15話 解決、誘拐騒動
「な、なんで消えて!?」
「少年だろう、この状況。火消しの魔人か?聞いた事ないな。」
「村に籠ってるんだろ。あんまし知ったような事言うなよ。」
俺は新しく皮膚が焼かれる痛みに顔を歪めて言い返す。どうやら火傷は今回は背中に回っていったらしい。右腕も肘に迫るところに来ている。背中は肩甲骨よりは一回り小さいようだ。どうやら火の量で火傷は変わるらしい。あぁ!そっか!これが獣人の誘拐犯の言ってた代償って奴かな?。だとすると火狂いの代償を知りたい所だな。
「てめぇ、いつの間に消しやがった。いつ気付いたんだ!いえよ!」
「降りてきた時だ。あんなに魔力を駄々漏れにしてマナを引っ張っていりゃあ気付くっての。」
嘘です。地下にしては温度高いし、なんか焦げ臭いし、焦げ跡の臭いにしては濃いし、火怖いからとりあえずこの部屋一帯の火消しました。なんだよ自動魔方陣って。
「少年、嘘は良くないな。それぐらいは僕でも分かるよ?」
フードの誘拐犯がロープを手繰ると俺の右手が天井に吊り下げられた。
「おい、そっちこそいつの間に?いってくんないかな。」
「君が変なアーツでうちの相方を攻撃した時さ。正直だろう?僕は。」
でも、俺は正直には言いません。カッコ悪いから。てか、変って言うなよ。カッコいいだろ、俺の愛銃のチーターは。かの有名なベレッタだぞ?サバゲー仲間に貰ってから必死に磨いて改造して修理して、廃棄寸前を使えるようにしためちゃくちゃ思い入れのある俺の愛銃だぞ?
「答えは変えないのね。それで、僕らはどうすんの?もう自動魔方陣機能してないんだけど?」
「チッ!てめぇの面忘れねぇかんな!覚えとけよ。」
「まぁ、お互い忘れるような面してないしな。」
二人して外に駆けていくのを歩いて追いかける。さて、吹き荒れたかな?
「ぐぉっ!?風の檻かよ?これ!」
「あーあ、遅かったか。」
外から響く声に成功を確信する。ばあちゃん、何が凄いって索敵範囲とその中なら魔術を使える器用さだよな。
「あら、アル君。ご苦労様。」
「うん。ばあちゃんもお疲れ。」
今回は四つの羽を扇に作っている。うーん、広げる、反射した風を読み取る、自身が移動する、風の檻を作るの四つかな?
「こんなのその気になりゃいくらでも抜けられんだよ!オラァ!」
獣人の誘拐犯があの風圧を越えて―――アーツの檻にぶつかった。
「いてぇ!クソが!」
「なんであれを抜けられたんだろうね?やっぱり獣人は凄い身体能力を持っているようだね。さて、そっちの坊っちゃんは」
「おっと、ご老人。坊っちゃんはやめてくれ。こう見えてもこの毛むくじゃらと違って21歳なんだ。子供じゃない。」
「おい、クソガキ!毛むくじゃらたぁなんだ、毛むくじゃらとは!このハゲ従兄め!」
なんか獣人がほざいてるが知らん。それよかフードの下から出てきたこの姉ちゃんすげぇ美人なんだけど。いや、そうじゃない。このバン○イと同じにいることが信じらんないんだけど。いや、それもだけどあれはもしや猫耳ですか!?
「ん?ちょっとまて、従姉って言った!?ハイエナと美人猫が!?」
「誰がハイエナだ!俺達はクロヒョウだ!」
「えぇ!?だってお前バ○ザイじゃん!ハイエナじゃん!」
「噛み砕くぞこらぁ!」
「いや、僕は美人猫って言われたんだけど。そっちの方が気になんだけど。僕も半分はクロヒョウの獣人のつもりなんだけど。というか美人じゃなくて普通イケメンって言わない?」
「やれやれ。若いのは元気が有り余ってていいねぇ。」
それから、結局夜が更けるまで言い争って疲れはててしまった。
「おや、終わったかい?」
「おはようばあちゃん。終わったよ。不毛な争い。」
「だから、僕は半獣人であってハゲじゃないって。」
「いや、不毛だけにってか?」
「「お前それ寒すぎ。」」
「言ったの俺じゃねえだろうが!このハゲ野郎どもが!」
「終わってないのかい?」
ばあちゃんの流石に飽きたというジト目が刺さる。そろそろ潮時だろう。
「あ、ごめん。終わってるよ。それで、この誘拐犯共どうすんの?」
「そうさねぇ、貴方達をけしかけた公爵さんの名前は分かるかい?」
「へっ!知らねぇよ。」
「悪いけど僕もパス。てゆうか地名もよくわかってないんだよね。だから、役立たないよ僕ら。」
「んじゃ、帰れよ。なぁ、ばあちゃん。」
「まぁ、そうさね。帰ってもらってもいいかねぇ。新しい事も分かりそうにないし。」
「おいおい、俺を負かしといてそりゃないぜ。なんかないのかよ?聞きたい事とかよ。」
「じゃあ二人のお名前は?日記に書くのになんて書こうか迷ってたの。」
「ばあちゃん日記なんてつけてたの?まぁ、誘拐犯でよくね?」
「いやだよ!」
「じゃあバンザ○。」
「誰だよ!?俺はパンテルだ。こっちがエピスだ。」
「少年の方は?」
「俺か?アルだ。んでソフィアばあちゃん。」
「いや、違う。」
だと思った。だってこの二人ばあちゃんの事は調べてたし俺は何度もばあちゃんに呼ばれてる。いや、ばあちゃん。これ冗談。俺をそんな目で見ないで?後○ンザイ、なんでお前が驚いてんだ。明らかに俺の要望聞いてたろ。
かと言って、腹減った以外特にないんだよな。多分自動魔方陣もばあちゃんに聞けばわかるし、それ以外もばあちゃん知ってそうだし...。なんかそれっぽい適当なものはー。あっ、そうだ。
「じゃああの地下室はなんだ?なんか焦げてたけど。」
「あれか?例の公爵様だよ。なんか魔術師だか、魔人だかがいて自分の陣営に呼び寄せるために改良して、あげくもっといい場所を用意して後ろ楯になったんだよ。まぁ、買収だな。元はどこの村にも見れる地下室だ。」
此処、王都からどんぐらい離れてんのか知んないけど随分物騒だな?
「あっ、ちなみに少年の疑問は場所でいいかな?それならここは王都の郊外。西の方だよ。馬車で一日かな?」
「今晩の飯~。」
その後西の村には珍しく来客が四人きた。支払いは涙目の獣人に代わり老婆が払い獣人とフードの人物に恩人と呼ばれるのはまた、別の話。
次回、「疑問解消、今日という日」
お楽しみに!




