になった人達のことだよ。悪魔と本当に一つになったり、自ら悪魔になったりした人だね。アル君が魔人って言われたのは、あの子達が獣人の村で育ったからだろう。人間と違って獣人は身体能力は高いけど、魔方陣を使っても魔力が動かせないから魔法使いなんてのは理解できない存在なんだろうね。魔術師と魔人の区別までなんだよ。」

「魔人になるってどんなものなの?見て分かんないものなん?」

「そうだねぇ。魔力を動かすと多少目が紅くなると聞いたことがあるねぇ。外見の変化はそれぐらいだろう。性格は悪魔に近づく様だけど、悪魔も千差万別だからねぇ。人間が元だから全部悪感情に染まる訳でもないだろうしねぇ。」

「人格まで変わるの!?うえぇ。」


 あれ?でも、ピルケアルって...。んでそのピルケアルと一つに戻った俺は...。いや、考えないでおこう。きっと目も紅くなってないはずだ。


「他にはあるかい?」

「んじゃあ最後。自動魔方陣ってなに?」

「その名前通り自動で発動し続ける魔方陣だよ。普通、魔方陣は魔力を引き出す性質の物で作るのは知ってるだろう?あれは魔力を動かす補助になる。魔法使いでもなければ魔力は自力じゃあほとんど動かせないからね。一方、強く魔力を発生するもので魔方陣を作ると自動魔方陣になる。魔力を引き出す物よりも更に珍しいが魔力を注ぎ続ける状態になるのからずっと発動しているのよ。」

「じゃあ、あの魔方陣凄いものだったのかな?地下室に木が燃えてて、」

「あぁ、魔炭の木ね。あれは燃やさないと魔力は発生されないし、燃え尽きたらそれでおしまいだから国家単位の物ではないわ。」

「さらっと国家単位なんてもんが出てくる物なのかよ!?」

「言ったでしょう?普通の魔方陣よりも更に高価なのよ。国家単位位当たり前でしょう?使い捨てじゃないんだから。使い捨ての物、例えば魔炭の木なんかはもっと安いわよ?せいぜい、一民家位の値段だわ。」


 魔術師の金銭感覚に肝を冷やし、魔法使いは魔方陣要らずな事に本当に感謝した。なんか会話が沼に嵌まりそうだったのでそうそうに挨拶をし、部屋に行く。


「さて、寝るか...。あぁ、そういやぁ...ハッピーバースデー...お休み...。」


 明日の予定を考えながら俺は次第に微睡んでいった。あー、疲れた。

次回、「もう一度の十七歳」

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ