戦後処理その1
いろいろなことがあったが、最終的には、戦いは勝利に終わった。奇襲効果に加え、隻眼の黒龍や魔法による支援に助けられた一方で、ドワーフ傭兵は数的に我が方よりはるかに優勢であり、個々の身体能力も優れていたため、味方の被害も少なくなかった。でも、ともかくも勝ちは勝ちなので、よしとしよう。
なお、副産物あるいは副次的効果として、ウェルシー派遣軍の持ってきた兵糧をそのまま分捕ることができた。兵糧を住民に配給すれば、少しは町の食糧難の足しになるだろう。アーサー・ドーン及びG&Pブラザーズ株式会社の業務が再会するまでの「つなぎ」として、ありがたく使わせてもらおう。
この勝利の後、程なくして、宝石産出地帯から使いの者がやって来た。すごく急いでいたので、「何事か」と思ったら、「どうにか混沌の勢力を打ち破り、混沌の領域に追い払った」とのこと。「一刻も早く、このことを知らせ、みんなを安心させたいので、急いで来た」ということだけど、良い知らせなら、慌てて持ってくることはないと思う。
確認する術はないが、やはり、今は亡きラードが混沌の勢力を裏で操っていたのだろう。
こうして、当面の危機は脱することができた。目下のところ、一番の問題は、捕虜の処遇をどうするかということ。
ドーンは何やら皮算用しているようで、ニヤニヤしながら、
「カトリーナ様、捕虜の処遇は、是非とも、この私めにお任せいただきたいのですが……」
「どうするの?」
「宝石産出地帯で労働力として、低賃金労働をしてもらおうと思いまして」
「でも、それはちょっとマズイかも……」
ドワーフは、本来の性癖として宝石や貴金属に目がないし、低賃金労働(実質は使い捨ての奴隷)に甘んじていられるとは思えない。そのうち、宝石を盗んで脱走するか、反乱を起こすに違いない。かといって、捕虜のドワーフをいつまでも養う余裕はない。町の食糧難は解消されておらず、捕虜に回すだけの食料がない。約2000人のドワーフを人質に、マーチャント商会との交渉を有利に運びたい誘惑には駆られるが、背に腹はかえられない。
こういうわけなので、結局、
「公共事業を始めましょう。捕虜を使って郊外に大きな穴を掘るのよ」
「穴ですか? 穴を掘って、それで、どうするのですか??」
「生き埋めにするに決まってるでしょ」
するとドーンは、ギョッと驚き、
「生き埋めですか! それはなんと…… 生かしておけば、まだまだ使えそうなのに、もったいない」
「仕方ないわ。後で大暴れされたりしては面倒でしょ。そうなる前に、始末しましょう」
こうして、捕虜となった約2000人のドワーフは、生き埋めとなって果てた。ちなみに、歴史的には、生き埋めは稀有な例ではない。白起の40万人、項羽や章邯の20万人に比べれば、大したことはないだろう。




