表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/151

41.あわや、おっぱいサンド




 後ろには机。二方向から駆け寄る女の子。


 あわや、おっぱいサンド。


 近頃こういった展開が無くて気を抜いていた。

 正直、俺はもうこの二人をただのおっぱいとして見る事が出来なくなっているのだろう。

 然し、おっぱいはおっぱい。飼い犬に手を噛まれるとはこの事だ。


 選択肢は二つ。

 ひとつ、身体同士が接触する前に、二人の安全そうな位置へ手を伸ばし、突っ張って距離を保つ。

 ふたつ、机の上へ避難する。


 後者の方があまりにも簡単に思えた為、俺は机へ向き直り、その上へ身を翻す。


 どったんばったんの大騒ぎで窓際まで逃げた俺に対して、べたんと机に突っ伏す形になった彼女たち。さながら、ゾンビだ。


「はは、変なの。本気でビビるじゃん」


 三条さんはおっぱいを机に乗せながら、けらけらと笑ってみせるけれど、ビビりもするだろうが。

 俺はすべてのおっぱいを回避しなければいけない立場なのだから。


「ほんと、接近禁止令出しますよ」

「ごめんごめん」


 脱力だ。ずるずると身を落とし、窓へ背を預けていると、三条さんがぴょいと軽く机の上へ登る。そうして俺の横に屈んで、手を伸ばした。


「ありがと。コタはさ、……ほんと、無責任に優しいよね」


 その手は、そっと俺の髪を撫でる。

 あんまりにもその手付きが優しくて、呆気に取られていると「あの」と横から声が飛んで来た。


 吾妻さんだ。

 どうして良いのか迷っているようで、うろうろと視線を彷徨わせた後に、覚悟を決めるように手をぎゅっと握って、俺を見る。


「私も、コタローさんって、呼びたいです」


 これ、なんてギャルゲ?

 いや、ギャルゲーなんだよ、元々は。


 恥ずかしいのだろう。すぐに視線を落とし、耳まで真っ赤にした女の子の手は、ぷるぷると震えていた。

 大変可愛らしいのだけれども、隣に居る三条さんがぴきりと石化して、俺の髪を引っ張り始めたので、正直それを観賞している余裕はなかった。


「いや、ちょ……とりあえず三条さん、痛いんで……」

「こ……こたが悪いじゃん!」

「意味わからないんで……」


 俺の髪を引きちぎろうとする三条さんを、どうにか引き剥がし、吾妻さんに向き直る。

 最早、溜息しか出ない。


「好きに呼んでもらっていいですよ」


 その言葉を聞いた吾妻さんは、心の底から嬉しそうに、何なら周囲にお花を飛ばしそうなほど、ぱあと表情を明るくさせていたけれど。

 それを見た三条さんが、掴みかかろうとして来たので、やはりそれを見ている余裕はなかった。




 ―――




 あんな場所にはとても居てられないので、窓を開け放ち脱出してから、十数分。

 旧校舎裏にある桜の木の下で黄昏る鴎太を、発見してしまった。


 バッチリと目が合ってしまったので、立ち去ろうにも、追って来そうな雰囲気だ。

 無駄な労力を掛けるのも如何なものかと思ったので、素直に鴎太の元へ歩いて行くと、鴎太は苦いものを食べましたといった表情を浮かべながら、静かに笑った。


「コタローって、何だかんだ、誰よりもギャルゲーしてる気がする」

「不本意だな」

「だろーな」


 まあ座ってくれと促されたのが、花壇の縁だったので、大変遺憾に思ったが、立っているよりも楽なので致し方ない。

 腰を下ろせば、鴎太は何やら神妙な面持ちで、此方を見た。


「なあ、コタローってさ、楽しい?」


 質問の意図が見えない。


「なんで?」

「いや……、三条さんとか、吾妻さんとか、オレとか。側に居るの迷惑なのかなって、ちょっと思ってさ」


 コイツは、コイツなりに頭を使っているらしい。

 俺の推しが名無しのモブ子である以上、俺の現状は良いとは言えない。


 言えないはずだ。


「どうだろうな。迷惑なはずだけど」

「けど……?」

「三条さんも吾妻さんも、相手してると、どうしようもない妹たちを構ってる気持ちになるよな」


 その言葉を聞いた鴎太は、幾分か安堵したらしい。小さく息を吐いてから「オレは?」と笑い掛けてくる。


「お前はまあ、どうでも良いよ」

「酷くない?」


 迷惑だと軽口を叩けるような雰囲気でも無くて、適当に場を濁したけれど、鴎太はそれで十分だったらしい。

 安心した様に笑って、一頻り笑った後に、もう一度息を吐く。


「なあ、コタロー。オマエってさ、この世界に来る直前、何してた?」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ