意外な訪問客
いろいろとあったが、一応、混沌の勢力の侵攻は、どうにか退けることができた。気がかりなことはあるが、いつまでも宝石産出地帯に留まっているわけにはいかない。駐留している猟犬隊の増員等々、宝石産出地帯の警備体制の強化については、ミーの街に戻ってから今後の課題として考えることにしよう。
帰りも、行きと同様に、わたしとマリアが隻眼の黒龍に、メアリーが槍に、魔法戦隊が練習用の魔法の杖に乗り、スピードは魔法戦隊に合わせて、出発してから2日目の夕方、ようやくミーの町の館の中庭に戻ることができた。
わたしは隻眼の黒龍の背中から降りると、ひと言、
「ごくろうさま。魔法戦隊も初めてにしては、よくがんばったわ。ただ、この次は、もっと厳しい局面で戦場に赴かなければならないかもしれない。その時まで、腕を磨いておくように。以上」
一応、簡単に部隊解散の挨拶を。もっとも、魔法戦隊は疲れきっていて、まともには聞いていなかったけど。子供たちの世話はメアリーとマリアに任せることにしよう。
わたしがプチドラを抱いて館の玄関のドアを開けると、
「ああ、カトリーナ様! いや~、しかし、丁度いいところで戻られました。作為的なものを感じるくらい、ピッタリのタイミングですが!!」
そこに立っていたのはポット大臣だった。
「どうしたの? 『丁度いい』とか、『ピッタリ』とか……」
「実は、G&Pブラザーズ社長が、カトリーナ様に話があるということで、先刻、いらっしゃったのです。しかし、カトリーナ様は宝石産出地帯に混沌の勢力を討伐に向かわれておりましたので、どうしたものかと思案していたところだったのです」
「デスマッチが来たの? 一体、なんの用??」
「分かりません。尋ねましたが、カトリーナ様と直接話したいということで、教えてくれませんでした」
不思議なこともあるものだ。デスマッチがわたしと話をしたいなんて…… てっきり、口もききたくないほど嫌われているとばかり、思っていた。
「応接室にお通ししてあります。今はエレン様が応対しておりますが、とにかく、お急ぎを」
わたしはポット大臣に手を引かれ、プチドラを片手に抱いて駆け足で応接室に。
応接室では、エレンとデスマッチが楽しげに談笑していた。
わたしが応接室に入ると、デスマッチは機嫌よく、
「よぉ、調子はどうかね。今まで彼女と、『臣下が知的で聡明であれば、主君はそれ以上に優秀でなければ務まらないだろう』という話をしていたのだが……」
デスマッチめ…… 何気ないひと言だろうが、わたしにはどこか嫌味な響きがするように思えるのは、単なる気のせいだろうか。




