96.魔法の鍵(推理しながら読みたい方スキップ推奨)
前書きを書くのは初めてですね。
ひとつ、注意文です。この話は、世界の核心のお話になります。当初私はこのシーンを飛ばす予定でしたが、飛ばすか否かは読み手の方に決めて頂こうと、考えを改めました。
読んだ場合、今後の主人公の行動原理が分かるので、爽快感が増すと思われます。
以下文書飛ばして本文からお読みください!
読まなかった場合、これまで通りです。重要なピースが欠けた状態で読む事になるので、どちらかと言えば展開を予想しながら、分からない事を楽しむ読み方になると思います。
読まれない場合はブラウザバックで、次話に進んでください。
読まれた場合は、私と同じ目線で、楽しんで頂けると幸いです。
PC表示等々の兼ね合いで本文が見ててしまっていたら……すみません。重ねてになりますが、楽しんで頂けると幸いです。
「賭け?」
「うん。賭け」
記憶の中の俺は猫丸が言葉を話す事に関して、何も違和感を覚えていないようだ。
何でも無いことのように、猫丸と会話をするので、これ以前にも、猫丸と会話をしているのだろう。
「おじさんはね、ミツキを見ているのに、疲れてしまった。当初こそ楽しそうにしていたのに、今はもう、ただただ振り回されている」
自身の肉球を眺めながら、猫丸は溜息を吐く。
猫って、溜息吐けるんだ。
夢を見ている俺を置いて、身体は勝手に「猫丸も世界を壊す事に賛成ってこと?」と問い掛けている。
猫丸はその質問に、目を細めた。
「賛成も反対も無いよ。おじさんは、ミツキの事をあまりに哀れに思ったものだから、この箱庭を用意してあげたけれど、本来不干渉を貫かなきゃいけない立場だからね」
「勝手だな」
「そうだね、我々はとても身勝手な存在だ。だからこそ不干渉のルールを貫かなきゃいけないのだけれど。ミツキはまだ、幼い子だからね」
困ったように、猫丸はまた溜息を吐く。
猫丸が、箱庭を用意した。
――つまり、この世界を作ったのは、猫丸という事か?
管理しているのは、話の流れからして二ノ前満月なのだろう。
けれど、二ノ前満月に世界を与えたのは、猫丸だという事か?
――それは、正しく、神じゃないか。
「でもね、おじさんは君たちを見ていて思ったよ。ミツキに対してお願いを叶えてあげたのだから、君たちのお願いも叶えてあげるべきなんじゃないかってね」
公平性。
五十嶋桂那の言う、この世界で一番公平な人とは、猫丸の事なのだろう。
この猫は、きっと猫じゃない。
もっと、とてつもない、それこそ神とか、色々なものを超越した存在なんだろう。
「君たちが世界を壊すことは、とてつもなく難しい事だ。おじさんはミツキに対して色々な力をあげたからね。そんなミツキに君たちが打ち勝つことが出来たなら、おじさんがひとつだけ、コタローくんのお願いを聞いてあげよう」
願い。
世界をひとつ作り上げる事のできる存在が、ひとつ願いを聞くと言う。
「それは例えば、ヒナミと五十嶋さんを俺の世界に生み出す事も可能なのか?」
「朝飯前に出来てしまうね」
「それじゃあ――」
「何を叶えるかは、最後に聞くよ。気が変わるかもしれない。例えば、おじさんは君にチートスキルを与えたり、そういった類の事もできるからね。元の世界に帰った際に、君が成功者になるような力だって、与えてあげられる」
「俺はそんなの、」
「今は思わないかもしれない。でも、先の君は分からない。君はあとしばらくしたらリセットされる。この会話を思い出さないままに、世界を壊す事だってあり得るだろう。そうした時に今聞いたお願いを叶えるのは、少し可笑しな話じゃなあないか」
言葉だけを聞くと、凄く嫌な言葉にも聞こえる。
けれど、猫丸が止めてくれたお陰で、俺はそこに三条さんと、吾妻さんを――
――いや、例えば、世界を壊した後に、このゴールデンウィーク中の此方の世界と、俺の元いた世界を統合してくれるように、頼んだとしたら。
俺は、全員を救う事が可能なんじゃないだろうか。
――なるほど、本当に、これは『何でも出来る、魔法の鍵』に違いない。
今まで覚束なかった足元が、急にしっかりと固さを持ったような感覚だ。
進むべき道筋は、これではっきりと定まった。
まず、鴎太の知っている情報を聞き出す。
世界を壊し、全員を殺したのちに、俺の世界へ蘇らせる。
そうした結果、三条さんや、吾妻さんや、ヒナちゃんが、上手く世界に馴染めるかどうかは分からない。
けれど、この、未来の無い高校生の輪に留まり続けるよりも、ずっと、救いになるはずだ。




